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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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番外編 空に釘付け(後編)+エピローグ

その数日後。ダンスパーティなんていうとても面倒な行事に、担任から今回は参加するように、と釘を刺され、どうしようか、と悩んでいるとブレンダに出会った。

 パートナーがいないダンスパーティなんて、格好がつかない。でも、誘いたい子なんていないし。

 そう愚痴っていて、ふと、思いついた。

「ねぇ、ブレンダ。ボクのパートナーになってよ」

 ボクの顔しか見てないくせに、ボクが爵位を継がないことがわかると、手のひら返しだった人となんて、踊りたいとも思わないけれど。彼女となら、踊ってみたい。そう思った。


 躊躇う彼女をなんとか、頷かせて、約束を取り付ける。

 いつもより必死な自分に内心で苦笑してしまった。


 ……こんなに必死になるなんて変なの。


◇◇◇


 その日の放課後。暗いので、ブレンダを送って行っている途中。可愛い後輩は、とんでもないことを言い出した。

「ジルバルト様、みたいですね」

 一際綺麗に輝く赤い星。それを指差して笑ったんだ。

 口説いているのか、とからかうと、真っ赤になって否定する。その可愛らしい様子を眺めながら、ふと思った。

「ありがと。ボクの瞳、気持ち悪いとは思わないんだね」

 ……たとえ、それが魔眼について知らなかったからだとわかっていても。とても嬉しかった。


 ブレンダはボクの言葉に首を傾げる。

「とても綺麗なのに?」


 ああ、もう。

 なんだって、この子は。


 ため息をつきたいのを堪えて、軽率にそういうことをいうなと釘を刺す。

「でも、事実です」

 真っすぐな瞳でそう言い切る彼女に、虜になる人は多いのだろうと思う。……そして、恐らくボクもまたその一人なのかもしれなかった。


 思わず、触れたくなって、頭をわしゃわしゃと撫でると、彼女は抵抗もせず、されるがままになっていた。


 可愛い。


「ブレンダって、犬みたいだよね」

 ボクがそう言って、笑うと、彼女は目を白黒させた。

 そんな彼女も可愛らしくて、更に笑う。


 自室に帰ってもしばらく、彼女のその顔を思い出して笑っていると、ふと、鏡に映ったボク自身が目に入った。


「――……」


 どうして、彼女の前ではこんなに笑ってしまうんだろう。彼女の前では感情をあらわにすることが多い自分に気づいてしまった。


「……可愛い後輩」

うん、可愛い後輩ではある。でも……。それだけなのか、そうではないのか。


 その気持ちを確かめるのに、ダンスパーティは丁度いいかもしれない。


◇◇◇


 そして迎えたダンスパーティ当日。

 控室の外で待っていると、ドレスを着たブレンダが現れた。


 遠目でしか見てこなかった彼女が、今はボクの目の前にいて微笑んでいる。

 ……なんだか、とても不思議な気がした。


 ブレンダと踊るダンスはとても楽しかった。義務的に何度か踊らされたダンスとは違い。ボクが踊りたいと思って選んだ、初めての相手。


 でも。


「……ふぅん」

 ボクに向けられている、視線の数を数えて苦笑する。ボクの後輩はどうやら、大変人気者であるようだった。


 それでも、そんな相手に負けたくないと思うのは。もう、その理由に気づき始めていた。


 ◇◇◇


 そんなボクが初めて恋をした女の子は、どうやら、『恋』をしたようだった。

「アレクシス殿下!」

「ああ、ブレンダ。待たせたな」



 まるで――花が綻ぶように、笑う姿を見るたびに、その胸が痛む。


 かくれんぼをきっかけに、ブレンダとアレクシス殿下は距離を縮めたらしい。


 なにか、心配事がないといい――。そうは、思っていたけれど。

 

 それでも。


 ブレンダたちを見る視線の中で気になるものを見つけ、そっとリストに加える。

 アリーシャ・ライモンド伯爵令嬢。彼女には、気を付けておいた方がいいな。


 ボクは、ブレンダの味方だ。

 たとえ、ブレンダが誰に恋をしたとしても。


いつもお読みくださり、ありがとうございます。

これで一章は終わりです!

続きもお楽しみ頂けたら、幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ジルバルト…切ないぜ… ブレンダ操られてるから! 早く気付いて!
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