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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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それだけの男

 君に恋を、している。──ただ、それだけ。

 それだけ、の、男だ。


「アレクシス殿下?」

 君を見つめて動こうとしない私を君が、ブレンダが──不安そうな瞳で見つめる。その表情ひとつに、心臓がざわめく。

「いや、何でもない」

 努めて穏やかな声になるようにしながら、微笑む。そうすると、ブレンダは更に不安そうな顔をした。


 実際は何でもある。また、君の新しい顔が見られた。

 あのとき──初めて私がブレンダに怒られた日。あのときも思ったが、幼い私が得ることを諦めたブレンダの表情はどれも魅力的だった。嘆き、不安、怒り、恐れ、そして喜び。君のどんな感情も私に向けられるなら、これ以上の幸福はなかった。


 

「それよりも、早く隠れよう」


 私がそういうと、ブレンダは頷いた。今日は、教師たちが企画するかくれんぼが行われる。私とブレンダは、幸運なことに一緒に行動するペアだった。


 ブレンダの手を取ると、一瞬体を強張らせたが、振り払うことはしなかった。


 温かいその手の温もりを感じながら、私は隠れるのに最適な場所を探す。


 今回の鬼である教師たちが捜索を開始するまで、まだ十分時間がある。


 ペアで行動する、ということはそれだけ二人の時間が増えるということだ。一秒でも長く、君との時間が欲しい。


「ここはどうだろう?」

「そうですね、先客もいないようですし、丁度良さそうです」


 私たちが選んだのは、運動用具室だった。用具室との名の通り様々な物が置かれている。気づかれないようにするために、用具の置かれた場所を動かさないことを気を付けながら、奥へ進んだ。


 奥に着くと、二人で縮こまるようにして、座る。


「あの、アレクシス殿下」

「どうした?」


 ブレンダの言いたいことが何となく分かっていながら惚ける。


「そろそろ手を──」

 離して欲しい。最後まで ブレンダが言い終わる前に、手に込めた力を強くした。

「どうし……」

「ブレンダ、どうしても君がいいんだ」


 空を映したような瞳は、戸惑いを浮かべている。

 分かっている。この想いが君を困らせていることも。もっというと、迷惑であることも。

 

 でも、この想いがある限り、そして、私がそれを伝え続ける限り、君は私を見てくれる。胸のうちにある感情を表してくれる。それならば、私がこの恋を諦める理由はない。たとえ、はっきりと応えられないと言われていても。


「……アレクシス殿下」


 ブレンダはゆっくり私の名を呼んだ。

「私は、もう、ブレンダ・スコットではないのです」

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― 新着の感想 ―
[一言] そうそう。ブレンダ・スコットじゃ無くしたのはお前だがな!byジルバルト(笑)
[一言] もしかして殿下はブレンダがなぜ平民になったのかイマイチ理解できていないのかな?笑 殿下のこと大嫌いですけど、お話のキャラとしてはどんなに小さな言動でも素晴らしく読者の心を逆撫で出来る、超有能…
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