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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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見るまでもなく

 図書室に着くと、変わらず紙とインクの香りがした。……うん、落ち着くわ。一つ深呼吸をして、アレクシス殿下のことを頭のすみに追いやる。


 朝の柔らかな日差しが差し込んだ一番良い席には、既にジルバルトが座って問題集を解いていた。まだ、図書室にはジルバルトしかいなかった。


 なので、邪魔をしないよう小声で挨拶をしてその隣に座って、問題集を開く。


 そういえば、そろそろ中間テストの結果が出る頃かしら。自分なりに、精一杯やったと思う。そして、それなりに結果が伴っているはず、という確信めいたものも。


 でも全く不安がないといえば嘘になってしまう。特待生の条件は、好成績の維持だから。


 むむ、と眉を寄せて考えているとコロン、と何かが私の机に転がってきた。


 何かしら。それは小さな鳥の形に折り畳まれた紙だった。

「わぁ……」

 思わず歓声を上げそうになって、ここが図書室であることに気付き声を落とす。

 危ない危ない。他の人の邪魔をしたら駄目よね。


 鳥を手に乗せて観察する。鳥の瞳はインクで描かれていて、生き生きとしている。嘴を指でつつくと、ゆらゆらと揺れた。とっても可愛い!


 うわー! この鳥の製作者はとっても手先が器用なのね。すごいわ。


 心の中ではしゃいで暫くつんつん、と鳥を触っているとふっ、と吹き出す声が聞こえた。


「……すごい顔」

「え」


 少しだけ馬鹿にしたような、呆れたような、それでいて、優しい声に視線を鳥から上げるとジルバルトが笑っていた。


「……じる、ばるとさま?」


 普通の音量で話しているけれども、今は静かにしないといけない時間じゃ──?

 そう思って首をかしげるとジルバルトが言った。

「今日まで勉強する物好きはボクとブレンダぐらいだから、他には誰もいないよ」

そう言われて辺りを見回すと、確かに私とジルバルト以外いなかった。

「え、どうし──」

「テスト結果の貼り出し今日だから。今日くらいは休みたい子も多いんじゃない?」


 そろそろかなぁ、とは思っていたけれど今日だったんだ!


 急いで見に行かないと! と立ち上がって気づいた。


「ジルバルト様」

「どうしたの?」

「これ、ジルバルト様が作られたんですか?」


 だって、図書室には私とジルバルトしかいない。

「うん、そうだよ──まぁ、贈物といえない些細なものだけれど」

「とても素敵な小鳥ですね!」

「別に。……それほど感動されるほど大したものじゃないし。でも」


 そうかな。こんなに素敵な贈物だったら、貰った相手も喜ぶと思う。

「ブレンダが喜んでくれたなら、よかった。それ、あげるよ」

「えっ!? よろしいのですか?」

「まぁね。学年一位のお祝いにもならないけれど」

「……学年一位?」


 ジルバルトが一位をとったのかな。

「さすが、じるば──」

「ボクじゃなくて、ブレンダ。まぁ、ボクもだろうけれど」


 私? 私が一位? それに、ずっと一位だったクライヴを押さえて、ジルバルトが一位をとったの?

「貼り紙見たんですか?」

「ううん。でも、そんなの見なくてもわかるでしょ?」


 ……すごい自信だわ。

 思わず呆気にとられていると、ジルバルトは、ふと微笑んだ。

「そういえば、今日のブレンダの髪型、ゆらゆら揺れて鳥の尾みたいだね」

「あ、はい。実は鳥ではなく馬の尻尾を──」

 イメージして、と続けようとして図書室の扉が勢いよく開いた。

「ジル! ついに本気を出したな」

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