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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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潜熱

 呼吸を整え歩いていると、意外な人物に話しかけられた。

「ブレンダさん?」

「! ミラン様?」

 振り向くと、ミランだった。ミランはクライヴと一緒だった。もしかして、学園まで最近は一緒に登校しているのかな。

「アルバート様もご一緒ですね」

 そんなことを考えながら、二人が一緒なことを指摘すると、ミランとクライヴは顔を赤くした。

「ええ、そうなの。……ところで、ブレンダさん」

「……なんでしょうか?」


 私の頬が熱いことを指摘されたらどうしよう、と考えていると、ミランは近寄ると柔らかく私の髪に触れた。


「その髪型、初めて見たわ。……でも、とってもお似合いよ」

 ミランの掛け値なしの賛辞の言葉と、優しい笑みに思わず胸がきゅうと締め付けられる。すごく、嬉しい。


「ありがとうございます!」


 その衝動のままに抱きつく。すると、ミランも抱き締め返してくれた。

 隣でクライヴが、私だってまだ……、と何かいいたげにしていたけれど、こうできるのは親友の特権だ。なので、思う存分、ミランとの抱擁を味わった後。


「……先程から思っていたのだけれど、頬が赤いわよ。大丈夫なの?」

 ミランが眉を寄せて、心配そうな顔をした。

 ……指摘されちゃった!


 動揺したけれど、瞬時に切り替える。

「はい。走ったせいだと思います」

「そう……? ならいいけれど」

「心配してくださって、ありがとうございます」


 私がそういうと、ミランは頬を赤くした。

「べ、別に。ゆ、いえ、親友として当然の心配よ」

 つん、とした態度とは裏腹に言っていることはとても私に甘い。


「ミラン様、大好きです!」

「わ、私もブレンダさんのことが……わっ!」


 私は思わず、嫉妬したクライヴに引き離されるまでずっと、ミランに抱きついていた。



◇ ◇ ◇


 暫く朝の登校デートを楽しむらしい二人と別れ、私はいつも通り図書室に向かっていた。

 

 今日も、予習復習がんばるぞ!


 それにしても。この髪型いいな、気に入った。歩く度に、ゆらゆら揺れて、少し面白いわ。


「ブレンダ」


 ──それは、私がその人から聞いたこともないような慈しむような声、だった。


 でも、声色自体は違っても、聞きなれた声には違いない。なんで、そんな。私は、信じられない思いで振り向くと、アレクシス殿下が立っていた。


「……おはよう、ございます」


 ぎりぎり不敬にならない視線の逸らし方で挨拶をすると、アレクシス殿下は、あぁ、おはよう、と柔らかく微笑んだ。


 まるで。まるで、あの日の告白はなかったかのように。


「ブレンダ、今朝はいつもと違う髪型なんだな」

「……はい。では」


 失礼しますと礼をして、図書室へと足を向ける。

「本当に、いい髪型だ。……首元に噛みつきたくなる」


 小さく呟かれた言葉は、私に届くことなく、窓からの風に掻き消された。

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― 新着の感想 ―
[一言] 殿下、安定の気持ち悪さ。笑 いっそ清々しい。笑
[一言] わーーーーー!殿下きもちわるーーーー!!!
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