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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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握った手

「ん……」

 ジルバルトが目を覚ました。顔色は、大分よくなったように思う。

「おはようございます、ジルバルト様」

「……おはよ」


 ふわ、と一つ欠伸をしたジルバルトに笑う。

「よく眠れましたか?」

「うん。すっきりした」


 それは良かった。ほっとしていると、手を繋いだままなことに気づいた。

 気付かれないように、そっと、手を離す。

「ありがとう、ブレンダ。手、握っててくれて」

 気付かれてしまった!

「ええっと、これは、その」

 言い訳を探す私に、ジルバルトは柔らかく微笑む。

「おかげでうなされずにすんだ」

「……それなら良かったです」


 少し恥ずかしく思いながら俯くと、ジルバルトは笑った。


「すっかり暗くなっちゃったね。女子寮まで送るよ」

「でも……」

 ジルバルトは病み上がりだ。そんな人に無理をさせるわけには行かない。

「大丈夫。もう熱、ないから」


 そういって、ベッドから起き上がる。

 慌てて私も教科書を片付けた。


◇ ◇ ◇


 ジルバルトと帰り道を歩く。

 ジルバルトはいつも私の歩調に合わせてくれるので、少し申し訳ない。


 そんなことを考えていると、ふいにジルバルトが言った。

「ブレンダ」

「はい」

「ブレンダには、お兄さんがいるよね」


 確か、ジルバルトには弟がいたはずだ。弟が跡を継ぐといっていたから。そう思いながら、頷く。

「はい」


 今の私は公爵家を勘当されたから、まだ兄と呼ぶことが許されるのかわからないけれど。

「ボクには弟がいる。弟はすごく可愛いんだ」

「そうなんですか」


 ジルバルトの弟。どんな子だろう。

「でもね、時々、弟のことが妬ましくなる」

「妬ましい、ですか」


 ローリエ男爵家の跡取り問題のことだろうか。


 私の疑問が顔にでていたのか、ジルバルトは頷いた。

「……それもあるけど。それ以上に、羨ましいんだと思う。愛を当たり前のように、もらえるあいつが」


 愛を当たり前のようにもらえる。それは、反対にいえば、ジルバルトはもらえなかったということ。


 どんな顔をすればいいのかわからず、戸惑う。


 ジルバルトは苦笑して、息を吸い込んだ。

「熱が出ても誰もそばにいてくれなかった。だから、ブレンダがいてくれて、嬉しかったんだ。……ありがとう」

「私は、何も──」

「なにもじゃないでしょ。そばにいて、手を握ってくれた」


 改めてまた言われると、照れてしまう。

 照れて俯いた私に、ジルバルトは囁いた。


「ブレンダ、ありがとう」


 そして、手を取られる。

 私もジルバルトももう熱はないし、うなされているわけでもない。


 だから、握る理由なんてないはずで。


 でも、私はそのことを指摘できずに、女子寮まで手を繋いだ。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] お互いに家族に恵まれなかった2人。 依存じゃなければ、いいカップルになれると思うんですけどね。 でも、ルドフィルが追い上げてきているしなぁ……。 悩ましいところです。 ……えっ、殿下? 誰で…
[良い点] ジルバルト……!! 平常時に手を繋ぐとは大胆です(>_<)♪ いつも更新を楽しみにしています。 続きが楽しみです♪
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