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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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悪夢

 保健室に行って、体温を測るとやっぱりジルバルトには熱があった。

「特に、不調は感じなかったんだけどな」


 けれどそういうジルバルトの頬はわずかに赤い。熱が上がってきたのだろう。


「とりあえず、薬を飲んで寝てください」

 さぁ、早く。そう急かす私に、ジルバルトは苦笑して頷いた。

「わかったよ」


 ジルバルトがもらった薬は私が飲んだものと同じだった。だから、とても苦いはずだ。

 それなのに、ジルバルトはあっさりと薬を飲むと、ベッドに横になった。

「……言う通りに薬飲んだのに、なんで不服そうな顔なの?」

「ジルバルト様、薬苦くなかったですか?」

「ああ、そのこと。苦かったけれど、飲めないほどじゃない」


 ジルバルトは大人だ。

 私が衝撃を受けていると、ジルバルトは笑った。

「ボクはもう寝るから、ブレンダは図書室に戻りな。勉強があるでしょう」

「いえ、ここでします」


 以前のジルバルトがそばにいてくれたように。私は、椅子を持ってくると、その椅子に座って教科書を開いた。

「それとも、ジルバルト様は人がいると眠れない性質ですか?」

「うん、そう。……でも、なんでだろ。ブレンダだったら、気にならない」

「だったら、そばにいます」


 熱が出たときは、誰でも心細くなる。

 悪夢を見るときもあるし。

 私もルドフィルがいてくれて、とても心強かったから。


「わかったよ。……ありがと、ブレンダ」


 そういって、ジルバルトが目を閉じる。

「おやすみなさい」


 だんだんと、規則正しい呼吸が聞こえてきた。それを確認して、私も教科書の頁をめくる。


 静かな保健室に、頁をめくる音と、呼吸音が響いた。


◇ ◇ ◇


「……めんなさ、ごめんなさい。ボクが──だから」

「ジルバルト様?」


 ふいに、声が聞こえて、教科書から顔をあげる。

 ジルバルトはうなされているようだった。


 どうしよう、起こした方がいいかな。熱が出ているときは体の休養も必要だ。でも、悪夢だとかえって疲れるだろうか。


 迷った挙げ句に、そっとジルバルトの手に触れる。

「大丈夫ですよ……大丈夫。ここには、あなたを脅かすものは、なにもありません」


 そういって、大丈夫、大丈夫、を繰り返す。

 すると、ジルバルトの表情が和らいだ。


「……ふふ」


 寝顔のジルバルトはあどけない。

 こんな表情もするのね。


 そんなことを思いながら、ジルバルトが起きるまで、手を繋いだ。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ジルバルト様とブレンダかわいいです( ; ; )
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