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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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風邪

 お昼休みになった。いつも通り、屋上でパンを食べる。

 いつもなら、気持ちよく感じるはずの風が少し肌寒い。


 そんなことを感じていると、ルドフィルがやって来た。そういえば、ルドフィルにされた提案についてまだよく考えられていなかった。

「やぁ、ブレンダ」

「こんにちは、ルドフィル様」


 ルドフィルはにこにこしていたけれど、私の隣に腰を下ろすと、急に顔をしかめた。

「ルドフィル様?」

 どうしたんだろう。

「ブレンダ、あのさ」

 そして、私の頬に手をあてると更に顔をしかめる。

「?」

「やっぱりか。……気付いてないんだね」

「???」


 つまり、どういうことだろう。

 私が首をかしげると、ルドフィルは苦笑して私の手をとった。

「ブレンダ、熱があるよ。保健室にいこう」


 そんなまさか。

 私の体はわりと頑丈だ。少し雨に降られたぐらいで、風邪を引くなんて。


「ルドフィル様の手が冷たいのでは?」


 往生際の悪い私に、ルドフィルは笑った。

「最近は苦くない薬もあるよ」


 ……薬を飲みたくないことがばれてる!?

「わかるよ、従兄だもの。だから、ほら、ブレンダ」

「……はい」


◇ ◇ ◇



 ルドフィルに連れられた保健室で計った体温は、やはりというか熱があった。軽い薬をもらい、一時間ほど休むことになってしまった。


 

「……ブレンダ」

 薬をじっと見つめた私を促すようにルドフィルが名前を呼ぶ。

 ……飲みたくない。でも、飲まないとなおらないよね。


 覚悟を決めて、薬を飲み込み、一気に水で押し流す。

「──! !? !!!」


 薬はとても苦かった。嘘つきだ。

 思わず涙目になりながら、ルドフィルに抗議する。だというのにルドフィルはそれを意に介した様子はなく、まるで幼子にするように私の頭を撫でた。

「よく頑張ったね、ブレンダ」


 そしてお手製のクッキーを差し出した。口直しにということだろう。


 もちろん、口の中を苦味が広がったままにはしておけないので、受け取ったけれど。なんだか、釈然としない。


「……っふ」


 クッキーを食べていると、突然ルドフィルは笑いだした。


「ルドフィル様?」

「あまりに不服そうな顔してるから。ブレンダのそんな顔、久しぶりに見たなぁって」


 ……確かに。薬は幼い頃からずっと苦手だけれど、無表情で飲んできたものね。


「薬も飲んだし、後は寝るだけだね」

 言外にさっさと寝ろと言われてしまったので、しぶしぶベッドに横になる。


 すると、布団が柔らかくかけられた。


「おやすみ、ブレンダ」


 頭を、撫でられる。

 今朝も図書室で寝たばかりだ。そんなことされても眠くない──と思ったのだけれど。


 瞼はだんだんと重くなっていく。


「……ブレンダ、僕は、君が幸せなら」

 穏やかな囁き声。でも、なぜか少しだけ苦しそうだと思った。

「でも、本当は──」


 なんだろう。その続きが気になるのに。再び頭を撫でられ、かつてよく知っていた熱にそっくりな温度に、私は意識を手放した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ルドフィルがめっちゃカッコいいです♪ ブレンダの頬に手を当てるところとか、ブレンダの頭を撫でるところとか! 幼い頃からブレンダを知っている分、兄的ポジションでブレンダに躊躇なく触れてくる場…
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