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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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30/150

月光

「……?」

 幸せな気分に浸っていると、医務室に着いた。ジルバルトは、医務室に着くと

「やっぱり体調がよくなったみたいだね」

と大きな声で言った。どうしたんだろう。疑問に思っている私にジルバルトは囁いた。

「体調悪くないんでしょ」

「え、ええ、はい」


 それはもちろん。さっきのは、演技だ。

 頷くと、ジルバルトはいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「だったらさ──、まだ、ダンスパーティを終えるには早いとは思わない?」


◇ ◇ ◇


 その言葉と共に連れられたのは、学園のテラスだった。月明かりが落ちるそこは、どこか神秘的にみえる。


 テラスに着くと、ジルバルトは胸に手を当てて微笑んだ。

「どうか、ボクと踊っていただけませんか」

「喜んで」


 アレクシス殿下に体調不良といったから、医務室には行かなければならない。医務室に行ったという証拠は、あのとき周りにいた人たちが証明してくれるだろう。でも、ずっと医務室にいるのは退屈だ。


 そこで、ジルバルトは私の体調がよくなったことにして、ダンスに誘ってくれたのだろう。


 ジルバルトの手をとる。

 すると、ジルバルトが曲を口ずさんだ。

「……ふふ」


 少しだけ、音程のずれているそれに思わず笑うと、ジルバルトは拗ねてしまった。

「笑うんなら、ブレンダがやってよ」

「やりません。ジルバルト様の曲の方が素敵ですから」

「……はぁ。ブレンダの人たらし」


 溜め息をついたジルバルトは、再び口ずさむ。


 やっぱり音程がずれているその曲は、だけど不思議と耳に馴染んだ。


 私たちの他に誰もいない場所で、素敵な曲で踊るダンス。それはとても贅沢な気がした。


 ルビーのような瞳は、月光を受けてきらきらと輝いている。その瞳に思わず魅入られていると、ジルバルトはふっ、と笑った。

「見惚れちゃった?」

「はい」

 頷く。

「……なんでそこで否定しないかな」

「事実なので」


 そういうと、なぜかジルバルトは大きな溜め息をついた。

「ジルバルト様?」

 どうしたんだろう。

「……ブレンダってほんと、そういう──なるほど」

 何か納得しているけれど、私は全く納得できていない。

「よくわかったよ、ブレンダが魔性だってこと」

「!?」


 私が魔性!?

「でも、犬は魔性じゃないですよね」

 以前、ジルバルトに犬みたいと言われたけれど。犬は魔性とは言わない気がする。

「うん、でも、ブレンダは魔性の女の子だよ」

 ジルバルトはきっぱりと言いきった。えっええー。どういうことだろう。

「違いますよ」

「違わない」


 二人でしばらく言い合って、それから、顔を見合わせて笑った。


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― 新着の感想 ―
[一言] ブレンダが自分の変化を自覚し、それを好ましいと 自分でも思っているからこそ 「昔を知らない」ジルバルトに今のブレンダが 好きと言ってもらえるのはうれしいと思います。 ルドフィルは変に取引と…
[一言] ブレンダのお相手はジルバルトで決まりですかね? ルドフィルは残念でした。 殿下?そもそも土俵に上がってないので。
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