入学式
夜が明けたら、入学式だ。
ミランと別れ、支度を整える。紺を基調とした制服は、それなりに似合っている……と、思う。
鏡でもう一度だけ、おかしい部分がないか確認して、自室を出た。
自室を出てホールに向かうと、多くの新入生たちでごった返していた。今年の特待生は私だけと聞いていた通り、ホールには見知った顔しかいなかった。
私が到着した時間は新入生のなかでは遅かったようで、私が到着してほどなくして入学式は始まった。
入学式では、入学のお祝いと、この学園でのルール──つまり、この学園に在籍している間は、平等であることが、告げられた。
けれど、何をもってして平等とするかは難しいところだ。たとえば。私が元婚約者であり、同じく新入生の第二王子のアレクシス様に敬語を使わず話しかけたとする。すると、不敬罪で捕まることはない。けれど周囲に眉をひそめられるし、常識のない平民だと思われるということだ。
そんなことを考えながら、入学式を終え、自分の教室にむかう。残念ながら、ミランとは教室が別れてしまった。教室では、この学園を無事に卒業できたら、それなりの将来を約束されていること。だから、留年や、退学にならずに卒業できるよう努めるよういわれた後、今日は入学式がメインということもあり、解散を告げられた。
私が、教室を出ようとすると、担任の先生に呼び止められた。
「?」
「ブレンダさん、生徒会に興味はありませんか?」
「生徒会、ですか……」
確か、入学テストで優秀な成績を修めることができたものを優先的に役員に誘っているときく。正直言って、面倒そうだ。でも。
「興味があります」
生徒会に入ることで、私の将来に有利になるかもしれない。私が頷くと、先生はそれなら、と生徒会室まで案内してくれた。
そもそも、以前の私を知っている人ばかりだろうけれど。最初が肝心。
コンコンコンと、扉をノックすると、入室の許可がでた。
「失礼します」
私はできうる限りの笑顔で生徒会室の中に入った。
生徒会室の中にいた新入生は思った通り、アレクシス殿下と、ミランだけだった。
先輩方は、どんな方だろう。笑顔を浮かべながら、辺りを見回す。すると、呆然とした声で、アレクシス殿下に名前を呼ばれた。
「……ブレンダ」