相談
『ブレンダへ
友情の証に』
簡素なメッセージカードが添えられたそれは、間違いなくドレスだった。
差出人は、アレクシス殿下だ。
私はドレスに困っているという話はしていなかったはずだけれど。それに、ドレスなんて婚約者だったときにも贈られたことはなかった。
「……どう、しよう」
自室に届け物があると寮母さんに聞いたけれど。まさか、ドレスだなんて。
高価すぎる贈り物は、返礼品に困る。それに……。
「ドレスだけじゃないわ。靴に、アクセサリーまで」
ダンスパーティにこの一式で参加しろと言わんばかりだ。
送り返したいけれど、友情の証にとかかれては、突き返すのも難しい。
「……はぁ」
とりあえず、こういったことは平民の私には手が余る。誰かに相談した方がいいだろう。ルドフィルか、ミランか。
同性のミランの方が、相談しやすいかな。
私は、途方にくれそうになりながら、ミランの部屋を訪ねた。
「ブレンダさん? どうしたの、深刻な顔をして」
私が訪ねると、ミランは笑顔でもてなしてくれたけれど、私の顔色を見て表情を曇らせた。
「……それが」
ミランに事情を話すと、ミランもそれは困ったことになったわね、と眉を寄せた。
「そのまま受け取る……のは、あなたの性分ではないでしょうし。かといって、友情の証にもらったものをお返しするのもね」
ミランの言葉に大きく頷く。
……そういえば。
「ミラン様は、ダンスパーティに参加されますか?」
クライヴはちゃんとミランを誘えたのだろうか。つい一昨日、ミランと喫茶店に行ったばかりのはずだけれど。
私が尋ねると、ミランは少し恥ずかしそうに頷いた。
「……アルバート様に誘っていただいたの」
「! そうなのですか!」
もう、ダンスパーティのパートナー役を取り付けるとは。クライヴの熱意が伝わったのだろう。
「……ええ。それで、話を戻すけれど。アレクシス殿下に直接お伺いするのはどうかしら?」




