表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/150

かけがえのないもの

「あ、頭を上げてください」

 この人は、第二王子だ。簡単に人に頭を下げていい相手じゃない。

「……いや。私は、君にそれだけのことをした」


 けれど、アレクシス殿下はそういってちっとも頭をあげる気配がなかった。

「まずは私のせいで、スコット公爵家を勘当されたこと。そして──私が君を知ろうともしなかったこと。本当に、すまない」

「……私は」


 父たちと縁が切れたこと、恨んでいない。そう伝える。二つ目も別に全く気にしていないのだけれど、なんと答えよう。


 言葉を探していると、ふいに、アレクシス殿下は、私に尋ねた。

「ブレンダ、私の好きな色を知っているだろうか?」

「水色です」

 それがいったいどうしたというのか。疑問は次の質問にかきけされる。

「私の趣味は?」

「ピアノですね」


「私の癖は? 知っているものが、あるだろうか」

「緊張すると頬をかく癖が──」


「では、私の苦手なものは?」

「虫、でしょうか」


 

 これら質問になんの意味があるのかさっぱりだけど、答えていく。

「……ゼロだ」

「え?」


 苦手なものは数字だったのだろうか。そう思い、首をかしげると、ようやく頭をあげたアレクシス殿下は困った顔をした。


「私はこれらの君についての質問で、答えられるものは何一つない」

「……それは」


 知ろうとされなかった私にも責任がある。

「……君がなぜ、無表情を貫いていたのか。君は聞けば答えてくれただろう」

「……はい」

「だが私は聞きもせず、一方的に……」

 そこで、アレクシス殿下は深く息を吸った。そして、静かに吐き出す。

「君を、嫌っていた」

 アレクシス殿下はなぜか、とても苦しそうな顔をした。

「その結果、私は本当の君にたどり着けないまま君との婚約を解消し、君は、公爵家から勘当された。謝っても許されることではないと思う。私は、君から生活と家族を奪った」


 アレクシス殿下は、まさか、婚約を解消したことで、私が家を追い出されるとまでは思っていなかったのだろう。

「アレクシス殿下」


 穏やかな声でよびかける。すると、アレクシス殿下は叱責を恐れる子供のようにびくりと、体を揺らした。

「殿下の婚約者でありながら、嫌われる私に多分に非がありました。ですから、アレクシス殿下がお気になさる必要はございません。それに、殿下は私から家族と生活を奪ったとおっしゃいましたが」


 私は、ミランをちらりと見る。ミランは心配そうに私を見ていた。ミランに向かって、微笑み、それからアレクシス殿下に向き直る。


「私は、アレクシス殿下のおかげで、かけがえのない友人と自由な生活を得られました。アレクシス殿下が婚約を解消して下さらなければ、決して得られなかった。ですから……ありがとうございます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[良い点] 良い点を見て真っ直ぐに生きる素敵な女の子ですね これでまた王子は好きになってしまうんだろうか笑 でも都合良く元サヤには戻れないよ~って言いたい こんな良い子はモテモテだろうから別にわざわ…
[良い点] これはよいミランへの友情溢れるセリフ [気になる点] >苦手なものは数字だったのだろうか? ヒロイン素直すぎ!良い子だなあ 数字のゼロが嫌いな殿下とか理数系すぎるよ! [一言] アレクシ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ