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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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夜に見惚れる

 楽しかった休日も終わり、今日からまた学園生活がある。


 丁寧に髪を櫛でといて、クリップでとめる。

 そういえばクリップも下町でみようと思っていたのにすっかり忘れてしまっていた。

 次の休日は、クリップを探してみよう。


「よし」


 今日も一日、頑張ろう。


◇ ◇ ◇


 図書室に向かうと、すでにジルバルトは来ていたようで、一番日当たりのいい席はうまっていた。なので、その隣の個人的に二番目にいいと思っている席に座る。


 ……そういえば。


 ジルバルトは宵闇の貴公子と呼ばれているのだった。


 問題集を解きながら、ちらりとジルバルトの姿を観察する。


 ジルバルトは深い夜を思わせる、濃紺の髪に、ルビー色の瞳をしていた。


 確かにミランの言う通り、顔立ちはかなり整っている……と思う。整いすぎていて鋭利な雰囲気も醸し出していた。


 でも。笑ったときは、とても──。


 そんなことを考えていると、私の視線に気づいたジルバルトが真剣な表情を和らげた。

 一気に纏う雰囲気が変わり、思わず見惚れているとノートの切れ端を差し出した。

『勉強、しにきたんでしょ』


 ジルバルトは、その神経質そうな見た目とは異なり、丸い文字を書くらしい。


 意外に思いながら受け取ったノートの切れ端に、返事を書く。


『そうですね。集中します』


 そう書いて返そうとして……、一言書き加えて、ジルバルトに渡す。

 ジルバルトは一瞬満足そうな顔をした後、私の書き加えた文字に気づいて、顔を真っ赤にさせた。


「ーーっ!」


 口をぱくぱくさせてこちらを見たジルバルトに、にっこり微笑む。


 以前からかわれた仕返しだ。


 ……とはいえ、この図書室に来たのはジルバルトの言う通り、勉強が目的だ。


 なので再び問題集に視線を落とし、ホームルームの予鈴が鳴るまで、集中することにした。


◇ ◇ ◇


 午前の授業を終えた、お昼休み。

 食堂の特別メニューはもう食べたので、今日は屋上に行こうか。でも、食堂の他のメニューも気になる。


 メニューの多さは、やはり購買部よりも食堂のほうが上だ。


 散々悩んだ挙げ句、食堂に行くことにした。




 食堂はやはりすごく混んでいた。でも、今日の目当ては、特別メニューではないので、気楽に並ぶ。


 なにがいいかな……。並びながら考えていると、後ろから声をかけられた。

「氷姫。……いや、雪解け姫」


 聞き覚えのありすぎる声とフレーズにぴしりと固まる。


 ……やっぱり、今日は屋上に行こう。私が列からそっと抜けようとすると、追い討ちをかけられた。

「まぁ、待ちなよ。雪解け姫。今日の日替わりも美味しいからさ」

「申し訳ありませんでした!」


 今朝のことは私が悪かった。だから、その変……恥ずかしすぎる名前で呼ぶのをやめてくれないだろうか。


 私が真っ赤になりながら謝ると、ジルバルトは、にやりと笑った。

「わかったんならいいけど。でも……」


 でも? 何だろうか。そう思ったところで、丁度私の順番が来たので、ハンバーグを注文し、トレーを受け取る。


 ジルバルトは、白身魚のポワレにしたらしく、そのまま二人で空いている席に座る。


「でも、なんですか?」

「軽率にあんなことを書くのはよくないって、話」


 それはそうだ。そのせいで、ジルバルトにからかわれてしまったのだから。


「いや、わかってないでしょ。あんた──……、そういえば、まだ名乗ってなかったね。ボクは、ジルバルト・ローリエ」

 そういえば、そうだった。

「ブレンダと申します。ローリエ様」

 スコット公爵家から勘当された私には、家名がない。

「ジルバルトでいい。ボクもブレンダって呼ぶから」

「ジルバルト様」

「うん。……それで、話を戻すけれど」


 ジルバルトが白身魚を綺麗に切り分けながら、話し出す。


「あの書き方だと、口説いてると勘違いされかねない」


 く、口説……!? 

「隣国の古代語であるメリグリシャ語を知っていたのは素直にすごいと思うけれど。メリグリシャで、夜を匂わせる言葉は、愛の告白が多いんだ。だから、気をつけたほうがいいよ」


 なるほど。


「それとも、知ってて口説いてた? そうだよね。特待生サマだもんね。それならそうと、言ってくれれば──」

「ち、ちが……!」


 真っ赤になって否定すると、ふはっ、とジルバルトは笑った。

 やっぱり、笑うとぜんぜん違う。



 その後は、メリグリシャ語を第二外国語として選択しているジルバルトにより、色々と教えてもらって、とても楽しい時間を過ごした。

 

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