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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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帰寮

 それから、数日、別荘で夢のような楽しい日々を過ごし、とうとう、寮に戻る予定の日になった。

 まだ、夏季休暇が終わるまで少し日数があるけれど、私はまだ課題の最後の一つである、芸術作品を取り組んでいなかった。

「お世話になりました」

「とっても楽しかったわ」

 まだぎりぎりまで四人で過ごすらしい、男子たちに手を振って、ミランと馬車に乗り込む。

 四人も手を振り返してくれたところで、馬車が出発した。

「……ふふ」

 夏季休暇を思い出し、笑みを浮かべる。


 とても充実した、いい、夏季休暇だったなぁ。

「ミラン様、誘ってくださり、ありがとうございました」

「ブレンダさんと長く一緒にいられてとても楽しかったわ」

「私もです」

 微笑んで、夏季休暇の思い出に花を咲かせる。


「……で、……だから、とても楽しかったわよね。来年も、ブレンダさんと一緒に過ごしたいわ」

「奇遇ですね、私もそう思ってました」

 顔を見合わせて、笑う。

「ふふ、さすがは大親友ね」

「はい!」

 ――まだまだ学園生活は、始まったばかりだ。



 話しているうちにあっという間に、寮に着いた。あたりはさすがに、薄暗くなっていた。

「じゃあ、ブレンダさん、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 ミランと別れ自室に入る。客室もとても快適だったけれど、自室に帰るとほっとした。

「色んなことがあったなぁ……」

 将来について考える機会もあったし、なにより、めいっぱい遊んだ。

「ん?」

 自室に見知らぬ箱がある、見ると、寮母さんからお届け物をおいておくね、とメッセージが添えられていた。

 誰からだろう。

 疑問に思いつつ、箱を開ける。

 そこに入っていたのは……。

「ドレスだ……!」

 白を基調として花の刺繍が入ったドレスや、それに似合う靴、アクセサリーが入っていた。

 箱の中には、兄から手紙が入っていた。

 愛する妹へ、から始まったその手紙は、まだ家のことは保留でいいことと、誕生日のお祝いが書かれていた。これは、ダンスパーティーが学園であったことを思い出し、贈ってくれたようだ。


「でも……」

 兄の気持ちは大変嬉しいけれど。アレクシス殿下から以前贈ってもらったドレスもある。

 今度のダンスパーティーに参加するかも未定だし。

 もし、参加することになったら、そのときに悩もうかな。

 私は、そっと兄から貰ったドレスをしまい、服を着替えてベッドにもぐりこんだ。

 明日は、芸術作品を完成させ、兄にお礼の手紙とひまわり畑のポストカードを送ろう。

 そう考えているうちに、眠りについた。


 翌朝、まずは兄に送る手紙を書き、それにポストカード同封した。

「これでよし」

 次は、芸術作品だけど――……。

「ブレンダさん!」

 扉がノックされ、開けると、ミランに抱き着かれた。

「わっ、どうされましたか?」

 慌てて受け止めつつ、ミランに尋ねる。大きな虫でも見たのかな。

「ブレンダさん、あなたってすごいわ!」

 目をきらきらとさせたミランに、首をかしげる。私がどうして、すごいのかな。

「あなたが窓や外壁を綺麗にしてくれたって、寮母さんと私で話して回ったの。以前よりも快適になったって話題で持ちきりよ!」

「もうみなさん戻られたんですか?」

 昨夜は、私とミランだけだったのに。

「ええ。今朝帰って来た生徒が多かったみたい。とにかくきて!」

 ミランに引っ張られ、慌てて、廊下に出ると、たくさんの女子生徒たちが集まっていた。その中には特に親しくしてもらっている、同じクラスのキャシーやミュアもいた。


「窓が、ピカピカでとっても気分が良いわ!」

「それに外壁だって、とっても綺麗だったわ」

 みんなに口々にありがとう、と言われて、照れてしまう。

「あら、ブレンダさんって、照れた顔も素敵なのね」

「当然よ、私の大親友だもの」

 得意げなミランに笑いながら、みんなの感謝を受け入れる。

「本当にありがとう」

「どういたしまして」

 くすぐったいけど、頑張って良かったな。

 それから、廊下で誰かとすれ違うたびに、ありがとう、とお礼を言われて、とても幸せな気分になった。


 しばらく、女子生徒たちと話した後、自室に戻り、今度こそ、芸術作品に取り組む。

 私は机の上に、香水瓶、ひまわりの押し花、本、バイオリンを並べた。

 私の夏の思い出の一つである、誕生日を祝ってもらい、友人たちに贈ってもらった贈り物を描くことにしたのだ。

 キャンパスに、鉛筆で形を荒くとり、それを徐々に、細かく書いていく。鉛筆の下書きが終わったら、今度は明るい色から絵具を重ねた。

「うん、いい感じ」

 格闘すること数時間。何とか、自分の納得する絵が描けた。

 裏に小さくタイトルである「わたしの宝物」とかき、完成だ。

 これで、夏季休暇の心残りは――進路のことだけ。

まだ、夕方だし、学園に行って、進路相談担当の先生に相談しよう。


 私は、今、自分が悩んでいること――ずっと、研究職だけ考えてきたけれど、他にも道があることをしって、いろいろと試したくなった、ということを話した。

 先生は、私の話が終わると、引き出しから、一枚の紙を取り出した。

 お礼をいって紙を受けとり、詳しく読む。そこには、冬期休暇に、学生の職業体験ができる職場がいくつか、書かれていた。

 その中には、王城や、学園、そしてなんと天文塔などもあった。

「挑戦してみたいです!」

 私の言葉に先生は頷き、申込書を渡してくれた。その場で、申込書を記入し、礼をして職員室からでる。

新学期が始まったら、ルドフィルに改めて、お礼を言おう。

 私は、明るい気持ちで、女子寮まで帰った。


いつもお読みくださり、誠に有難うございます!

本作の書籍が2月10日に発売予定です!

何卒宜しくお願い申し上げます!!!!!

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