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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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熱い瞳

明日の7時にもう一話更新予定です!

 ――その後。

 お昼休憩――事前に使用人が持たせてくれたサンドイッチを食べて、また湖遊びは再開した。

 アレクシス殿下のことが気にかかりつつも、また二人になる機会はなかなか見つからない。

 アレクシス殿下のまねをして、今度は釣りに挑戦してみたのだけれど――私、ルドフィル、アレクシス殿下で横に並んでいて、話はできそうになかった。

「ブレンダ、竿がひいてるよ!」

「……え?」

 先ほどのアレクシス殿下のことを考えながら、釣り糸を垂らして静止していると、ルドフィルに

声をかけられた。

 思わず竿に目線をやると、ぶるぶると振動している。

「えっ、えっ!?」

 こ、これどうすればいいの!?


 混乱する私の後ろから抱き着くような形で、ルドフィルは竿を握ると、思いっきり斜め上に引き上げた。

「よし、釣れたね!」

 ルドフィルは手際よく、陸にあげた魚から釣り針を外すと、氷がたくさん入った箱の中に入れた。


「ルドフィル様、すごいですね!」

 すごい、以外の言葉が見つからなかった。

「せっかく自分で釣れそうだったのに、手だししてごめんね」

「いえ、ありがとうございます。どうすればいいのかわからなかったので、助かりました」

 ――ビチビチッ

「え?」

 魚が地面でまたはねている。

 はねた魚は手際よく、釣り針をはずされ、箱の中に入れられた。

 ――ビチビチッ

 その一分後に、また新たな魚が釣り針を外される。


「……アレクシス、殿下?」

 私とルドフィルは、呆然とした顔でアレクシス殿下を見た。

「どうかしたのか?」

 アレクシス殿下は、また魚を釣り上げながら、不思議そうな顔をした。

「どうしたって……」

 私とルドフィルは顔を見合わせた。

 箱の中には、まだ開始して十分程度だというのに、既に八匹以上の魚が箱の中に入れられていた。

 いくら何でも、ハイペース過ぎないだろうか。

 え? 釣りってそんなにひょいひょい釣れるものだったっけ。


「ルドフィル様、この湖って、そんなに簡単に釣れますか?」

 先ほども、ジルバルトと釣りをしていたルドフィルは、知っているはず。そう思いながら、尋ねるとルドフィルは首を振った。


「午前中は、合計で二匹しか釣れなかったよ」

 ……ということは。

「アレクシス殿下は、釣りがお得意なんですね」

「得意というほどのものでもない。誰でも、この程度は釣れると思う」

 そう言いながら、また、魚が陸にあがった。

「……」

 私とルドフィルは再び顔を見合わせた。

 お互い声に出さなかったけれど。考えていることは同じだったと思う。

 ――これが得意じゃなかったら、いったい誰が得意だと言えるというのだろう。


 私は、釣り糸を垂らすのをやめ、ひたすら、アレクシス殿下の早業に見入っていた。

 ルドフィルは箱と、アレクシス殿下の釣った魚を交互に見ていた。おそらく、箱の容量を気にしているのだろう。

 その後も、ポンポンと釣り続けるアレクシス殿下は、二十分ぐらい経って、ようやく満足したようだった。


「……こんなものだな」

 いつの間にか、他のみんなも集まっていて、みんなで拍手をした。

 ……すごい。

 それ以外の言葉が浮かばなかった。

 みんな口々に、ほめたたえる。

 けれど、アレクシス殿下はやっぱり不思議そうな顔をして、

「これくらい、別に普通だ」

と、首をかしげるのみだった。

 ――その後は、魚の鮮度の維持が気になったので、予定より早いけれど、別荘に帰ることになった。

 私とミランは女性だから、という理由で断られ持っていないけれど、男子陣は、重そうな箱を抱えている。

 ルドフィルは鍛えているのか、一番涼しい顔をしているけれど、ジルバルトは目が死んでいた。

 運ぶのに力を割くため、口数が少ない男子陣とは裏腹に、何も持っていない私とミランは楽しくおしゃべりをしながら帰り道を歩いた。


 その夜。夕食は満場一致で、魚料理になった。

 今日は、この別荘にも一人だけいる料理人が腕を振るってくれた。

「わぁ……」

 次々に運ばれてくる料理の数々に、歓声をあげる。

 ――けれど。

「え……?」

 十品目を越えたあたりから、みんなの顔色は悪くなっていった。


 流石に、料理人もレパートリーが切れたのか、十五品目以降は、焼いて、そのソースがそれぞれ違うだけだった。

 最終的に二十品並んだ魚料理を、みんな無言で黙々と食べ進める。

「うっ」

 早々に限界がきた私とミランは、男子陣の好意により、リタイアと、お風呂に入ることが許可された。

 お風呂から上がって、髪を乾かした後。


 ……男子たちは、どうなったかな。

 気になったので、薄手のカーディガンを羽織って、ミランとダイニングに行く。

 そこには綺麗に完食されたお皿と、屍のように机につっぷしている男子の姿があった。


「お疲れ様です」

 私とミランは、お水と胃薬をそれぞれに渡して回った。

 ――ちなみにこの事件は私たちの間で、後に「魔の魚料理事件」と呼ばれることになる。


 男子たちのおかげで、そんなに苦しくないお腹をさすって、ベッドにもぐりこむ。

 今日は、いろいろなことがあった。

 みんなで湖にいったこと。アレクシス殿下の過去を聞いたこと。熱のこもった視線で見つめられたこと。魚釣りをしたこと。アレクシス殿下が魚釣りが得意だったこと。魚料理がたくさん並んだこと。

 それでも、一番印象に残っているのは、やっぱり。

 ――君の色だからだ。

そういったときの、アレクシス殿下の瞳、だった。

あの熱い瞳を思い浮かべながら、目を閉じた。


お読みくださり、ありがとうございます!

本作の2巻が、予約受付中です!!!!!

何卒宜しくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 「ブレンダ、洗脳されてるよ。目を覚ませ〜!」って定期的に叫びたくなります(笑)
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