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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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ひまわり畑2

 結果は、私たちの方がアレクシス殿下たちよりも早くゴールした。賞品である栞を受け取りながら――一つ一つ若干作りが違う――ミランと、他愛ない話をしていると、アレクシス殿下たちがやってきた。


「かなり早いと思ったんだが。君たちのほうが早かったな」

 少し悔しそうなアレクシス殿下やクライヴと一緒に、今度は露店に売っていたアイスを食べる。

 暑かったので、生き返ったような心地だわ。


 みんなで迷路の感想をいいながら、アイスを食べた後は、露店でひまわり畑の絵が描かれたポストカードを二枚買った。

 みんなで少しずつお金を出し合って買ったそれは、ルドフィルとジルバルトへのお土産だ。


 ミランはマイン用だと言ってもう一枚買っていたので、私も兄に送る用にもう一枚買った。

 露店を見て回ったあとは、馬車に乗り込む。

 暑かったので、少し疲れたけど、とても楽しかったなぁ。

 帰りの馬車の時間は、ひまわり畑の感想に花を咲かせているうちに、あっという間に過ぎていった。


「おかえり」

「おかえりなさい」

 別荘に帰ってくると、ジルバルトとルドフィルが出迎えてくれた。

「ルドフィル様は、もう用事が終わったんですか?」

「うん。ローリエ殿が手伝ってくれてね」

 ……手伝える用事って、なんだったんだろう?

 また気になりつつも、ルドフィルの顔はあまり聞かないでほしいときの顔だったので、それ以上は詮索するのをやめた。

 その代わりに、ルドフィルたちにみんなで買ったポストカードを渡す。


「綺麗だね」

「ありがと」

 二人とも興味深そうにじっくりと眺めている。

 そんな二人にみんなでひまわり畑のよさをアピールした。

「とってもきれいでしたよ」

「迷路もありましたの」

「露店で、氷菓も食べられたぞ」

「たくさん咲いていた」

 私たちの言葉に、ルドフィルは、笑った。

「そうだね、機会があれば行ってみたいな」

 けれど、ジルバルトは、顔を顰めた。

「綺麗でも、暑いのはパス」

 二人の対照的な発言にみんなで笑いながら、和やかに時間が過ぎた。



――夕方になった。

 ばーべきゅーの美味しさにとりこになったみんなにより、今日もばーべきゅーをすることになった。

 二日目となれば、手慣れたもので、さくさくと準備は進み、夕食が始まった。


 今日は、昨日のようにアレクシス殿下に避けられていない。

 そのことが嬉しくて、ぱくぱくと料理を食べ進めた。

「ブレンダ、あまり勢いよく食べると、喉につまる」

 そう言って、アレクシス殿下が水を渡してくれた。

「ありがとうございます」


 嬉しいのと恥ずかしいのがごちゃまぜになった気持ちで、そのコップを受けとる。

 コップの水を飲み干すと、アレクシス殿下がまた注いでくれた。

 それにお礼をいいつつ、焼きあがったお肉を食べる。すると、視線が気になった。

「? アレクシス殿下?」

「いや、昨日の私はずいぶん勿体ないことをしていたのだと思って」

 勿体ない? どういうことだろう。

 私が首をかしげると、アレクシス殿下は手を近づけた。


「ブレンダ――」

「え――」

 アレクシス殿下と目が合うと、周囲の声が遠くなった気がした。それにすべてがゆっくりに感じた。

 アレクシス殿下は、私の頬をそっと指で撫でると、微笑んだ。


「ほら、とれた。ソースがついていたんだ」

 急に周囲の音が戻ってくる。

 そして、同時に羞恥心も沸き起こった。

「あ、ありがとうございます」

 は、恥ずかしい―。これでも、元貴族の令嬢だというのに。

 今度は、気をつけよう。

 気を引き締めて、食べている間も、アレクシス殿下は柔らかい視線で私を見つめていた。


「アレクシス殿下は食べられないのですか?」

 さっきからちっとも食べてない。お皿は空のままだ。そのことを指摘すると、アレクシス殿下は笑った。

「ああ、心を満たしている」

「? そうなんですね?」

 全くどういう意味か分からなかった。


 そう思っていると、アレクシス殿下が教えてくれた。

「ああ。ブレンダの美味しそうに食べる顔をみると、心が満たされるんだ」

「!」

 それは自惚れたくなってしまう言葉だった。

 アレクシス殿下は、やっぱり、まだ私を好いて下さっている?

 ……ううん。アレクシス殿下の婚約者だった時代には感情を表現しなかったから、こうして、表現しているのが物珍しいだけよ。

 わかっている。わかっているのに。

 じわじわと嬉しさがこみ上げるのは、どうしようもないことだった。

「……ブレンダ」

「? はい」


 アレクシス殿下は、相変わらず柔らかい視線で私を見つめている。その新緑の瞳に、魅入られていると、アレクシス殿下は苦笑した。

「そんなに嬉しそうな顔をしないでくれ」

 バレてた!?

 慌てて頬を押さえていると、アレクシス殿下は困ったように眉を下げた。

「今でも十分幸せなのに、これ以上を望んでしまいたくなる」

 ――これ以上を望む。

 それって、どういうことだろう。

 私が聞いても良いことなのか迷っていると、ルドフィルがやってきた。


「ブレンダ、デザートに果物をもってきたんだけど、食べる?」

「ありがとうございます、ルドフィル様」

 ルドフィルに差し出されたブルーベリーを受けとる。

 ――その後は、結局、はぐらかされってしまって、アレクシス殿下の言葉の意味を、聞けなかった。


いつもお読みくださり、ありがとうございます!

お読みくださる皆様のおかげで、本作の2巻が2月10日に発売することが決定しました!


レーベル・TOブックス様

発売日・2月10日

イラスト・nima先生

キャラクター原案・ふじさきやちよ先生


です!

TOブックス様のオンラインストアでは、特典SSもつくそうなので、ぜひご予約をよろしくお願い申し上げます!!

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