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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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ひまわり畑

 翌朝。小鳥の囀りで目を覚ます。あくびをしながら、ベッドから起き上がり、カーテンを開けた。

 まだ、早朝のようだ。

 ぼんやりと窓の外を眺めていると、ジルバルトが走っているのが見えた。

 別荘なので人と出くわす可能性が低いから、早朝でも走っているのだろう。

「とりあえず、支度を整えよう」

 顔を洗って、服を着替え、丁寧に櫛で梳いて寝癖を直す。

「……そういえば」

 鏡を見る。

 肩の高さよりも少し伸びた髪を、どうしようかと思っていた。

「きるか、伸ばすか……」


 もし、兄の誘いに乗って貴族に戻るなら、伸ばす必要があるけれど。平民のままでい続けるなら、髪を伸ばす必要もない。

「う―ん」

 将来自分がどうなりたいかわからないから、決めきれない。

 ルドフィルは、いろいろと試してみればいいって、いってくれたけど……。

「とりあえず、リヒトお兄様にもう少し保留にしてほしいって、手紙をかいておこう」

 せっかく早朝に起きたのだから、今は時間がある。

 そう決めて、兄に近況報告もかねて手紙を書いた。

「……ふふ」

 兄に、手紙をかく。以前は、どうせ返事はかえってこないだろうな、と思いながら書いていたけれど。兄は、三年越しでも返事をくれた。

だから、ちゃんとこの手紙の返事は返ってくるだろう。そう考えると、嬉しくて口元が緩む。

 嬉しさのあまり、文字が飛び跳ねないよう注意して、丁寧に文字を綴った。


 完成した手紙を使用人の一人に預けると、いい時間になった。

そろそろ、まだ眠っていた人たちも目を覚ましだす頃だろうと考えつつ、ダイニングに向かう。

 ダイニングでは、すでにジルバルトとクライヴが席に座っていた。

「おはよ、ブレンダ」

「ブレンダ嬢、おはよう」

「おはようございます」

 私も席に座ると、丁度ミランがダイニングに来た。その後は、ルドフィル、アレクシス殿下の順でダイニングに集合し、朝食会が始まった。

 朝食会での話題は、今日は何をして過ごすかだ。

「昼間の予定は、不参加で。少し用事があるんだ」

 そう言ったのは、ルドフィルだ。

 でも、なぜかみんな残念がることなく、頷いた。用事の内容を知っているのかな。


 少し気になりつつも、何をしたいか、を考えた。

「そういえば、別荘から少し離れた場所だがひまわり畑があるそうだ。ミラン嬢たちは興味があるだろうか?」

 ひまわり畑! 私も幼い頃――まだ母が生きていた頃、一度だけ家族と行ったことがある。

 黄金の海みたいで、とても綺麗だったのを覚えている。

「私は、とても行ってみたいわ。ブレンダさんはどう?」

「はい、私も気になります」

――そうして、今日のお昼はひまわり畑にいくことになった。


 ひまわり畑、楽しみだなぁ。暑いだろうから、帽子を持って行った方がいいよね。

 ジルバルトが暑そうだからボクは遠慮する、といったので、結局、ひまわり畑にいくのは四人――私とミランとクライヴとアレクシス殿下になったのよね。

 先ほどの話し合いを思い出しつつ、ひまわり畑にいく用意をする。

 ……あ、髪型はどうしようかな。


 帽子を被るんだったら、馬のしっぽのような髪型はできないよね。

 悩んだ挙句、髪の毛を下の方でふたつに結び、帽子を被った。少し、幼く見える気がするけど、涼しいから、今日はこの髪型にしよう。

 準備ができたので、客室を出て、一階に降りるとみんなすでに集まっていた。

「お待たせいたしました!」

「それほど待っていないから、そんなに急がなくて大丈夫だ」

 ……良かった。クライヴの言葉にほっとしつつ、みんなの下に行く。

「では、全員そろったから出発しよう」


 馬車では、私とミラン、クライヴとアレクシス殿下が隣に座った。


「あら、ブレンダさん。その髪型、初めてみたけれど、とても素敵ね」

 馬車の中で帽子を取ると、ミランが褒めてくれた。

「ありがとうございます」

 他の二人も口々に褒めてくれて、なんだか気恥ずかしい。

 幼い、とは言われなかったので、良かった。

 ほっと胸を撫でおろしつつ、話題になるのはこれから行くひまわり畑についてだ。

「これから行くひまわり畑では、迷路もあるようだ」

 クライヴの言葉に、みんなが興味を示した。迷路かぁ。とても楽しそうだ。

 その後も、百万本以上もひまわりが植えられているらしいことなど、様々な情報を聞いて、盛り上がっているうちに、馬車が止まった。


 どうやら、着いたようだ。

 ミランはクライヴに。私は、アレクシス殿下に。それぞれエスコートされて、馬車を降りる。

「……わぁ!」

 目の前を広がるのは、一面のひまわりだ。とても綺麗な光景に思わず歓声を上げる。

 私たち以外の観光客も多いみたいだからはぐれないように、気をつけよう。

 そう思いつつ、みんなでひまわりを見て回る。ひまわり、といっても様々な種類があるようで、大きいものも、小さいものもあった。

 しばらくみんなで見てまわったあと、ミランが看板を指さした。


「迷路はあちらからスタートみたい」

「よし、行ってみよう」

 迷路を無事ゴールすると、ひまわりの栞がもらえるらしい。そう聞いて、がぜんやる気になった私とミラン、アレクシス殿下とクライヴがペアを組んで、ゴールを目指すことになった。

「ブレンダさん、ちゃんと仲直りできたのね」

「はい。ありがとうございます、ミラン様」

 あの後、ミランと二人きりになる時間が取れず、お礼が言うのが遅くなってしまった。

 そのことを謝ると、ミランはいいのよ、と微笑んでくれた。

「一緒に頑張りましょうね」

「はい!」


 ミランと一緒に迷路を進んでいると、なんだか、星集め祭のことを思い出した。

 あのときは、アリーシャ・ライモンド伯爵令嬢に突き飛ばされたりして、大変だったなぁ。

 まだ、ひと月ほどしか経っていないことなのに、もう懐かしく思っていると、ミランが微笑んだ。


「こうしていると、星集め祭のことを思い出すわ」

「! 私もちょうど、そのことを考えて居ました」

「あら、奇遇ね。さすがは大親友だわ」

「……ふふ、そうですね」

 ミランの口からでる、大親友という言葉をくすぐったく思いながら微笑む。

「ぜひとも、クライヴ様やアレクシス殿下よりも早くゴールしましょうね」

「はい!」

 せっかくなら、二人に勝ちたいもんね!

 歩きながら大きく頷くと、ミランは笑った。

「? どうしましたか?」

「いいえ、ただ――ブレンダさんがここにはたくさんいる、って思ったのよ」

「えっ?」

 私がたくさん? 何かの謎かけだろうか。

「ブレンダさん、ひまわりにそっくりだもの」

「ええ!?」

 髪色や瞳の色からすると、全く似ていないにように思う。どちらかというと、兄のほうがひまわりにそっくりな見た目をしている。そんなことを考えていると、ミランはくすくすと笑った。


「人の心を明るくする笑顔とか、眩しさがそっくりよ」

「ミラン様……!」

 そう思ってもらえてるんだ。嬉しくて、ミランに抱き着くと、抱きしめ返してくれた。

「ミラン様は、花にたとえるならバラですね。美しく、気高く、そして、繊細さも胸に秘めているから」

 ミランは恥ずかしそうな顔をして、さ、負けないように行きましょうと足早に歩いていった。

 慌てて、それについてきながら、夏の空気を吸い込んだ。


お読みくださり、ありがとうございます!

書籍が発売中です!!!!!

何卒よろしくお願いいたします!

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