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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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別荘

 夢を見ていた。

 とても暖かく、幸せな夢を。

 その夢が、幸福すぎて、目を覚ますのが惜しいほど、幸せな夢だった。

「さん……ブレンダさん」

 声が、聞こえる。私の大好きな人の声だ。

 でも、まだ、この温かな夢を見ていたい。


「……あら、起きないなら、楽しみにしていたクッキーはお預けね」

「――起きます!」

 体を起こし、大きなあくびをする。

「ふふ、おはよう、ブレンダさん」

「……おはようございます、ミラン様」

 馬車はいつの間にか止まっていた。つまり、クライヴの別荘についたようだ。

「ミラン様、起こして下さりありがとうございます」

「いいえ、さぁ、行きましょう」

 御者が馬車の扉を開けてくれた。

 ミランに続き、私も馬車から降りる。

「……わぁ」

 アルバート家の別荘は、本邸と言われても頷けるほど、大きかった。


「わくわくするわね」

「はい!」

 こんなに大きな別荘で過ごせるなんて、とても嬉しい。

 来客者用のベルを鳴らす前に、扉が開かれた。

「ようこそ、ミラン嬢、ブレンダ嬢」

 出てきたのは、クライヴだった。

 クライヴは、にこにこと私たちを――特にミランに微笑んでいた――見ると、中へ入れてくれた。

 玄関ホールでは、アレクシス殿下、ジルバルト、ルドフィルがいた。その他には、数人の使用人がいるみたいだ。

「やぁブレンダ、ミラン嬢。僕たちはこれからダウトをするんだけど、参加する?」


 ルドフィルの提案にミランと顔を見合わせて、頷いた。

「荷物を、置いてきてもいいですか?」

「ああ、まずは先に客室に案内しよう」

 そう言って軽やかに、私とミランから、荷物を取り上げると、クライヴは、客室へと案内してくれた。

 私たちに与えられたのは、二階の客室だった。私とミランの部屋は隣同士だ。


 男子たちの部屋は、全て一階らしい。

「アルバート様、お招き下さりありがとうございます」

 今日から、この邸での生活が始まるんだ。楽しみだな。

「こちらこそ来てくれてありがとう。安全に配慮して、夜は君たちの部屋の前に使用人をつけておく」

「クライヴ様、ありがとうございます」

 ミランの言葉にあわせて私も礼をする。


 細やかな気配りができるクライヴは、本当にできた人だなぁ。

「じゃあ、それぞれ準備が終わったら、一階の階段の右手側にある応接室に集まってくれ。そこで今後の予定をダウトをしながらみんなで相談して決めよう」

 私たちが頷いたのを確認して、クライヴは、去ろうとし、ふと振り返った。

「ミラン嬢」

 そして、ミランの方へ近づくと、ぽん、と手を頭の上に置いた。


「この前は、私の誕生日を祝ってくれてありがとう」

「い、いえ――」

 真っ赤になったミランは、どこからどう見ても恋する乙女だった。二人の世界を邪魔しないように、音をたてないように、客室の扉を開く。

「わ……っと」

 思わず歓声を上げそうになり、慌てて口を閉じる。静かにしないとね。

 お部屋は、シンプルだけれど、質のいい家具で整えられていた。

 私も華美なものよりは、こういったシンプルなものが好きなので、とても嬉しい。

 扉をまた音をたてないように、閉めて、荷物を置く。

 窓からは、別荘の近くにあるという森とその先にある湖が見える。


「とても、綺麗だわ」

 その景色に感動しつつ、もっと詳しく部屋を見て回る。

 クローゼットも大きいし、ベッドもふかふかでとても快適に過ごせそうだ。

 荷ほどきをするのは後にするとして、感動しつつ、応接室に行く。


「あれ、ブレンダはカトラール嬢と一緒じゃなかったんだね」

 私の顔を見て、不思議そうな顔をしたジルバルトは、すぐに納得したようで生暖かい瞳をした。

「……ああ。どーせ、いちゃいちゃしてるんでしょ? 今朝からクライヴは大はしゃぎだったから」

「大はしゃぎ……」

 クライヴが大はしゃぎしているところを想像しようとしたけれど、あまりうまくはいかなかった。


 どんな風にはしゃぐんだろう。ミランといちゃいちゃしてるのは、本当だけど。

「もう、ほんとすごかったんだよ」

「わぁ、それは見てみたかったです!」

 しばらく話に花を咲かせたあと、さすがに遅いから様子を見てくるよ、とジルバルトは二階に上がっていった。


 その後ろ姿をぼんやりと見つめていると、話しかけられた。

「……ブレンダ」

 静かな、その声に、急に心臓が脈打つのを感じる。

「……っ、ど、どうされましたか、アレクシス殿下」

 顔を見ると緊張しすぎてしまう気がして、あえて視線を外していたことに、気づかれていませんように。そう願いながら、アレクシス殿下に向き直る。


「楽しそうだったな」

「え……?」

 思わぬ言葉に、ぱちぱちと瞬きをする。……あ、もしかして、ジルバルトと話していたこと?

「そうですね……。普段冷静なアルバート様が、はしゃぐところを想像できなくて」

「……そうか」

 言葉と共に、つい、と逸らされた翡翠の瞳に胸が痛む。

 どうして? 私の返答が良くなかった?

「あ――」


「ブレンダさん!」

 伸ばしかけた手は、明るい声によって、遮られた。

「……ミラン様、準備はできましたか?」

「ええ。みなさまもお待たせしました。……あら、ブレンダさん、顔色が少し悪いわ。大丈夫?」

 心配そうな顔をしたミランに首を振る。

 二階から、ジルバルトとクライヴも降りてきたので、みんな席に座り、ダウトが始まった。


いつもお読みくださり、ありがとうございます!

本作の書籍が発売中です!!!!!!!!!!

何卒よろしくお願い申し上げます!

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[一言] アレクシスにダウト!(笑)
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