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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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122/150

得がたい幸運

 女子会――別名女子ぷらす弟さん会――は、大いに盛り上がった。四人でシルビアが持ってきてくれた茶菓子を食べながら、様々な話をした。シルビアは小さい子供の扱いがうまく、話題もマインも入りやすいものばかりだった。

 マインは、今ではすっかりシルビアに懐いている。

「ねぇ、シルビアさん」

「あら、どうしたの?」

「ぼくも占って!」

 シルビアは、もちろん、と頷いてマインの瞳を見つめた。

「そうね、あなたは……、最近いいことがあったのね」

「うん! 姉さまと仲直りしたよ」

「それから……あなたはとてもいい恋をしているのね。その経験は必ず、あなたの役に立つわ」


 そうなんだ、ありがとう! とシルビアにお礼を言ったマインは、きらきらした瞳で私を見つめた。

「あら。あらあらあら」

 その視線に気づいたシルビアが、楽しそうな声をだした。

「……そう。可愛いものね」

 生暖かい視線がざくざくと私に刺さる。

「ところで」

 その視線に耐えかねた私は、強引に話を変えた。

「みなさんは、何色がお好きですか?」

 ありふれた、そして今更過ぎる質問だけど、みんなそれに乗ってくれた。


「ぼく、ぼくはねー、緑が好き!」

「私は、赤よ」

「わたくしは、紫かしら」

「そうなんですね。私は……」

 意外と。盛り上がったその話は、好きになったきっかけなど、派生した話題で一時間も続いた。


「あら、もう、こんな時間ね」

 シルビアが、時計を見て席を立つ。

「ええー、もう帰っちゃうの?」

 シルビアは、残念そうな顔をして、微笑んだ。

「ごめんなさいね。あまり、遅くなると家族が心配するのよ」

「そっかー、それなら仕方ないね」


 だって、ぼくも姉さまを心配させたくないもん! そう続けて、あっさりとマインはひいた。

「ええ、理解が早くて助かるわ」

 たおやかに微笑んだシルビアを、みんなで見送る。

「シルビア様、とても楽しい時間をありがとうございました」

 ミランの言葉に、シルビアは笑った。

「こちらこそ、とても楽しかったわ」

 そう言って、馬車に乗り込もうとしたシルビアは、振り返った。


「……ブレンダさん」

「はい。必ず、二人で話をします」

 きっとこのことだろうな、とあたりをつけてそう言うと、シルビアは安心したように頷いた。

「ええ。絶対よ」

「はい」

 そうして馬車が去っていくのを、見届けて、みんなで邸に入った。


「なんか、不思議なひとだったね」

 マインの言葉に頷く。

「そうですね」

 シルビアが持つ特有の空気感は、神秘めいている。その空気を思い出していると、ミランが微笑んだ。

「さぁ、そろそろ夕食にしましょう」


 夕食後、お風呂に入り、ミランやマインとパジャマパーティーをした

そして、数日間、穏やかに時間は過ぎ――……。

「ええー、姉さまもブレンダも本当に行っちゃうの?」

 マインが寂しそうな顔で私の袖を引っ張った。

 そう、今日はクライヴの別荘に出立の日だ。

「ごめんなさい、マインくん」

「マイン、お父様とお義母様が帰ってから行くから、ひとりじゃないわ」


 マインは、私とミランのそれぞれの言葉に、むぅ、と唇を尖らせた。その仕草もとても可愛い。

「お手紙を書きますから」

「お土産も持って帰るわ」

「……わかったよ。去り際にしつこくしないのも『いい男』だものね」

 そう頷くとマインは、跪いた。

「マインくん?」

 どうしたんだろう。

 マインは、軽く咳払いをすると、じっと私を見つめた。

「ぼく、いい男に必ずなるからね! ブレンダが結婚したいってなるような、素敵な男に」


「……ふふ、期待していますね」

 うん! とマインは立ち上がると元気に頷く。その笑みに癒されていると、丁度、誰かが邸の中に入って来た。

「あ、お母様とお父様だー!」

 慌てて、背筋を伸ばす。

「おかえりなさい、お父様、お義母様。こちら、ブレンダさんよ」

 ミランに紹介してもらい、礼をした。


「お邪魔しております。ブレンダです」

「ミランが君と友人になった――と聞いた時は、大層驚いたが。その顔を見ると、良い友人関係が築けているようだね」

 カトラール侯爵はそう言って、微笑む。

「ええ、お父様。私たち大親友なの」

 ミランは満面の笑みで、私の腕を引き寄せた。

「……ふふ」

 それがくすぐったくて、思わず笑う。

 ……?


 視線が集中している気がして、首をかしげると、穏やかな瞳と目が合った。

「あなたのような方がミランさんの傍にいて下さるなら、安心だわ」

 カトラール侯爵夫人のその瞳は、確かに、娘のことを想う瞳だった。


「私も、ミラン様に何度も助けられています。たとえば――」

「ぶ、ブレンダさん!」

 照れたミランは、真っ赤になってとても可愛い。

 それでも、ミランの学園での様子を知ってもらいたくて、開こうとした口を、手でふさがれた。


「そんなことより、早く行きましょう、ブレンダさん!」

「あら、もう行ってしまうの?」

 残念そうな侯爵夫人に、はい、行ってきます! とミランは強く頷いて、そのまま玄関まで私を引きずった。

「では、失礼いたします」

 玄関でようやく解放された口でそう言って、礼をする。

「またいらしてね」

「ありがとうございます」


 一足先に馬車に乗り込んだミランの後に続いて、私も馬車に乗り込む。馬車が出発する間際、マインがかけてきた。

「姉さま、ブレンダ、大好きだよ! いってらっしゃい」

 私とミランは顔を見合わせると、大きな声で行ってきます、と手を振った。


 がたごとと揺れる馬車の中、ミランがふと、首をかしげた。

「それにしても……」

「? どうしたんですか?」

 ミランは、じっと私を見つめると、ふふ、と笑った。

「私がこの先、歩んでいくべきパートナーって、ブレンダさんのことだったのね」

「え?」


 一瞬何のことだか、わからず、目を瞬かせる。

 数秒経って、シルビアの占いのことだと気づいた。

「そ、それは、アルバート様では?」

 とても光栄だけど、ミランを支えているのは、間違いなくクライヴだ。

「クライヴ様も私をもちろん支えてくださっているわ。でも、マインと私の壁が無くなったのは、間違いなくブレンダさんのおかげよ」

 そう言って、ミランは私の手を握った。


「改めてありがとう、ブレンダさん。ずっとずっと先、年を重ねたときも、あなたが傍にいてくれたら嬉しいわ」

「ミラン様……!」

 好き! 感情のまま、ミランに抱き着いた。

「いくつになっても、私たちの友情は不滅です!」

「ええ、もちろんよ」

 そっと抱きしめ返しくれたミランを抱きしめる力を、更に強くした。

 こんな風に言える、友達が――大親友が出来るなんて、以前は思ってもみなかった。

 得難い幸運に感謝しつつ、抱きしめ続けていると、馬車の揺れで、だんだん眠くなってきた。

「ブレンダさん……?」

 ミランの声が遠くで聞こえる。その声に、応えたいのにとても、眠たい。

 私は、ゆっくりと眠りの世界に落ちていった。



いつもお読みくださりありがとうございます。

本作の書籍が発売中です!!!!!!!!

少しでも面白いと思っていだけたなら、応援していただけると、とても原動力になります!

何卒よろしくお願い申し上げます!!!

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[一言] ミランと言う親友も出来た! あとは呪い?を解いて真のパートナーを!
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