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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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パジャマパーティー

 お昼の時間になったので、昼食――マインは私の隣の席に座った――をとることにした。

宣言通り、ニンジンを大量の水で流し込みながら食べたマインは、きらきらとした瞳で私を見つめている。

「マインくん、すごいですね」


「うん、ぼく、すごい男になるの!」

 嬉しそうに微笑みながら、ニンジンの無くなった料理をぱくぱくと食べるその姿は微笑ましかった。

「……ところで、ブレンダさん」

 向かい側に座ったミランが、フォークをおき、私を見つめた。

「? はい」

 何だろう。ミランの表情からして、深刻な話ではなさそうだけれど……。


「今朝、クライヴ様からお手紙が届いたのだけれど、私たちもクライヴ様の別荘に遊びにこないかって」

 クライヴからのお誘いかぁ。

 それなら、ミランだけのほうがいいのではないだろうか。

「でも、婚約者のお二人の間にお邪魔するのは……」

「いえ、私たちだけではなくて、生徒会つながりで、アレクシス殿下やマーカス様、あとは、クライヴ様の親友のローリエ様もいらっしゃるみたいよ」


 ジルバルトは勝手な印象だけど、面倒くさいっていいそうなのに、意外だ。

 親友の誘いだからのったのかな。

 そんなことを考えつつ、どうしようかと悩む。


「夏季休暇中はしばらく、みなさん別荘で過ごされるみたいだから、いつでも来ていいって、書かれていたわ。近くに湖があって、様々な遊びができるそうよ」

「……そうなんですね!」

 せっかくの夏季休暇だし、湖遊びはとても魅力的だ。

 でも、ミランやマインだけと過ごす今の時間も気に入っている。それにまだ、この侯爵邸に来たばかりだし。

「私は、ブレンダさんが行かないなら、夏季休暇の最終週に少しだけ顔を出そうかと思ってるわ」

「わかりました。少し、考えてみますね」

「ええ」


 昼食後は、マインやミランと思いっきり遊んだ。刺繍をしたり、ボールをけったり、かけっこしたり。どれもとても楽しかった。

 思いっきり遊んでいるうちに、夕食の時間になり、三人で夕食をとった。

「パジャマパーティー、ぼくも参加したい!」


 夕食中のマインの言葉により、今夜のパジャマパーティーは三人ですることにした。

 お風呂に入って、パジャマに着替え、いざ、ミランの部屋へ。

「ブレンダ!」

 扉をあけてくれたのは、マインだった。

「こっちへどーぞ」

 マインに手を引かれながら、ミランの部屋の中に入る。

「ブレンダさん、ハーブティーをどうぞ」

 ソファに座ると。丁度いい温度のハーブティーをミランが差し出してくれた。


「ありがとうございます」

 お礼を言ってから、口をつけた。優しいまろやかな味で、ほっとする。

「なかなか、いいでしょう? 我が家秘伝の配合なのよ」

 得意げなミランに頷く。とても美味しかった。

「では、パーティーを始めましょうか」

三人でソファに座りながら、カードゲームをした。特に盛り上がったのが、オールドメイドだ。

 貴族時代に身に付けた。仮面のような微笑で、ミランを見つめる。


「ブレンダさんにその表情をされると、まったくわからないわね。……これにするわ」

 ミランが私の手札から、ジョーカーをひいた。

「くっ! ブレンダさんやるわね」

 今度は、マインがミランの手札からひく。

「姉さま、ぼくはこれにする…!?」

 さっきまできらきらした顔をしていたのに、マインは手札をみて青ざめた。

 ……とてもわかりやすいわね。

 私がマインのものから一枚ひくときも、マインは表情豊かなので、どれがジョーカーかわかってしまう。

 心の中で苦笑しながら、わざとジョーカーをひくべきか考えた。


 しかし、これは真剣勝負。勝者から順に、多い数のお菓子がもらえることになっている。

 だから、私は大人げないと思いながらも、ジョーカー以外をひいた。

 その後も一部白熱した勝負は続き、私が一位、二位がマイン、三位がミランとなった。ミランの悔しがりようからして、手を抜いたわけではなさそうだ。


 再戦を繰り返し、総合順位は、一位がミラン、二位が私、三位がマインになった。終盤のミランの追い上げがすさまじく、赤の瞳にはめらめらと炎が揺らめいていた。

 ……負けず嫌いなのね。でも、そんなところも素敵だ。

 そんなことを考えながら、マドレーヌを食べる。

「美味しいですね」

 しっとりしたマドレーヌは、とても美味しかった。この時間に食べるマドレーヌは、体にあまりよろしくない、とわかっているけれど。

 その背徳感が更に美味しく感じさせる。

「うん。ブレンダ、マドレーヌ、好き?」

「はい、好きですよ」

 そっか、と頷くと、マインは自分の分のマドレーヌを一つ差し出した。

「じゃあ。これ、あげる」

 マインは、三位で、一番マドレーヌの数が少ない。それなのに、私に一つ、分けてくれようとするなんて……。

「ありがとうございます。とても嬉しいです」


「うん! ぼくはいい男だからね!」

 お婿さんにするなら、今のうちだよ! としっかり自分を売り込むことも忘れないところも、すごい。

 ミランはといえば、満足そうにマドレーヌを頬張っていた。

 ……その後は、みんなでパズルをしたり、お話をしたりしているうちに、夜が更け、解散となった。

二人におやすみの挨拶をしてから、ベッドに入ったときに思い出した。


 そういえば、クライヴの別荘に行く話はどうしよう。

二人と遊ぶのが楽しすぎて、すっかり忘れていた。

でも、私たちがクライヴの別荘に遊びに行ったら、マインはどうなるのだろう。使用人はいるけれど、まだまだ幼いマインを残していくのは、躊躇われる。

確か、ミランのご両親が帰ってくるのは、来週だと言っていた。来週に行けば、この邸にひとりぼっちにはならないから、安心かな。


 じゃあ、あと一週間お邪魔させてもらうことにしよう。

 そう決めて、眠りについた。


いつもお読みくださりありがとうございます。

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何卒よろしくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[一言] や、ミランがとんどん好きになってくわ(笑)
[一言] マイン君かわいい〜 特ににんじんを涙目で我慢して食べてる所は本当にかわいいです 子供達にトマトを食べさせた時を思いだしてました 大人がやってもそこまで可愛く無いですが子供だとその動作とかがま…
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