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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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夏の気配

……それから防音室に移動した。

 私は楽器を持っていないので、ミランがフルートの合間に少しだけ習っているという、バイオリンを借りることにした、

 調弦や調律をして、それぞれで肩慣らしをする。

「マインくん、お上手ですね」

 マインのピアノは元気がよく、明るい気持ちになれた。マイン自身がピアノが大好きなことが分かるほど、楽しそうに弾いている。


「えへへ、そうでしょ!」

 得意げなその表情も微笑ましい。

「マイン、ブレンダさん、準備はいいかしら?」

 私たちが頷いたのを確認して、ミランが微笑んだ。

「では、合奏しましょう」

 最初に合奏する曲に選んだのは、「朝日のワルツ」という曲だ。とても軽やかで、その名の通り、朝にぴったりな曲になっている。

 合奏は、本当に幼い頃、兄としたのとバイオリンの先生としたくらいだったので、実はうまくできるか少し心配だった。

 でも、ミランとマインがわかりやすく合図を送ってくれるので、とてもやりやすく、楽しかった。


「――……」

 最後の小節を引き終わり、みんなで目をあわせる。

 とっても楽しかったのと、無事に最後まで弾けた興奮で、頬が熱くなる。

「とても楽しかったです!」

「ぼくも!」

「三人でするのは初めてだったけれど、なかなか楽しかったわ!」

 ――その後も、適度に休憩をはさみつつ、何曲も演奏し、とても楽しい時間を過ごした。


 合奏を終え、楽器を片付ける。

学園の音楽の授業以外で、久しぶりに演奏したなぁ。

そんなことを考えてながら、バイオリンを片付け終わると、マインに話しかけられた。

「ねぇ、ブレンダ」

「どうしました?」

 マインは、じっと私を見つめている。その瞳は、真剣そのものだった。

「ぼくね、姉さまが大好き」

「ええ、私もミラン様が大好きです」

 私の返答に満足したように、マインは頷いた。

「それでね、ぼくね、ブレンダのことも好きだよ」

「……あら」



 大嫌いと言われた翌日に、好きだと言ってもらえるとは思わなかった。

 でも、子供って、感情がころころ変わるものかもしれないなぁ。

 自分の子供時代を思い出しながら、微笑む。


「それは、ありがとうございます」

「うん。ブレンダ、優しいし、笑顔がお日様みたいだし、だから……」

 マインは、急に緊張したように指をくるくるしだした。

 どうしたんだろう?

 ミランを見ると、苦笑している。まるで、次の言葉が分かっているみたいだ。


「だから、だからね! 大きくなったら、ぼくのお嫁さんにしてあげてもいいよ!」

 大きな声で、言い切られた言葉に、瞬きする。ゆっくりと頭の中で言われた言葉を反芻して、理解した。


 ――まぁ、あなたは平民だものね。つまり、もう私のライバルでもないわ。だから、その、……。ゆっ、友人になって差し上げても、よろしくてよ!

 学園の入学式の前日に、ミランに言われたことを思い出した。


「……ふふ」

 表情からミランも思い出しているのだろう、それを、頭の中で思い浮かべながら、マインに視線を合わせる。

「マインくん」

「な、なに?」

 マインは顔を真っ赤にして、私を見ていた。


「素敵な提案、ありがとうございます。でも、私には好きな人がいるのです。だから――」

「だったら! だったら、そのひとよりも素敵な男になる! 嫌いなニンジンも食べるし、勉強もさぼらない。……それで、いつかブレンダを振り向かせるね」

「……マインくん」


 あまりの熱烈さに驚いていると、ミランが苦笑しながら、私たちの間に入った。

「あら、しっかり聞いたわよ。ニンジン、残さないのね」

「うん! えっとね、それからね、お手伝いもする!」

 じいやに何かお手伝いすることがないか、聞いてくる! と叫んで、マインは防音室を出て行った。


「……ブレンダさん、しっかりとあの子の気持ちに向き合おうとしてくれて、ありがとう」

「でも、最後まで言えませんでした」

 そうね、とミランは頷いて、それから微笑んだ。

「まぁ、未来は誰にもわからないもの。……十歳差で結婚した例もたくさんあるし。それに、あなたが私の義妹になるのも楽しそうね」

 冗談とも本気ともつかないことを言いながら、ミランも防音室を出て行く。

「あっ、待ってください!」

 慌てて、その背中を追いかけながら、夏の空気をいっぱいに吸い込んだ。


お読みくださりありがとうございます。

まだまだ本作の書籍が発売したばかりです!

何卒よろしくお願い申し上げます!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ブレンダ実にモテモテである。
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