似た者同士
――翌朝。
「ん、んん……?」
何か重いものがどすどすと、私の上で飛び跳ねている。
ミランの家は、大型犬でも飼っていたのだろうか?
そう疑問に思いながら、目を覚ます。
「あー、やっと起きた!」
嬉しそうに、私を見つめるぱっちりとした青い、瞳は――。
「弟君?」
若干まだ寝ぼけながらマインを見つめると、マインは不機嫌そうな顔をした。
「マイン!」
「ええと……マインくん?」
「うん。おはよう、ブレンダ!」
マインは昨日とは打って変わって、かなり上機嫌だ。昨日までこいつ呼ばわりだったのに、ちゃんと名前で呼んでもらえている。
そのことに、感動しつつ、疑問をぶつける。
「どうして、この部屋に?」
「ブレンダに謝らないといけないことあるから」
マインは、ベッドから降りると、まっすぐに私を見た。
「泥団子投げたりとか、こいつや大嫌いとかいったりして、ごめんなさい」
「……はい。では、仲直りですね」
私もベッドからおりて、マインに視線を合わせる。
「これからよろしくお願いします、マインくん」
「こちらこそよろしくね、ブレンダ」
屈託のない笑みは、とても可愛らしい。
その笑みに癒されつつ、尋ねる。
「ミラン様とも、仲直りできましたか?」
「うん。姉さまと仲直りできた!」
……良かった。プランYまで考えていたけど、必要なさそうね。
「ぼくは姉さまが大好きだし、姉さまもぼくが大好きだって」
「ええ。それは良かった」
私の言葉に大きく頷くと、マインは満足したのか部屋から出て行った。
……とりあえず、着替えよう。
服を着替え、ダイニングに行くと、もうミランもマインも席についていた。
「おはようございます」
「ええ、おはよう。ブレンダさん」
「ブレンダ、おはよー!」
昨夜用意されていた席は、ミランと離れていたのに、今朝はミランの隣に座っているマインを微笑ましく思いながら、席に座った。
侯爵邸自慢のシェフの朝食はとても美味しく、和やかに朝食の時間は過ぎた。
――そして、朝食が終わったあと、ミランは私の下へ来ると、手を握った。
「本当に、ありがとうブレンダさん。私、ずっとマインに嫌われると思ってたの」
「ぼくは、姉さまが大好きだよ!」
元気に挟まれた言葉に、ミランは大きく頷いた。
「ええ。私もマインが大好きよ。ブレンダさんのおかげで、お互いの誤解が解けたわ」
「いえ……、私はきっかけをつくっただけですから」
仲直りが出来たのは、二人の歩み寄りがあったからだ。
「ですが、良かったです。仲が良いに越したことはありませんから」
そう言って微笑むと、ミランもマインも微笑み返してくれた。
「それでね、今日の予定なんだけど……、ほら、いつか一緒に合奏がしたいって話してたじゃない?」
「はい」
ミランはフルートが得意で、私は、バイオリンを少しかじっている。
「マインも入れて、三人で合奏するのはどうかしら?」
「素敵ですね!」
マインはどんな楽器を弾くのだろうか。
マインなら、どんな楽器も似合いそうだけれど、イメージで言うと……。
「マインくんは、何が得意ですか?」
「ピアノ!」
イメージ通りだった。
自分の予想があっていたのが嬉しくて、小さく笑うと二人とも不思議そうな顔をした。姉弟なだけあって、色彩こそ違うもののその表情はそっくりだ。
「二人とも、お顔がそっくりですね」
私が指摘すると、二人は顔を見合わせて、それから笑った。
「姉弟ですもの」
「ぼくは姉さまの弟だもん」
――得意げなその表情もそっくりで、私はまた噴き出してしまったのだった。
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