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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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長い夜

 まだパジャマパーティーまで時間がある。お風呂から上がり、髪を乾かし、湯冷めしないように、ガウンを羽織った私は、マインの部屋の扉を叩いた。


「弟君」

「あっちいけ!」

 マインは出てきたものの、敵対心むき出しだった。私は、少しでもその心が和らぐように目線をあわせる。

「弟君は、ミラン様のことどう思っていますか?」

「ふん! 関係ないでしょ!」


 ばっさりと切り捨てられたけど、諦めないわ。

「では、聞き方を変えますね。ミラン様のことがお好きですか?」

「知らない!」

 この聞き方でも駄目か。……なるほど。

「では、ミラン様のことがお嫌いですか?」

「そんなわけ……! もう関係ないでしょ!」


 そう言って、怒ったように扉が閉められそうになる。慌てて扉が閉まる前に、少し早口で言った。

「そういえば、ミラン様とパジャマパーティーをするんですよ。気が向いたら来てくださいね」

「行くわけがないでしょ!」 

 そう言ったのを最後に完全に扉が閉じられる。

 うん、プランAは無理だったけど、次はプランBで行こう。


 パジャマパーティーの時間になった。

 お風呂から上がって少ししたら、パジャマを着て、ミランの部屋に集まり、軽食を食べながらお話をしよう……ということになっていた。

 ミランの部屋を訪ねる。

「待ってたわ、ブレンダさん。どうぞ」


 扉をノックすると、ミランが笑顔で出迎えてくれた。

 私は、扉を少しだけ開けたまま、ミランの部屋に入った。

 ――そして、パジャマパーティーが始まる。

 クッキーをつまみながら、ミランと恋の話に花を咲かせる。

「それでね、クライヴ様が、とても喜んでくれたの」

 クライヴは、ほんの数日前誕生日だったらしく、お祝いを二人でしたのだそうだ。

「それは良かったですね!」

「ええ、私も幸せな気持ちになったわ」


 ――クライヴの話をするときのミランは、とても可愛らしくて、幸せそうだ。

 そんなミランを微笑ましく思っていると、ところで、とミランがこちらを見た。

「ブレンダさんは、どうなの? 好きな方がいらっしゃるんでしょう?」

 興味津々という顔で、ずい、と顔をよせられる。

「ええと……」 

戸惑ったように、視線を泳がせ、扉に視線をやる。すると、青い瞳と目が合った。


 作戦成功だ。……そろそろ、話を切り出そうかな?

 いや、まだ早いかも。

「ほら、ブレンダさんの好きな方は言えないんでしょう? でも、どんなところが好きかとか、どういう特徴があるか、とか聞かせて下さらない?」

「そうですね」


 私は、好きなひとの好きなところを話した。

「綺麗な、赤い瞳や」

「ええ」

「選択の授業――声楽で聞いた歌声がとても綺麗で……」

「ええ」


「それから、豊かな黒髪も」

「……? ええ」

「それから、音楽で聴いた、フルートの音色も」


「……もしかして」

 ミランも気づいたようなので、舌をだして白状する。

「私は、ミラン様が大好きです!」


「……ブレンダさん!」

 ミランは感激したように、瞳をうるませたけれど、すぐに表情を変えた。

「もう! ずるいわ、話をそらしたでしょう」

「でも、ミラン様が好きなのは本当ですよ」

 仕方ないわね、とミランはため息をついて、綺麗な黒髪を触った。


「……ありがとう。あなたは以前もこの髪をほめてくれたわね」

「だって、本当に好きなんです――」

 そう言いながら、気づかれないよう扉を確認する。青い瞳と、相変わらず目が合った。

「でも、それは私だけじゃないんじゃないでしょうか」


「……そうね。クライヴ様も好きだって、言ってくださったわ」

 それも半分正解だ。でも……。


「弟君も、好きなんじゃないでしょうか」

「マインが? そんなはずはないと思うわ。あの子は、私のことが大嫌いだもの」

 ミランが悲しげにそういったけれど、もう少しだけ話を続けさせてもらう。

 わざと、わかりやすく悪だくみをしている顔をしながら、相槌をうつ。


「そうですね、弟君はミラン様のことが、大き――」

 ばん、と大きな音をたてて、扉が開いた。


「そんなわけない。ぼくは、姉さまのこと大好きだもん!」

 マインはそういうと、ミランに抱き着き、私をきっと睨んだ。

「姉さまに、嘘を吹き込もうとするな!」

「はい。私は、このへんで退散いたしますね」

 私は頷いて、席を立つ。


「待って、ブレンダさん。え? ええ?」

 ミランは、マインが自分を好きだったことに気づいていなかったようだ。

 戸惑っているミランも可愛いな、と思いながら、手を振る。

「ミラン様、パジャマパーティーはまた明日開催いたしましょう。今は、お二人の時間を過ごされてください」

 ――では、おやすみなさい。

 まだ戸惑っているミランに、そう続けて、扉を閉めた。

 夜は長い。わだかまりが完全に無くなるには、短いかもしれないけれど。

 誤解を解くには十分じゃないかな。

 そう思いながら、自室に帰った。



お読みくださりありがとうございます!


本作の書籍がまだまだ発売したばかりです!!


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― 新着の感想 ―
[一言] まんまと嵌められたミランちゃんとマイン君(笑)
[良い点] あらあらまあまあ
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