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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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112/150

君とデート

「わかったよ」

 兄が頷いてくれたのを確認して、ほっと息をつく。

「ところで、ブレンダ」

「どうしたの、ルドフィル?」

 私が首をかしげると、ルドフィルは微笑んだ。

「僕とデートしない? 呪いも無事にとけたことだし」

「ひゅうー、ルドフィルやるね」

 からかいの言葉を浮かべた兄を一睨みして、ルドフィルに向き直った。

私は、アレクシス殿下に恋をしている。でも、その気持ちと同じように、ルドフィルとも向き合おうと決めていた。

「もちろん」

大きく頷いて見せると、ルドフィルはほっとした顔をした。

「じゃあ、ブレンダ。行こうか」


 ルドフィルにエスコートされながら、街を歩く。

「……ブレンダ」

 名前を呼ばれて顔を上げると、ルドフィルが柔らかく笑った。

「悩み事がある顔だね。……公爵家に戻るかどうか以外のこともありそうだ」

「どうしてわかったの!?」

 私が思わず大きく目を見開くと、ルドフィルは得意げに言った。

「わかるよ。だって、僕は――」

 君の従兄だもの。そう続けると思ったが、その予想は、覆された。


「君に恋をしてるもの」

「ルド……!」

 ルドフィル、と名前を呼ぼうとして、声にならなかった。

「ふふ、ブレンダったら、照れてるね」

 可愛い、と微笑む姿は甘々だ。

 ――そうだった。すっかり忘れていた。

 夏季休暇に入って、ルドフィルと登校することがなかったから、忘れていたけど。

 最近のルドフィルは、『こう』だった。

「な、な、な……」

 久しぶりで耐性がすっかり無くなってしまった私に、ルドフィルは追い打ちをかける。

「ブレンダ、大好きだよ」

「!」


 頬が熱い。おそらく、私の頬は、りんごのように赤く染まっていることだろう。

「……参りました」

 素直に降参するとルドフィルは、じゃあ、今日はここまでねと笑った。

「ところで、ブレンダ」

 ルドフィルはすっかりいつもの調子だ。

 温度差についていけずに、風邪を引きそう……。


「……うん」

「悩み事のことだけど、あんまり考えすぎも良くないよ」

 確かに、そうかもしれない。

 いや、でも将来のことは、しっかり考えないと。

「ほーら、また眉間に皺が寄ってる」

 ルドフィルは手でぐりぐりと、私の眉間の皺を伸ばした。

「また?」

 さっきもこんな顔してたかな。

「うん。街に来るまでの間も、何度か眉間に皺が寄ってたよ」

 ……そうなんだ。気づかなかった。――というか。

「ごめんなさい。せっかくルドフィルとの時間なのに」

 深く反省しながら謝ると、ルドフィルは、首を振った。


「ううん。怒ってないよ。ただ――」

 ただ、なんだろう。

「ただ、ブレンダが疲れてないか心配になっただけだよ」

「……ルドフィル」

 ルドフィルの表情は本当に心配しているときのものだった。

「ブレンダにとって、今日はとても大きな一日だったでしょう?」

「……そうですね」

 兄がやってきて、公爵邸に帰ってこいっていわれて。兄に手紙が届いてなかったことも、兄が私に手紙を書いていてくれたことも初めて知った。


「だから、気分転換が必要かなって。もちろん、ブレンダとデートしたかったのは本心だけど」

「ありがとう」

 ルドフィルは私のことを考えてくれたんだ。

 その気遣いが、とても嬉しかった。

「あ、丁度ついたね」

 ルドフィルは歩みを止めると、行列を指さした。

「ここの氷菓が有名なんだ。だから、ブレンダと食べたくて」

「わぁ、確かに美味しそう」

 看板によると、その行列の先で売っているのはシャーベットのようだった。

 すれ違うお客さんみんな、幸せそうな顔をして、シャーベットを口に運んでいる。


「買ってくるから、ブレンダはあの木の陰で待っててくれる?」

「でも――」

 暑いのはルドフィルも一緒だし、ルドフィルだけに並ばせるのは申し訳ない。

「ううん、大丈夫だよ」

 ルドフィルのその顔は、絶対にゆずらないときの顔だった。

 なので、諦めてお礼を言う。

「……ありがとう、ルドフィル」

 大きく頷いて列に並んだルドフィルを見届けて、木陰に行く。木陰は思った以上に涼しかった。

 ぼんやりしながら、列を眺める。

 わりと、回転率は良いようで、すぐに次のお客さんの番になっていく。

「……そこのおねーさん」

 なるほど、味は、いちごや桃のような果物の他に、チョコレートもあるのね。


「おねーさん?」

 トッピングにもいろいろあるみたいだ。私が一番好きなのは――。

「おねーさんってば!」

「!?」

 急に手を掴まれ、意識がシャーベットから、周囲に向く。

 私の目の前には、大きな男性が立っていた。


「……あの?」

 この人は、私に何か用事だろうか。そうは見えなかったけど、この木の下は私有地だとか?

「やっとこっちむいたね、おねーさん」

「ええと……」

 にたにたと笑うその姿は、どこか不気味だ。

「良かったら、オレと――だっ!」

 私を掴んでいた手がぱっと離される。

「悪いね、その子は僕の連れなんだ」

「ルドフィル?」


 ルドフィルがその男性の手をひねり上げていた。

「……なんだ、お前! 優男のくせに力が……いっ!」

 男性は、ルドフィルを一睨みすると、舌打ちして、どこかへ去っていった。

「……ブレンダ、大丈夫? 怪我はない?」

「う、うん。私はどこも――ルドフィル?」

 ルドフィルは、とても落ち込んでいた。

「ごめんね、ブレンダを一人にして」

 もしかして、さっきの男性に絡まれたのが、自分のせいだと思ってる……?


「ううん。変な人に絡まれたのは、ぼんやりしてた私が悪かったの。……だから、助けてくれてありがとう」

「……ブレンダ」

 ルドフィルは表情を和らげ、手に持っていた袋を見せた。

「買ってきたから、近くのベンチで食べようか」

「うん!」

 ベンチに座ろうとすると、ルドフィルがハンカチを広げてくれた。


「ルドフィルは、本当に優しいね」

「誰にでも優しいわけじゃないよ。ブレンダだけ」

「! ルドフィル!」

 恥ずかしさのあまり、じとりとルドフィルを睨んだけど、ルドフィルには全く効果がなかった。

「ほら、食べよう。それとも、食べさせて欲しい?」

「! 自分で! 食べます!」

 そういって、差し出されたシャーベットを、受け得とる。

 シャーベットは、チョコレート味にナッツのトッピングがされてあった。

「わぁ、一番食べたかった組み合わせだわ。ありがとう、ルドフィル」

「どういたしまして」

 ルドフィルは桃味に、フルーツソースをトッピングしていた。それは、それで美味しそうだ。

 シャーベットを付属のスプーンで口に運ぶ。

「んー!」

チョコレートの甘みとナッツの香ばしさが合ってとっても美味しい。


「美味しそうだね」

「うん、冷たくて美味しい!」

「それは良かった」

 そう言いながら、ルドフィルも口に運ぶ。

「ん、たしかにこれは美味しいね」

「うん。とっても美味しい」

二人で美味しい、と言いながら、シャーベットを食べ進めた。

 ――その後は、花をモチーフにしたアクセサリーを扱っている露店に行ったり、街を散策したりして楽しい時間を過ごし、ルドフィルが門まで送ってくれた。

「ルドフィル、今日はありがとう。シャーベットもとっても美味しかったわ」

「ううん、こちらこそ。とても楽しい時間だったよ」

 ルドフィルにもう一度お礼を言って、手を振る。

「じゃあ、おやすみなさい」

「うん。おやすみ」



いつもお読みくださりありがとうございます。

本作の書籍が、9/20から発売しております!

何卒よろしくお願い申し上げます!!


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― 新着の感想 ―
[一言] ルドフィル優しいなぁ〜 いい男だわ〜 でも…選ばれるのは一人…
[一言] こう見るとお似合いの2人なんだがねえ
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