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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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天文塔2

「ブレンダ」

 なんでアレクシス殿下が、ここに。

 もしかして、私、アレクシス殿下を下敷きにしてる!?


 冷静に状況を分析すると、そのもしかして、だった。

「も、申し訳ございません!」

 慌てて上から退こうとすると、手をがしりとつかまれる。

「アレクシス殿下……?」

「――」

 新緑の瞳に見つめられて、息が、できない。

 どくどくと心臓が鳴って、思い知らされる。――私が、この人に恋をしているのだと。

 アレクシス殿下は、私を上にのせたまま、ゆっくりと上体を起こし、そして――……。


 私の手を掴んでいない、もう片方の手で、私の頬に触れた。そして、まるで慈しむように、頬を撫でられる。

「……っ!」

 なんで、どうして、そんな。

 疑問の言葉は声にならず、代わりに体が沸騰したように熱くなる。


 ――このままじゃ、だめだ。

 このままだと、全てが見透かされてしまう。私が、アレクシス殿下に恋をしていることも。今、こんなにもときめいていることも。

 アレクシス殿下の顔がゆっくりと近づく。その瞳に、全てを知られることを恐れた私は、ぎゅっと目を閉じた。


「あれー、見学生ちゃん、いないなー?」

 ケイリーさんだ。

「!」

 一気に、現実に引き戻される。

 ――私は、ただのブレンダで、この人は第二王子。そして、私が今ここにいるのは、将来の就職先探しのため。


 私が、今度こそ、上から離れようとすると、アレクシス殿下も手を離してくれた。


「お怪我はありませんか?」

「ああ、ブレンダこそ大丈夫か?」

「はい。かばってくださり、ありがとうございます」

 立ち上がって、お礼を言う。


「いや、私が急に声をかけたのが悪かったから。こちらこそ、驚かせてすまない」

 アレクシス殿下がそう言ったのと、ケイリーさんの足音がぱたぱたと聞こえたのは同時だった。


「探したよー。見学生ちゃん」 

「すみません、どこで待っていたらいいのかわからなくて……」

「いやいや、こちらこそごめんね。暗くてこわかったでしょ? ここはさ、光に弱い資料が多かったから、明かりを点けずにいてくれて助かったよ」


 そう言いながら、ケイリーさんは私の隣にいるアレクシス殿下を見て、首をかしげた。


「あら、見学生くんじゃない。もしかして、案内人のジムとはぐれた?」

「はい」

「もージムってば、仕方ないなぁ」

 ケイリーさんは盛大にため息をついた。

「二人とも、ついてきて」


 ――その後は、ケイリーさんが入れてくれた紅茶を飲みながら、給与や休日などの待遇について話した。ケイリーさんはかなり赤裸々に語ってくれて、こちらはイメージしやすかったけど、大丈夫かな。少し、心配だ。


 一通り話し終えた後は、そのまま解散となったので、塔長に臨時入塔証を返却し、学生証と成績証明書を返してもらった。


「本日は、貴重なお時間をいただきありがとうございました」

「いいえ、少しでもこの天文塔のことを知ってくれたなら嬉しいよ」

「では、失礼します」

「ブレンダ」

 お辞儀をして、乗合馬車に乗ろうとすると――引き留められた。

「アレクシス殿下?」

「……その。せっかくだから、どこか店で話さないか?」

 緊張したように、頬をかいたアレクシス殿下に微笑んだ。

「そうですね」

いつもお読みくださりありがとうございます。

本作の書籍化が決定いたしました!


発売日は、9月20日です!

レーベルはTOブックス様です!


また本作の先行配信が本日より始まっております。


何卒よろしくお願い申し上げます。

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