期末テスト
それからしばらく穏やかに時間は過ぎ――、ついに期末テスト当日になった。
鏡の前で、タイを結びながら、ため息をつく。
……緊張するなぁ。
テストは、自分の知識の定着度などをはかるためのものだ。
だけどそれだけではなく、その結果によって、私が特待生としてこの学園に所属できるか、将来希望する就職先についての推薦状がもらえるかが決まる。……でも。
「できることをするだけ、よね」
まだ、少し緊張しているけれど、そう思うと気が楽になる。
それに私は数多くの時間を勉強に費やしてきた。もちろん時間だけが、全てじゃないけど。
それでも、積み重ねてきた日々は、自信に繋がる。
「よしっ!」
タイを結び終わり、頬を叩いて、気合を入れた。
……頑張ろう。
テスト当日なので、勉強に集中するため、ルドフィルと別々に登校し、教室に向かう。
図書室は、人で溢れかえっているだろうし、それに、また教室へと移動する時間が惜しかった。
教室に入るとテスト前特有の、張りつめた空気がする。
すぅ、はぁー。
深呼吸をして、その空気の中に自分を溶け込ませ、席に座った。
……大丈夫、大丈夫。
自分にそう胸の中で言い聞かせながら、機械的に問題集の問を解いているうちに、朝のホームルームが始まる時間になった。
そして、ホームルームが終わると、テストが始まった。
見直しの三回目に突入したところで、最後の科目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
――テストが、終わったのね。
後ろから前にテスト用紙を回していき、先生が全部の用紙の枚数を確認した後、解散が告げられた。
みんな大はしゃぎで、教室を出ていく。
期末テストが終われば、もう、夏季休暇だからだ。
ちなみに、テスト結果の貼り出しは今回のテストでは行われず、かわりに個人の成績表と一緒に、自宅に届けられる。……私の場合は、女子寮だ。
そんなことをつらつらと考えながら、大きく息を吐く。
――テストの余韻が、まだ、体に残っていた。
少し震えている手は、終わったという安堵で、緊張が解けたからだと思う。
空欄は作ってないし、見直しは最低でも二回はした。
だから……大丈夫。
もう一度深く、呼吸をして立ち上がる。教室にまだ残っていたのは、私だけだった。
「……ブレンダさん」
筆記用具を片付けて、鞄にしまっていると、声をかけられた。――ミランだ。
ミランは私を見ると、ほっとした顔をした。
「良かった、まだ残っていたのね」
「はい」
ミランは夏季休暇に実家に帰ると言っていた。……といっても、私のように家がない特殊な場合を除いて、実家に帰る生徒がほとんどだ。
「ほら、前にしたお話を覚えているかしら?」
「……もしかして、ミラン様のご実家に招待してくださるという件ですか?」
ミランに夏季休暇中に実家に来ないかと誘われていたのだ。でも、まだ具体的な話はできていなかった。
「そう、その件よ。私としては、夏季休暇中ずっと一緒に過ごせたら、素敵だなって思うのだけれど……ブレンダさんにも予定があるでしょう?」
……確かにずっとは魅力的な誘いだけど、遊びに行くなら、夏季休暇に出された課題を終わらせてからがいいな。
そう伝えると、ミランは微笑んだ。
「わかったわ。そのほうがめいっぱい遊べるものね。なら、また課題や予定が落ち着いたら、手紙を下さるかしら?」
「はい。楽しみにしてますね」
「私もよ」
ミランと過ごす夏季休暇。きっと、楽しいものになるだろう。
でも、学園入学前は、そんな風に誰かと過ごせるなんて考えもしなかった。
ずっと、勉強に明け暮れるだけの三年間になると思っていた。それもそれで、いい経験にはなっただろうけど……。
でも、こうして人と関わる経験も、とても得難いものだと思う。
「では、ミラン様。良い夏季休暇を」
「ええ、ブレンダさんもね」
ミランと笑顔でお別れした。




