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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
三章

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期末テスト

 それからしばらく穏やかに時間は過ぎ――、ついに期末テスト当日になった。

 鏡の前で、タイを結びながら、ため息をつく。

 ……緊張するなぁ。

 テストは、自分の知識の定着度などをはかるためのものだ。

 だけどそれだけではなく、その結果によって、私が特待生としてこの学園に所属できるか、将来希望する就職先についての推薦状がもらえるかが決まる。……でも。

「できることをするだけ、よね」

 まだ、少し緊張しているけれど、そう思うと気が楽になる。

 それに私は数多くの時間を勉強に費やしてきた。もちろん時間だけが、全てじゃないけど。

 それでも、積み重ねてきた日々は、自信に繋がる。

「よしっ!」

 タイを結び終わり、頬を叩いて、気合を入れた。

 ……頑張ろう。


 テスト当日なので、勉強に集中するため、ルドフィルと別々に登校し、教室に向かう。

 図書室は、人で溢れかえっているだろうし、それに、また教室へと移動する時間が惜しかった。

 教室に入るとテスト前特有の、張りつめた空気がする。

 すぅ、はぁー。

 深呼吸をして、その空気の中に自分を溶け込ませ、席に座った。


 ……大丈夫、大丈夫。

 自分にそう胸の中で言い聞かせながら、機械的に問題集の問を解いているうちに、朝のホームルームが始まる時間になった。

 そして、ホームルームが終わると、テストが始まった。


 見直しの三回目に突入したところで、最後の科目の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 ――テストが、終わったのね。

 後ろから前にテスト用紙を回していき、先生が全部の用紙の枚数を確認した後、解散が告げられた。

 みんな大はしゃぎで、教室を出ていく。

 期末テストが終われば、もう、夏季休暇だからだ。

 ちなみに、テスト結果の貼り出しは今回のテストでは行われず、かわりに個人の成績表と一緒に、自宅に届けられる。……私の場合は、女子寮だ。


 そんなことをつらつらと考えながら、大きく息を吐く。

 ――テストの余韻が、まだ、体に残っていた。

 少し震えている手は、終わったという安堵で、緊張が解けたからだと思う。

 空欄は作ってないし、見直しは最低でも二回はした。


 だから……大丈夫。

 もう一度深く、呼吸をして立ち上がる。教室にまだ残っていたのは、私だけだった。

「……ブレンダさん」


 筆記用具を片付けて、鞄にしまっていると、声をかけられた。――ミランだ。

 ミランは私を見ると、ほっとした顔をした。

「良かった、まだ残っていたのね」

「はい」

 ミランは夏季休暇に実家に帰ると言っていた。……といっても、私のように家がない特殊な場合を除いて、実家に帰る生徒がほとんどだ。


「ほら、前にしたお話を覚えているかしら?」

「……もしかして、ミラン様のご実家に招待してくださるという件ですか?」

 ミランに夏季休暇中に実家に来ないかと誘われていたのだ。でも、まだ具体的な話はできていなかった。


「そう、その件よ。私としては、夏季休暇中ずっと一緒に過ごせたら、素敵だなって思うのだけれど……ブレンダさんにも予定があるでしょう?」

 ……確かにずっとは魅力的な誘いだけど、遊びに行くなら、夏季休暇に出された課題を終わらせてからがいいな。

 そう伝えると、ミランは微笑んだ。


「わかったわ。そのほうがめいっぱい遊べるものね。なら、また課題や予定が落ち着いたら、手紙を下さるかしら?」

「はい。楽しみにしてますね」

「私もよ」

 ミランと過ごす夏季休暇。きっと、楽しいものになるだろう。

 でも、学園入学前は、そんな風に誰かと過ごせるなんて考えもしなかった。

 ずっと、勉強に明け暮れるだけの三年間になると思っていた。それもそれで、いい経験にはなっただろうけど……。

 でも、こうして人と関わる経験も、とても得難いものだと思う。

「では、ミラン様。良い夏季休暇を」

「ええ、ブレンダさんもね」

 ミランと笑顔でお別れした。


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