自信
遅くなってしまい、申し訳ありません!
学園に着いたので、ルドフィルと別れ、図書室へ。
図書室では、今日もジルバルトがいつもの席に座っていた。
「おはようございます」
小声で挨拶をして、私の定位置――ジルバルトの隣の席だ――に座る。
「おはよ」
ジルバルトは、こちらを見て微笑んで挨拶を返すと、また視線を問題集に戻した。
……そういえば、学園で成績が優秀な人は、三年生の今回の期末テストが終わった後くらいに、数々の就職先の推薦状を貰えるのだという。
その推薦状を貰えれば――もちろんその後も好成績を維持するという条件付きで――、確実に就職できるらしい。
そして、なんと、その推薦状の効力は、国内最高峰の研究機関たる天文塔も例外なく働く。
三年間ずっと好成績を維持してきたジルバルトは、もちろん、天文塔に手が届くだろう。
……私も、負けないように頑張らなくっちゃね。
そう気合を入れなおして、問題集を開く。
問題集に、間違った問題は星形のマークを入れているのだが、期末テスト範囲の問題は、中間テストの範囲と比べてそのマークが多い。
それだけ、内容も中間テストと比べて複雑になっているということ。
……それでも、私は、今回の期末テストでも上位に入らないといけない。
――星がある部分を中心に解いているうちに、図書室での時間は過ぎていった。
「ブレンダ」
予鈴がなる少し前に、鞄に勉強道具をつめていると、小声で話しかけられた。
「ジルバルト様?」
でも、ジルバルトと視線が合わない。
何を見てるのかな。
その視線の先を追いかけると、まだ開きっぱなしの問題集があった。
「こっ、これは……!」
慌てて、問題集を閉じる。
「勝手に見てごめん」
「いえ……でも、星ばかりでお恥ずかしいです」
「ブレンダは、間違えた部分に星をつけてるんだったよね?」
「……はい」
よりにもよって、一番星が多いページを開いていたので、呆れられたかもしれない。
「恥ずかしがるようなことじゃないよ。ブレンダが努力している証だし、一年生のこの時期から内容が複雑になるから」
「ありがとうございます」
うう、慰められてる。
「僕も、苦手だったんだよね、その範囲。でも、その部分は、後々使うからわりと重要。だから――」
もっと、勉強した方がいいっていうことよね。
「よければ、今日の放課後、ボクが教えようか?」
「え?」
予想外の言葉に驚く。
ジルバルトの教え方は丁寧でわかりやすい。
教えてもらえるのは、とても嬉しいけど……。
「でも、ジルバルト様も重要なテストを控えていますし……」
何といってもこの試験が終われば、推薦状を貰えるのだ。特に、ジルバルトは爵位を継がないから、就職先が決まる推薦状は重要なはず。
……けれど、ジルバルトは笑った。
「ボクを誰だと思ってるの」
「!」
自信満々な言葉だけど、ジルバルトが言うと様になる。
その自信は努力と結果に裏打ちされたものだと知っているから。
「……そうですね。お願いしてもいいですか?」
私が頼むと、ジルバルトはもちろん、と頷いた。
そこで、丁度予鈴が鳴ったので、急いで片付けて、解散する。
――放課後、楽しみだな。
午前と午後の授業は、放課後のことを考えながら受けているうちに、瞬く間に終わった。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
この小説の書籍が、9月20日に発売される予定です。
何卒、よろしくお願いします。




