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火花飛び散り、残りはなのが残るのか?

作者: トム フーバー

拙著{社会派ショートショート}に興味を持って頂きありがとうございます。

興味を持って頂いてだけでも嬉しいのですが、

僅かでも読んだ方~全て読んで頂いた方までに御願いがあります。

僅かでも読んで頂いた方は、『つまらないから止めた』と思いますが、『なぜつまらなかったのか』を御手数ですが感想を書いて頂きたいのです。また、全て読んで頂いた方は、『最後まで読まれた理由』、そして、『どのような読後感を持ったのかを知らせて頂ければ幸いです』


警備会社の内幕を暴露しますが、脚色もあります。現実の結末は汚い。

では、“火花飛び散り、残りは何が残るのか?”へどうぞお進みください。




「馬鹿野郎、何やってんだ」と怒声が響き、警備室にドカドカと飛び込んでくると、出入者管理ファイルとネームダグをひっつかみ警備室の向かいにある。持出し品確認棚に出入者管理ファイルとネームダグを並べた。そして、

「すみません、内の莫迦が気がつがず。時間をとらせました」

私も怒りはこみ上げたが[警備室の配置の者は、警備装置監視盤から目を離さない為、外には出られない規則なのだ。そう教えたのも“馬鹿野郎”男だ]、だが、長蛇の列となった工事業者を入館させることが先だと思い直し淡々と作業を進めた。


 作業が一段落すると、

「あんた、本当の莫迦だな。周りが見えてない、注意は散漫、この間だって、サーバー室の結露見逃していたろう。本当に内には莫迦は必要ないから」

私は「ああ、そうですか」と言い、上着を脱ぎ、ネクタイを静に外し、ハンガーにかけ、ブリーフケースに手を掛けた。

「何だ、作業放棄か?」と怒鳴った。

「いえ、『莫迦は必要ない』と仰いましたよね。ですから、本日は退勤させて頂きます」と静かに言う、相手は僅かにしまったという顔をする。

「何言ってんだよ。あれだけの入館者管理と巡回を1人で遣れと言うわけ」

「それだけの作業が出来る自信があるからこそ、『莫迦は必要ない』と仰ったんですよね。どうぞ御一人で遣って下さい」と冷たく言った。

そこで、目から火花が散る事、時間にして2~3分だろうが時間にしては長かったように思う。

捨て台詞に「“あんた”を止めて姓で“さん”づけで呼ぶ事。教育訓練部長にキャリアに関わらず差別をしないよう教育する念書を書き提出する事。最後に、支社で管理職全員の前で“私への無礼を土下座して詫びる事”」

と言うと、私はブリーフケースを持ち、警備室を出た、もう戻るつもりはなかった。どうせ、あの野郎の事だから、自分の都合のいい報告を上にあげて、私を解雇させると踏んだからだ。


横須賀線で西大井につく頃になっていた。

見慣れない番号からの電話が掛かってきた。

「あの、谷君。私、監視センター長の岩谷と言います。悪いけど、今どこ? 次の駅で降りて欲しいんだけど」

「分りました。御話は御伺いします」といい、私は西大井駅で降りた。ホームから人が改札へと吸い込まれると人はいなくなる。

「反田[そった]と何があったの?」

「その前に、揚げ足を取られないように、反田さんがなんと報告したか聞きたいです。反田は揚げ足取りやでっち上げ、人を嵌める名人なので、これは事実です。日記に書いて記録してありますから報告書を上げましょうか?」と冷たく、ゆっくり言った。

「そうか、戻る気はない」と声のトーンが落ちた。

「反田に言いつけた。3つの条件が全て飲めるまで現場復帰はしません。どうせ、岩谷さんも反田のいう事を鵜呑みにしているし、一分の疑いも持ってないんでしょう」

「いや、そんなことは無い」

「嘘はいけませんよ。嘘は」

「嘘はついていない」

「本当に週末で現場が回らないんだ」

「一人で出来るから『莫迦は必要ない』と言ったんでしょ?」

ここで岩谷が電話口を胸で抑えているのか、声のような音が曇り伝わってくる。

私は、ここまで、岩谷との会話も冷静と言えば恰好がいいが、極めて、冷たく突き放した言い方をした。こういう、はなし方もできるのだと自分でも驚いた。そして、この調子だ。この調子で話をたたんでやると思った。

岩谷が「目黒隊長は埼玉の方に住んでて来るので一時間強かかるし、直ぐに捕まっても、準備を含め2時間くらい掛かる。瀬戸君は3連続夜勤で帰ったばかりで寝ていると思うんだよ。私も監視センター長の仕事があって、これ以上空けられない。ここはさ、御互い大人になって」

「どうしろと言うんですか? まさか、『莫迦は必要ない』と言った人の元に素直に戻って仕事をしろと言うんですか?」

「『莫迦は必要ない』と言った事は撤回させる」

「反田の入れ知恵ではないですか? 戻ったら、反田だけがいて、嫌味と悪口のオンパーレードって言うのは嫌ですよ」

「分った。『莫迦は必要ない』と言った事は撤回させるまで私がここにいるし、証人になる」

「私が出した条件は3つです。その3つはどうなるんですか?」

「その3つのうち、““あんた”を止めて姓で“さん”づけで呼ぶ事”は谷君が着いたら即時実行させる。あとの2つは私の名前入れで念書を残し必ず実行させる」

「念書だけじゃだめですよ。嘘かもしれないのだから、もし1つでもできなければ30万の慰謝料を払い、反田を現場から外すなら、戻ってもいいです。それと、私が戻り次第、即時書く事」

「それでいい」、岩谷はこれしかないかとポツリとつぶやいた。


私が戻ったのが11時を過ぎた頃だった。

“本当に戻ってきた”と岩谷の顔に思わず笑みがこぼれる。

岩谷はあらかじめ作っておいた念書を4枚作って待っていた。第一条““あんた”を止めて姓で“さん”づけで呼ぶ事”、第二条教育訓練部長にキャリアに関わらず差別をしないよう教育する事、第三条反田は支社で管理職全員の前で“私への無礼を土下座して詫びる事”、第四条に約束が期限内に不履行の場合は一つの約束に付き30万円を谷に支払う。

念書は四通あった。一通は社長宛、社長宛にするのは、岩谷の本気さを示すためのものだ。二通目は教育訓練部長宛、三通目が専務宛て、四通目が私と反田宛だった。日付や期限、そして、慰謝料の納付期限も記載されている。私は署名捺印した後、スマートフォンで写真を撮った。

「今度の明休みの時に法テラスで確認してもらうし、もし、誤魔化しがあったらその場で訴訟を起こす」と言い、岩谷を睨んだ、岩谷は誠実を尽くしたという自負があるのか、動ずることはなかった。その頃になり、反田が巡回から戻ってきた。私と目を合わせることはなく、黙って、署名捺印を済ませた。その後、念書のコピーを岩谷は一部づつ私と反田に渡した。

「この時間は、俺が警備室だから」と力なく言う。

「見れば解ります」私はネクタイを締め、上着を羽織って警備室を出ようとすると、岩谷が

「これ以上は無しで頼むよ。今日だけでなく、明日以降も」

私も反田も無言。

「本当、大丈夫なのか?」と疲れたが混じったため息をして、監視センターへと戻って行ったが、その足取りは重く見えた。それは、以前にも、反田がユーザーの前で後輩の頭を拳骨で何度か殴り、土下座させ、謝る事で全ての責任を後輩に押し付けようとしたものだったが、後輩は翌日には退職届を持ってきて提出、その時点でツイッターに書かれてしまい、会社名、反田及び反田の行動を黙認していた責任者や管理職の名前が公表され、当然、ツイッターは拡散炎上し、嗅ぎ付けた弁護士が付き、刑事訴訟と民事訴訟でもめる事になった。確かに、反田は警備においては天才かもしれないが、それ以外は短所ばかりだ。


数日の後、

社長は「厄災の眼は小さなうちに断たなくては」と言い反田は姿を見なくなった。

そして、私は新設された“社内コンプライアンス”の主任となった。

“清濁併せ飲む”のが組織だが、人が残り、技能が蓄積され、教育に還元されることで、人が働きやすくなり、働きやすい環境がいい人材と御金を呼び込む時代になったのは書籍で読んだ通りだったし、今度は私が実践する番だと思う。


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