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死にたがり。  作者: 無花果りんご
6/7

隔離と謝絶

お腹がすきました。

お昼の時間です。

1週間から10日と聞かされていたが

実際のところ翌日には病床が空いた。

病院からの連絡を受け

必要なものを買いに行く、と言われた。

近所のショッピングセンターに行き

必要なものを探す。



余談だが

私は幼い頃

欲しいものを買ってもらった試しがほとんど無い。

クリスマスプレゼントでさえ

サンタさんにお願いしたものとは違うものが

毎年枕元に置かれていた。

小学校の頃

簡易鉛筆削りが流行した。

周りはみんな買って貰っていたが

私だけ買って貰えなかった。

家が貧しかった訳では無い。

子供にとっての必要不必要は関係無いのだ。

全て母親が決めたものを持たされていた。



「好きなもの選んでいいよ」



びっくりした。

聞き間違いだと思った。

目の前にいる母親が

私に好きな物を買えと言った。

天地がひっくり返るような衝撃で

暫く言葉も出ず棚を見つめていた。


今でも覚えてる。

雑貨屋でアヒルのシャンプーボトルと

カエルのコンディショナーボトルを買って貰った。



買い物も終わり

荷造りをした。

どれくらいの入院になるかは

全くわからない。

ただ、今まで共同生活をしていただけの

この空間からは逃げられる。

それだけが私にとっての希望だった。



入院した病院はとても綺麗で個室だった。

部屋の中にはテレビも冷蔵庫もトイレもある。

携帯電話やひも状の物、刃物類は全てナースステーションに預けられる。

服装などは自由。

フロア内も自由に歩き回れる。

同い年くらいの女の子が何人かいて

喫煙所で身の上話などをしながら毎日を過ごす。

私は外出許可が出ていないため外には出られない。


閉鎖された空間が凄く心地よかった。

肯定されることもなければ否定されることも無く

罵倒されることも無く怒鳴られることも無い。


こんな世界は生まれて初めてだった。

静かな時間が流れる。


ただ、この頃はもう

死にたいという感情しか私には無かった。

ただただ静かに死にたいという感情に支配されていった。



鬱、不安障害


もうひとつ

症状が出始めた。



乖離性人格障害。

朝目が覚めると、何で傷つけたかもわからないのだけれど

血まみれの自分がいた。

何で傷つけたの全くわからない。

看護師たちによる大捜索も行われたが

凶器となるものは見つからなかった。


記憶のない時間が増えていった。


空白の時間も私はいつもと変わらず生活をしているらしい。

ただ、いつもと様子が違う。

病名がまた増えたのだった。

生姜焼き定食美味しかったです。

今日は肌寒い。

味噌汁が美味しい。

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