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オリジン01

 それは、ある晴れた日の事だ。

 オレは、独りで山にハイキングに来ていた。家からはバスで2時間程度の位置にある、高原地帯の山の一つで、高さはそれなり。地味な山であり、人影はまずない。

 元々、オレは体を鍛えるのが好きだった事もあって、調子に乗って誰もいない山道を駆け昇って行った。

 そうして、誰もいない展望台から景色を堪能していると、突然辺りが真っ暗になった。

 最初、何が起こったかわからなかったのだが――いや、それも正確じゃない。

 何が起こったかは、全てが終わってから分かったんだ。

 気がつくと、上下の感覚が無い虹色の空間で、巨人が目の前に浮かんでいた。影絵のように茫漠としていて、その姿ははっきりとしない。

 ただ、その巨大かつ畏敬すら覚えさせるシルエットは、人間のものではない事は確かだった。

「だ……誰だ?」

「私の名はギガントマン。……君たちの星の言葉で言うならだが」

 広さもわからない、うねる空間内を巨人の声がエコーを繰り返す。

 声は抑揚に乏しい、超然とした響きを持っていた。

「ギガントマン……?」

「私は、この銀河の秩序を守る銀河警備隊の隊員だ。凶悪な宇宙怪獣ヱゐモセズを追って来た」

「宇宙……怪獣?」

「そうだ。極めて強力かつ有害な怪獣であり、太陽系の文化レベルにおいては、これに対応できないとして私が派遣された」

「そんなに危ないのに来たのはあんただけなのか?」

「宇宙は広い。同ランクの危機も天文学的な数が起こっているのだ」

 言われてみればうなずける話だった。

 何億何兆と星があれば、それだけ問題もあるだろう。

「それで、その警備隊員がオレに何の用なんだ?」

「すまない」

「え?」

 巨人が頭を下げる。

「私とヱゐモセズは、宇宙空間で戦っていたが、地球の引力圏までもつれあい、落下してしまった」

「落下……」

 何しろ、目の前にいる巨人は、五〇メートル近くあるように見える。

 そんなのが落ちてきたら――背筋に冷たいものが走った。

「結論から言おう。キミは死んだ。真上から、私と宇宙怪獣が落ちてきて、つぶされたのだ」

 冷たいものどころじゃなかった。

「え?」

 何を言ってるかわからなかった。

 だが、よくよく考えてみれば、意識はあるのに、体の感覚は全くない。

 まるで、夢を見ているようだ。

「なるべく生命体の少ない場所へそらそうとしたのだが……」

 ……結果、人気の無い山に落ちたわけか。

 オレがいる……。

 真っ暗になったのは、それが巨人と怪獣の影だったのだ。

「……本当にオレは死んだのか?」

「生命活動は完全に停止している」

「そんな……」

 オレはまだ二〇にもなってない。

 大学に入ったばかりで、まだ友達も出来てない。

 やりたいことは、たくさんあった。

 それが全部、消えた。

「はは……」

「済まない」

「……」

 こいつだってわざとやったわけじゃない。

 だが、やりきれない気持ちは消えなかった。

「だが、一つだけ助かる道がある」

「……なに?」

「私と融合するのだ」

「融……合?」

「私の命をキミと共有するのだ」

「それで助かる……」

「しかし、制約も存在する」

「制約?」

「私の使命をキミが受け継がなくてはならない。つまり、私の力を使い、宇宙怪獣の退治をしなくてはならないのだ」

「おい、ちょっと待ってくれ……オレは巻き込まれただけなんだぞ」

「これが銀河警備隊の規定なのだ。銀河警備隊隊規第25条、他星系においてその地の生命を殺傷した際、意思疎通が図れる場合のみ……」

 うんたらかんたら理由を話すギガントマン。

 言っている事のほとんどはよくわからなかったが、生き返るためには怪獣と戦う必要があるってことはわかった。

 このまま死ぬか、生き返って戦うか……。

 オレは、今まで生きてきてまだ何も達成してない。

 だから――

「……わかった。ホントだったら死んでたんだ。その条件飲むぜ。生き返れるならなんでもやってやる!」

「では、これから言う事を必ず守ってもらう」

「お、おい。後出しかよ……まぁ、わかったよ」

「まず1つ。キミは私の姿に変身し、戦うことができるようになる。また、変身せずとも身体能力が大幅に向上するだろう。だが、決して正体を他者に明かさぬ事」

「ああ」

「もう1つ。宇宙怪獣ヱゐモセズは、大地に激突に四散したが、その時散った細胞はこの星の環境汚染に反応して怪獣化するだろう。キミはその全てを倒さねばならない」

「うっ……なんか話がでかくなったな。……まぁ、かまわん。やるさ」

「もしキミがこれらを破れば、銀河憲章に則り、私は母星に帰還せねばならない。そうなれば、命を支える私が消え、キミは死ぬだろう」

「……わかった」

「では、光に身を任せるのだ。私はしばし眠りにつく。この力……正しく使ってくれ……」

 ギガントマンの肉体が強く輝き――

 オレは光に包まれた。

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