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真夜中のミルクタイム。

作者: 東雲 奈緒

捨て猫みたいに捨てられていた少女を拾った彼が少女と出会ったのは雨が降る真夜中のこと。彼は仕事帰りで雨が降っていることも重なりイライラしながら足を進めていた。いつもの曲がり角の所で小さな何かがあることに気づき歩みを止めた。



それが人間だということに彼はすぐに気づき膝を抱えて丸くうずくまっていた少女に彼は真っ黒の傘を少女の頭の上にさして少し強い言い方で声をかけた。


「おぃ、ガキ。こんなとこでうろつかれると仕事の邪魔なんだよ、ガキはガキらしく家に帰って大人しくしてろ」


冷たい雨が頭部に落ちなくなったことで顔をあげれた少女は彼の目を見て思わず綺麗とこぼした。


「お兄さんの目、綺麗だねぇ~。緑と水色だね~」


あどけない表情の少女はその様子のまま全身真っ黒で瞳の色だけ他と違う彼に否定をせず見たままを受け入れる少女に癇に障ったのまたしても少女に対して強い言葉を投げかける。


「糞ガキ、俺の言葉聞こえなかったのか?」


「おうちには帰れないの。ママもパパも新しい子のことでいっぱいいっぱいで私を愛せないって」



彼女はただ事実を淡々と語って、ふわり微笑んでみせた。その笑顔には哀愁が漂ってどこか世界に絶望しているようにも思える。


愛という言葉を使った時に彼の瞳が大きく見開き、目を伏せたあと、どこから出したのか少女の頭に真っ白なタオルを乗せて少し乱暴にだけど優しく水分を多く含んだ髪をふいて、さっきよりは柔らかい声で話しかけた。


「おぃ、ガキ。こんなとこにいると邪魔だ着いてこい」


と雨で全身濡れている少女を片手で抱えた。


「あ、お兄さんのお洋服濡れちゃう。ダメ」と身をよじって降りようとしてみるものの暴れるなと一言。彼はそのまま少女をそこから連れ去った。


誰にでも知られたくない過去がある。彼も同じで、少女が愛せないと言った時の表情が自分の過去とダブってしまったのだろう。


思わず手を差し出してしまいたくなった彼は自宅へと少女を連れ帰り、一人でお風呂に入れると確認を取ってからお風呂に少女を入れて濡れてしまった服を乾燥機へ投げ込む、彼の持っている服の中で一番小さめな服を用意して少女があがってくるのをホットミルクを用意しながら待った。


少女が我に返った時には、少女の手には温かなミルクが入った黒のマグカップを手に持ち、ぶかぶかだけれど暖かい服を着て彼に髪の毛を乾かされていた。


ちょうど乾かし終わったようでドライヤーを片付けに部屋を出ようとする彼。


「お、お兄さん待って!!」


と今まで彼のいう通りにしていたことに気づき焦ったように彼に声をかけた。その声に立ち止まった彼は大丈夫だすぐ戻ると返事をして部屋を出ていってしまったがすぐに戻ってきて少女の目の前にあぐらをかいて腰を下ろした。


さてとと呟きながら、彼は少女に目線を合わせた。


「俺は、アキラだ。お前の名前は?」


一番最初に話しかけた言葉よりは幾らかやんわりとした言い方で少女に自己紹介した彼は、ここで初めて名乗った。いつもなら相手から名前を聞くのだがそうはしなかったあたり、少女への言葉遣いには一応、学びがあるらしく、少女も安心をして返事をすることができた。


「名前は、分からない。」


呼ばれたことがないから知らないという答えのが正解なのかもしれないけどと少女は心の中で思いながらそれは声には出さず彼を見つめれば彼はチッと小さく舌打ちをしてから花の名前を呟いた。


「マリーだ。今日からお前はマリーだ。分かったか?」


分かった!と元気よく返事をすれば彼はクククと笑ってまずはそれを飲めとマグカップを指さした。

マリーと命名された少女はコクリと頷いてゆっくりとマグカップに口をつけたてゆっくりと味わうようにミルクを飲んだ。


彼は、近くにあった缶の中からお菓子を取り出してマリーに差し出した。こんな真夜中に子供に菓子を与えるのはどうかとは思ったがあいにく冷蔵庫の中には、酒とつまみしか入っていない。


それよりは菓子のがマシだろうと判断の上だろうがマリーは渡されたそれをキラキラした目で見つめた。


「こんなもんしかなくてわりぃけどコレも食えよ」

とフィルムに入った菓子をそのまま手渡すとマリーは受け取ってから首を傾げた。


「これは、なに?」


「菓子だよ。確かそれは紅茶のクッキーだったけな」


マリーは初めて見るそのフィルムを破れなくて彼に突き返せば、彼は理由が分かったのか笑わずにそのフィルムを破ってからもう一度、マリーの手に持たせてマリーに言ったというよりも自分自身に問いかけるようだった。


「なぁ、マリー。お前は染まらずに居てくれよな」


と呟かれた言葉にきょとん顔で首を傾げた少女に彼は笑って頭を撫でた。


「いい。今は分からなくても。さぁ、良い子は寝る時間だ」と飲み終えたマグカップを私の手から離させて抱きあげた。


「ねぇ、お兄さんは、どうして私に優しくしてくれるの?私は何も出来ないよ」と彼の肩に顔を伏せた。


「お兄さんじゃなくてアキラな。あと何もしなくていいんだ。ここで俺のことを待ってればそれでいい」


頭をぽんぽんと優しく撫でられた少女は嬉しそうにそのまま彼の首に抱きついて耳元でアキラのこと待ってる!ずっとずっと毎日待つよ。だから捨てないでと呟いたけれど最後まで言えたかは彼しか知らない。


少女はそのまま寝てしまって彼の返事を聞けなかったから。


「あぁ、約束だ。マリー」



あれから少女はいくつかの月日を彼と過ごしていて、彼は必ずここへ帰ってきてくれるから彼女はここに居る。染まらずに居て欲しいと言った彼の言葉は守れなかったけれど。



「ねぇ、アキラ。私達が出会った日も雨が降ってたよね」背中合わせでいる彼はあぁそうだなと呟いた。


「あの時のクッキー食べたい」と言った私に分かったと一言のあと行くぞと背中を押される。


闇の中キラリと光るナイフを懐にしのばせて

今日もお仕事に向かう、全ては愛する彼のため

お家に着いたらホットミルクとクッキーを

二人で食べるのが約束

仕事内容は秘密それでも興味があるなら

あなたも雨が降る真夜中

待ってみてもしかしたら会えるかもしれない

私たちにね

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