今日からここが私の家 前編
まだまだ初めましてのせんせいです。
今回から千鳥視点「今日からここが私の家」になります。15年前に考えてやっと登場するキャラクターもいます。
よろしくお願いします。
後書きは登場人物紹介です。
ビルとビルの隙間に降り立つ、見上げると高い場所で窓が一つ開いていた。あそこから飛び降りたの?自分の足を見る。裸足なのにほとんど衝撃を感じなかった。どうして?
「おい 千鳥 行くぞ」
「あっ うん」
考える間も無くスタコラ進む先生について行く。左右に動く先生のお尻を追いかける。
「黒センセイ 遅かったね 待ち疲れたよ」
路地の出入口で女の人の声がした。見上げるとフルフェイスヘルメットの女の人がバイクに跨っていた。先生が立ち止まる。
「まあ色々あったからな それよりその格好目立つんじゃないか?燈紀」
「黒センセイがいれば大丈夫でしょ それよりその子がそうなの?」
女の人がこちらを見る。ヘルメットのせいで表情が分からない。私は先生の後ろに隠れる。
「あらら怖がらせたかな?」ヘルメットを脱がないで目元だけを見せる女の人。先生と話してるって事は怖い人じゃないのかな?
「自己紹介は後だ もう追っ手が着てるぞ」
「りょーかい 乗って!」
こちらから見えない方に親指を立てる。回り込むとバイクの側面に小さなボックスがついていた。後で聞いた話によるとサイドカーというらしい。
「早く乗れ」
「う うん」
先生に急かされて乗り込む。中はシートになっていて座り心地が良い。私の膝の上に先生が座る。
「それじゃいくよ」
バイクが走り出す。と同時にビルの入り口から数名のスーツの男の人が出てくる。そしてこちらを見る。見つかった。
「あれだ!」
ビルの前に停めてあった車に乗り込む。
「大丈夫だよ あの車は追いつけない」
見上げると見えないけど女の人がニヤリと笑った気がした。振り向く。勢い良く走り出した車が遅くなって止まる。どうして?
「なるほど パンクさせておいたのか」
先生が言う。
「そーいうこと!」
女の人が言う。
信号のない道路を走り抜ける。これも後で教えてもらったら首都高というらしい。下に下りて住宅街の中を走る。
「もうすぐだよ 千鳥ちゃん」
ここまで間に自己紹介をした燈紀さんが言う。私は周りを見渡した。
「どこにつくんですか?」
「あれー?黒センセイ説明してないの?」
膝の上で先生が鼻息を吐く。
「慌ただしかったからな これから千景の家に行くぞ」
「あまのちかげさんのいえ?」
あの声だけの男の人だ。あれから声を聞いていない。どんな人なんだろう?
「そー千景さんの家!あっ ここだよ」
燈紀さんの声と同時に木造のアパートが見えた。高い柵の中は庭になっているようで、そのすみにバイクが止まる。
先生を抱きながらサイドカーから下りる。
「ちょっと千鳥ちゃん裸足じゃない 靴はどーしたの?」
私の足を見た燈紀さんが声を上げる。何を言ってるの?先生が下りる。
「千鳥ちょっと待ってろ」
「うん」
先生と燈紀さんが少し離れた場所で何か話している。聞こえない。あっ、こっちに戻ってくる。
「待たせたな 行くぞ」
先生が言う。
「千鳥ちゃん 後でユロクニ行こうね!」
燈紀さんが親指を立ててニヤリと微笑む。もちろんヘルメットをかぶっていて表情が分からない。何で外さないんだろう?
「う うん?」
二人について行くとアパートの入り口らしき引き戸の前で立ち止まる。燈紀さんがポケットから二つの鍵を取り出し、一つを鍵穴に差し込む。
「この鍵は住人全員が持ってるんだよ」
燈紀さんが言うとカチリと鍵の空く音が聞こえた。そして燈紀さんが引き戸を開けて中に入る。
「ただいまー!」
燈紀さんが大きな声で言った。
登場人物紹介①
名前:千鳥
年齢:10歳未満
趣味:まだ無い
好き:先生
嫌い:実験室
名前:先生
年齢:2歳
趣味:映画鑑賞 五枚千円のビデオを毎週レンタルしている
好き:マグロ
嫌い:虫全般
名前:天野千景
年齢:28歳
職業:小説家
趣味:パズル
好き:日本酒
嫌い:甘いもの
名前:藍原燈紀
年齢:19歳
職業:アーティスト
趣味:バイク ナイフ
好き:千景 でも気づかれてない
嫌い:人混み 病院