鳥籠の雛鳥 後編
まだまだ初めましてのせんせいです。
前回までのサブタイトルを変更しました。
脱出する先生と少女の後編です。
よろしくお願いします。
そう言うとせんせいは階段を降りるかのように細い配管に足を掛け、あっという間に降りてしまった。そして覗く私の顔を見上げた。せんせいの瞳の中の私が私を見上げていた。
「どうした?早く降りてこい」せんせいが言う。私は手摺を掴んだまま「せんせいこわいよ。おりれないよ」言う。
怯えた瞳の中に俺が映る。
周囲を確認する。路地の出入口に一台のバイクが止まっていた。黒いライダースに黒いフルフェイスヘルメットを被っている。ボディラインから女性だと分かった。
鼻息を吐く。やれやれ仕方ない。
細い配管まで跳躍、もう一度跳躍して窓枠に足をかける。窓枠に座る。丁度子供の視線と重なる。お互いの鼻の距離がほんの数センチ。瞼には涙がたまり今にも零れほうだ。
「、、、せんせい」助けを求めるようなか細い声。仕方ない。真っ直ぐ子供の目を見る。
「そんな声で呼ぶな」
「でも、、、」
鼻息を吐く。子供の前髪が揺れる。今気付いたが鳥のヘアピンをしている。何の鳥だ?
「そうだ。名前を教えろ「子供」と呼ばれたくないだろ?」
沈黙「なまえ?」不思議そうに聞き返す。
そういえばさっきもこんなやりとりになったな。もしかして、、、子供を観察する。4、5歳だろう。本来なら色々吸収する頃。その大事な今を愛情の無い大人に囲まれて実験されていたんだ。感情が少なくなるわけか。
「そう名前だ。千景が言っていただろう。俺達は友達になるんだ。友達は名前で呼び合うものだ。お前は友達は嫌か?」
顔を振る「いやじゃない、でも」
両親がいた頃はあったのだろう。
「無いなら俺が付けてやる」
「つけてくれるの?せんせい」
「ああ、ちょっと待て」とはいえどうする。追っ手はもうそこまで来てる。本当はこういうのは千景に任したいが、、、ヘアピンか、、、。
「千鳥なんかどうだ?」
「ちどり?」
「そう千景の千にお前のヘアピンの鳥で千鳥だ」
安易だったか?
子供が髪に手を伸ばす。そして手に取ったヘアピンを見つめると窓枠に置くと、決意の目で俺を見る。
「うん。ちどり。うれしい」
今なら大丈夫だろう。
「よし。それならもう一度だ。良いか千鳥。俺が必ず受け止めてやる。もうお前は鳥籠の鳥じゃない。飛べるはずだ」ニヤリと笑う。
千鳥が不器用だが微笑み返す。
「うん!」
鳥籠から雛鳥は飛び立った。
次回から千鳥視点のお話になる予定です。
月曜更新予定で執筆中です。
まだまだ至らない所があると思いますがよろしくお願いします。