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私的哲学

私と父のこと。

作者: 羅志

ノンフィクション。所詮は痴れ事です。

私はあまり大きな音が好きではない。

理由は至極簡単だ。

幼い頃から、父親の怒声と共に聞こえていた音だから。

父は怒る際、よく物を殴る。壁を殴り、扉を叩く。勢い良く開けられる扉は酷く大きな音がして、反射的に肩が慄く。


父の沸点を、正直私は理解出来無い。

理解出来ることもあるが、その怒りがどこに飛び火するか分からない。

あの人は、怖い人だ。

飛び火すれば、その事で酷く怒鳴られる。

その怒声に、私は反射的に身を竦ませて、何事もうまく話せなくなる。

イエスかハイで答えなければ、より怒られる気がしてならなくて、どんな意見も言えなくなる。


私は今、職がない。

フリーター、といえば聞こえはいいし、事実求職活動は人見知りや上がり症ながらも頑張っているつもりだ。

けれど、父にとってはニートの引き篭もりだ。

働く気も何もなく、ただ家で、自室でごろごろと怠け、だらけているだけ。

家の事も何もしない、ただの穀潰し。


確かに、そう見えるだろうと思う。

平日の間、私は父と滅多に接しない。父は早くに出勤し、遅くに帰宅する。私の行動など、父は知らない。

私が家のことをやっているのは平日の中で、休日は部屋に篭もる。

だから父にとって、私は何もしない穀潰しだ。


私は父が恐ろしい。

幼い頃から怒鳴られていたから。

けれどそれは、そうでもしなければあの人は私に見向きもしなかったからだ。

あの人自身がどう思っていたのかは、分からない。

あの人の考えている事なんて、所詮別人である私には理解出来ない。

だからこそ、実感したかったのかもしれない。

たとえ怒りという感情の中でしか見つけられなくとも、私が父に見てもらえていることを実感したかった。


今となっては、私にとってあの人は恐怖対象にほかならなくなってしまったけれど。

身内が恐ろしいせいか、他人が、その視線が恐ろしくなってしまったけれど。


私は父を恐ろしいと。怖いと思いこそしても、嫌いとは、思えないのだ。


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