編曲
「あ、悪魔?」
心内は動揺した様子でこちらを伺っている。
「冗談だよ。お前の現状と似たようなもんだ」
悪魔に取り憑かれた心内その容姿は人間から少し遠のいていた。頭からは角が生え牛のような風貌をしている。おれだって悪魔の力を使ったら、角こそ生えていないが翼と尻尾が生えているし尻尾の先には蛇の頭が付いていておれに話しかけてくるんだ。本当嫌になっちょうよ。
「僕みたいな奴が他にもいたんだ」
心内はがっかりしたようにも安心したようにも見えた。
「なんだ?お前は自分が物語の主人公にでもなったつもりでいたのか?」
「そんなつもりはない」
心内はフェンスを越えてこちらに向かってきた。おれは心内の前に立ちふさがりこれ以上男子生徒に近づけないようにした。
「やめろ」
少しの沈黙の後、心内はおれに殴りかかってきた。思った以上に早く重い一撃でかっこ悪くもおれは数メートル後ろに吹っ飛ばされてしまった。頑丈なのがおれのとりえですぐに起き上った。心内は男子生徒の前を通り過ぎまっすぐおれに向かってきた。ターゲットはこちら変わってしまったらしい。さっきは油断していただけで今度はそう簡単には殴らせない。おれは心内の襟元を掴み心内の体を地面にたたきつけた。
「お前はもうお前をいじめた奴のために苦しむ必要はない。お前をいじめた奴を殺したところでお前は新しい苦しみに苛まれるだけだ。過去を変えることはできないし決別することもできない。自分の辛い過去を背負って生きていけるように強くなるしかないんだ」
心内は叫んだ「そんなことができたらはじめからやっているさ、変わりっこないんだ。僕は弱いんだ」
「変われない、人間なんていないさ。現に今のお前は一周間前のお前と全く一緒か?きっかけさえあれば人は変われるんだ。おれがまじないをかけてやる。」
そう言っておれは心内の胸に拳をあてた。
「デビルアレンジメント」
その瞬間おれは悪魔が使う精神エネルギーの塊を心内にぶつけた。心内に取り憑いた悪魔が心内の体から飛び出した。