屋上の悪魔
おれ達は階段をかけ上がり屋上に出た。屋上のフェンスを越えた所には一匹の悪魔と二人の人間がいた。悪魔に取り憑かれている人間がもう一人の人間の首を掴み天高くかかげている。
「彩美おまえはそのまま行って注意をひきつけてくれ」
おれは返事を待たずに翼を広げ空を飛び迂回した。この翼も悪魔の力だ。言っておくが普段から翼が生えている訳ではない、おれは自らに取り憑いた悪魔の力をかなり自由に使える、まるで本物の悪魔のように。
「心内君ね」
彩美はフェンス越しに声をかけた。
心内はゆっくり振り向いた。
「僕これからこいつを殺すとこなんだ、良かったらそこで見ときなよ」
「やめなさい、そんなことしてもあなたに未来はないわ」
彩美の言葉を聞き心内は叫んだ。
「うるっさい、僕はこいつを殺すことで過去の自分と決別するんだ。僕はこいつに暴力を振るわれ、脅され、金を取られ、蔑まれた。こいつを殺さないことには気が済まないんだ。」
「弱い僕は死のうとした、そしてここから飛び降りた。そんな僕を助けてくれたのは、クラスメイトでもない、教師でもない、親でもない、それどころか人間ですらない、悪魔だ。もし僕を止めることができるとしたらそれは悪魔だけだ!」
その瞬間心内は手の力を緩めた。心内をいじめていた男子生徒は学校の屋上から地上に落下していった。
「そんな、化山君っ」
彩美は叫んだ。
おれは落下物をつかまえ屋上に飛び出た。フェンスの内側に入り男子生徒を下ろし、背中越しに心内へ挨拶した。
「悪魔参上」