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会話1
「化山君聞いた?」
彩美が機嫌良さ気に声をかけて来た。おれは昨日のペンキの件に関してまだ謝罪の言葉を聞いていない。そういう意味では聞いていないと答えるのたが、そうではないのだろう。はっきり言っておれはまだ怒っている。ここは自分の器の小ささを見せる絶好の機会だと言わんばかりに無愛想に答えた。
「何が?」
「4組の男子二人が何者かに襲われて病院送りになったらしいの」
「なんだ、その話か」
その話ならおれの耳にも入っていた。机に顔を伏せて寝ていると案外周りの音が耳に入ってくるのだ。別に意識しているわけではない。
「これって昨日の落書きと関係あるんじゃない?昨日の落書きは悪魔を呼ぶための儀式で誰かが復讐のためにやったのよ」
「厨二病も大概にしとけよ」
「なによ、化山君なんて存在そのものが厨二病じゃない」
彩美のおれに対する意見は概ねその通りだ、言い方の問題はあるにしろ、おれの存在そのものが厨二病の空想染みた、普通ではあり得ないものなのだ。
断っておくが友達がいなくていつも机に顔を伏せていることを言っているんじゃない。
おれが悪魔に取り憑かれているって話だ。