主人公とヒロイン
いつも机に突っ伏しているこの男こいつがこの小説の主人公だなんて言ったら読者の皆さんはがっかりするだろう。こいつの名前は化ける山と書いて化山守という。最近流行りのやれやれ系主人公だ、スタンドは使えない。
「あのさ…」
おれは机から顔を上げて目の前にいるポニーテールの女子に声をかけた。
「さっきから何ぶつぶつ言ってんだよ」
「あら、おはよう化山君、舌を使って自分の机を綺麗に掃除してるようだけど猫じゃないんだから辞めた方が良いと思うわ」
「おれは机に顔を突っ伏して寝ていただけで机を舐めたりしていない」
このポニーテールの女子は名前を彩美彩菜という。まったくこんな可愛げのない女子がこの小説のヒロインだなんて読者の皆さんはがっかりすることだろう、やれやれだぜ。
「化山君こそさっきから何ぶつぶつ言ってるのよ」
彩美はそう言い返してきた。おれと彩美との会話はいつもこんな感じだ。おれは彩美との会話を面倒に感じることがあるが向こうはいつも楽しそうにしている。何故彼女みたいな明るい人間がおれみたいな根暗野郎と一緒にいたがるのか不思議で仕方がない。
世の中には変わった奴がいるもんだ。