希望
まじないなんて言ったが別になんの力もない。心内から悪魔を出すために精神エネルギーをぶつけただけでそのついでに言ってみただけだ。空中には心内に取り憑いていた悪魔が浮遊していた。
悪魔は言った「邪魔をするな。こいつが精神的に救われるのは復讐によってのみ、そうでなければこいつは過去の劣等感に一生さいなまれ生きていくんだ。」
おれは悪魔に答えた。「誰だって過去に受け入れたくないことや後ろめたいことはあるさ。だからと言って過去にとらわれる必要はない、人は生きている限り希望がある」
「希望だと?」
「そうだ、現在を生きる奴には未来と呼ばれる希望がある。心内は過去を乗り越え強くなれるさ」
悪魔がおれに向かって襲いかかってきた。「ふざけるな、そんなものは希望などと呼べるものではない、少なくともお前にやって来る明日はない」
おれは精神エネルギーを拳に込め、襲いかかってくる悪魔を殴り飛ばした。人間に取り憑いていない悪魔は実体を持たない精神エネルギーの塊だ。悪魔が死ぬことはない。だから通常はなにかしらの物質に封印する。しかしおれはそんなエクソシストのような高等技術を持っていない。だから代わりに自分の体に取り込むのだ。尻尾の先についている蛇が大きな口をあけた。そして獲物を食らう蛇そのものの姿で悪魔をゆっくり飲みこんだ。そしていつものようにしゃべりだした。
「お前は他人に説教できる程ちゃんと現在を生きているのか?」
本当嫌になっちゃうよ