イドウ
2216年、5月の某日のこと。
ましっろな廊下を歩く。後ろから足音が。
「ゆうちゃん、おはよっ」
フワフワの長い髪を揺らしながら、りさが話しかけてきた。
「おはよ、稜も。」
ゆうちゃんこと三隅 勇気は、りさの後ろに立ってた少年に挨拶した。
「何だよ、ついでみたいな言い方。」
呟きを無視し、2人と教室のような部屋に入る。
楽しそうな会話が聞こえるその部屋は、およそ20人の子供がいた。
年齢はまちまちだが、それぞれの話題で盛り上がる姿はほほえましい。
彼らに共通するのは、心に残った深い傷。
悲しい過去と恐怖が一人ぼっちの彼らを作った。
僕は窓側の自分の席―といっても決まってないけど―に着いた。
ガラッと音を立てて―立ってないけど―ドアが開いた。
長い黒髪の女性が入ってくる。部屋の中が静かになる。
「えー突然だが、前回のテストに合格した者は前に出て来い。」
無表情で言われ、怒られるのか分からないまま前に出る。
テストとはペーパーテストではなく、体力テストのこと。
そして、合格者とは、僕、稜、りさ、その他8人のこと。
計11人はビクビクしながら前に出た。
りさに限っては、手がメチャクチャ震えてる。大丈夫かよ。
女性が口を開く。ゴクンと息をのみこむ。
「この11人には、今日から自衛隊の特殊部隊に入ってもらう。」
「「ええーーーーー?!」」
見事にハモった11人は、他の人とともに大混乱に陥った。
(おいおい、何言ってんだよ……。)