5 ノーセンキュウ
「私は新谷 空。麻生高校2年6組出席番号10番。他諸々。生徒会長様の差し金くん。」
「待って。何で今さら自己紹介?つーか最後のってオレ?」
私は今旧校舎にいる。アメに愚痴りに来たのに何故か先ほどの差し金くんがついて来た。うざいなぁ。缶バッジは欲しいが本人はいらないよー。
「今、私の周りにはあなた以外に人はいません。嘘だけど。」
「あははは〜、意味分かんないね君。ものすっげ腹立つんだけど。」
うへぇ、何か怒っちゃったよ、この人。優等生は真面目に授業受けろよ!優等生なら、んなファッションしてないか!ごめんね!!
それでも今頃、敵(教師)の睡眠攻撃に耐えているだろう戦友(生徒)たちの助けに行けって!敵(教師)を倒せ!!・・嘘です!!
・・・ま、見る限りこの人優等生じゃないんだろうな。というか見たまんま私同様に問題児のレッテル貼られてそう。生徒会長様とお友達タイプに見えないなぁ?それよりも・・
「人に名を聞く時はまずは己から名のるべし。その心は?」
「・・・・・・・?。・・・・・・・ーーああ、うん。わかった。」
おっ。通じたか。我が心意気。
「オレは2年1組の 矢野 誠。昊・・生徒会長様とは幼なじみなんだ。・・・名前聞きたいなら最初から普通に聞いてよ。」
思い切り溜め息を吐きながらウンザリとした表情で答えた。礼儀正しく普通に聞いたじゃないか。なにが不満か!そして何故ついてくるのヨ!?誘った覚えもありませんガ?!ストーカーか!?あ、何か睨まれた。こいつさっきから外ツラ剥がれまくってません?
それはそうと同じ学年だったのか。1年かと思ってたよ。1組だと階が違うから見かけたこと無かったのかなー?いや、視界に入ってたとしても覚えてなさそうだ私は。
矢野とやらは足を止め私を胡散臭そうな目で見つつ口を開いた。
「あのさ、わかってると思うけど昊の『呪い』とやらの件で君と話したいんだけど。」
「ノーセンキュウ。」
「呪い」の単語がでて私は即座に否定の言葉を贈った。いやいや貴方が来てもどうしようもありませんから。
私の態度が今度こそ気に入らなかったのか、右腕を思い切り掴まれた。痛いぞコラ。
「ちょっと?真面目に話したいんだ。昨日、昊は頭に怪我したんだぜ?責任感じねーの、あんた?」
「生きてる事に感謝してればいいじゃないか。これでは駄目かな?もう間に合わないだろうし。」
今日見た感じじゃ、本人なしではどうにもできない。『呪い』ってのは大概、呪われてる本人協力ないと大変なんだ。だからもう無理っす。
「・・・どういう事か説明してもらおうか?」
「!?」
背後から生徒会長様の声がした。
おいっ!!授業はどうした!?私は少々焦り気味に振り向き一言もの申した。
「矢野くんさっきから口調変わってるんだけど、猫かぶってたの?それとも虎?」
「ただの女たらしだ。年上好きだからオマエは対象外だがとりあえず警戒してたから可愛子ぶったんだろ。虎というか狸だな。」
「ねぇ!?君ら会話のポイントとタイミングおかしいから!!今聞くかソレ!?何よりなんで本人に聞かない?!」
おっ!結構ノリがいいね、会長様!腕を放してくれない矢野くんを口撃してみたくて言ってみただけです、ハイ。
「冗談だ。それより腕を放すな。逃がすなよ、誠。どっか適当な部屋に入るぞ。鍵がある場所がいいんだが知ってるか?」
「だったら2階の科学準備室。内側からつけれる。」
会長様はしれっと言い放ちました。えーーー・・と何この人達。今さらりと言ったけど、結構あぶないよね?監禁でもするつもりか?というか会長様、あなた話し合いに来たんじゃないのか。尋問しにきたのね?
・・・・・OK、しゃーない。つきあおうじゃないか。
なんかあって来たんだろうし。あなた方が知りたい事教えてあげましょう。
それからどうするかは知んないけどねー。
冷たいという事なかれ。
私は自分の命が惜しい。弱虫なのだよ。
・・・・・・そーいやアメ何処行ったんだろ。