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4 痕

「・・・頭を打った影響がこんなところに・・・。大丈夫、日本の医学は世界でもトップクラスだから安心して。」


とりあえずもう一度辞書で殴ろうと腕を大きく頭上にかかげー


「冗談だってば!本気にしないで続きをどうぞ!!」


こいつさっき殴ったばかりなのにもう回復してやがる・・。思わず舌打ちしてしまう。いきなり話しの腰を折りやがって。やっぱ止めとけばよかったと後悔するが、誠はそんな俺の様子を見て真面目に聞く気になったようだ。


「どうしたんだよ急に。何があった?」


先ほどまでの軽い雰囲気を払拭させコチラをまっすぐ見てきた。


「・・・。二日前、とある女子生徒に言われたんだ。俺は呪われていると。命の危険がある・・・まだ間に合うかもしれないだの、訳の分からん不愉快極まりないものだった。」


「・・・何それ。色々ツッコミたいけど誰、その人。随分とまぁ残念な頭を・・。」


「まずは聞け。愚か者。初めて見る顔だったし名前なんぞ聞いてない。学年すら知らん。」


「・・・いつもの告白・電波バージョンじゃないの?」


「・・・だといいんだがな。そうも言っとれん状況なんだ。」


「は?何かあったの?いや、頭の怪我以外で。」


ありまくりだ、こんちくしょう。

そもそも頭の怪我の原因だといっていい。


「おまえ、怪我の理由で俺が階段から落ちたと言ったな?」

「あ?ああ・・。」

「この(・・)俺がどうして階段から落ちたかわかるか?」

「はぁ?何言ってんの?さっきは完全無欠なんて言ったけど昊だってたまにはドジするだろ?」



「非常に不遜極まるがまぁ、俺にだってそんな時もあると認めてやろう。だがな、俺はあの時


後ろ(・・)に思い切り引っ張られたんだ。」



「・・・ごめん。待って。オレは昊が落ちて着地してこけたとこ全部見てんだよ?隣にいたからね。後ろには誰もいなかった(・・・・・・・)。これは断言できるって。」


俺だってその程度分かっている。だが、こいつと並んで階段を上っていたら急に両肩を掴まれて後ろに引かれたのも本当なんだ。俺じゃなかったらもっとひどい怪我をしていただろう。それにー、


「これを見ろ。」

俺は着ていた黒のTシャツを脱ぎ後ろを向いて、両肩を見せた。


肩にはあまりに強い力で掴んだのだろう、アザが残っていた。赤くなるのではなく鬱血し青くなっているのが一目でわかる。


指の痕が6・・であることまではっきりと。

あきらかに人の手の痕には見えない。指の太さや数が異常すぎる。


両肩のアザを見て、そこで俺は二日前のあの女子生徒が頭に浮かんできた。あいつは命の危険だのなんだの言っていた事をーー。



「これは普通じゃない。何かおかしい。」



ふと誠の方を見ると青ざめ珍しく顔を険しくさせている。恐らくこの話を聞いて俺と同じ考えに至ったんだろう。コイツは阿呆だが馬鹿じゃない。

「ね、昊。俺には今回の事、その女子生徒が何かした・もしくは何か知ってるとしか思えないんだけど。」

それとも他に何か、心当たりでもー?と、問うてきた。俺は首を横に振り答えた。


「俺もそう考えたんだが、そいつは呪っているのは自分ではない・と言っていた。」

つまり俺に危害を加えたとしても自分ではないという弁護に他ならない。


「ーえ。昊、まさか信じてんの?んな言葉。」

「阿呆が。んな訳無いだろう。だが何か知っているのかもしれんな、怪しい事この上ないし。」


嘆息し、服を着直しつつ答えた。命の危険など、ない。「呪い」などあってたまるかーー・・!たちの悪い悪戯に決まっている!!


そう叫ぶ俺の弱い心と客観的にみて異常すぎる出来事に怯えるが故に未知の出来事を知りたいと好奇心がうずく。



「で、どうすんの?その子と話す必要があるね。学年クラス名前が不明な子に。ああ、昊ってば名前覚えてない=顔を覚えてないだもんね。うっわー、探すの大変だ。」


「・・・・・・・・。」


麻生高校全校生徒数約1200名。

女子は約半数600名。


・・学年くらいは聞いとくべきだったか。



「ま、オレも協力するよ。人探しに事故原因。ねー・もし近いうちに昊が死んだら死因「呪い」でいい?」


俺はもう一度辞書を振りかぶった。今度、殴る専用辞書を買いにいこう。

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