9 高らかな宣言
(ああ、もぅどうしようか。他人に言ってもらっただけで、こんなにスッと気持ちが晴れるものなのか。)
会長様ーいや、水沢 昊哉の言った言葉は私が欲しかったものだ。誰かに言ってもらいたかったんだ。ずっと。
アメが少々不機嫌そうに尋ねてきた。そりゃね、手出ししないって言ってたのにねー私ってば。気が変わちゃったから。今の私ってばやる気満タンですよ。
「主。一度決めたことをもうお忘れか?」
「いやいや、覚えてるよ?けどさー、予定は未定で変更オッケーってことで。」
会長様や矢野くんが不思議そうにこっちを見てる。あー、面白くなってきた!
諦めたハズの事をこうもしつこく粘るなんて私らしくなさすぎる。座右の銘「人生諦めが肝心」なのにさー。
いつもの三倍くらいテンション高くなってるのがわかる。けど嬉しかったんだからしょうがない。
私はあらためて会長達に向き直り、高らかに宣言した。
「あらためて自己紹介を。
私は人里でおこる人外問題を代々解決する事を生業としてきた一族 式術者 新谷 空。
私の力を持って水沢 昊哉にかかる『呪い』を解放する手助けをしましょう!」
会長様や矢野くんは私の素晴らしい美声にぽかんと口をあけて惚けている。うん。意味分かってない顔だ。しょーがないけどさ。
「・・・待て、オマエさっきは自分は関係ないって態度だったろ?なんで・・」
「そう。関係ないね。そう言ってくれたのはあなただけだよ。」
「ーは?」
「アメ。会長様の家に行って調べて来て。」
これ以上言う気はないので会話を切り替えた。だって口にしたら気分悪くなっちゃうし。案の定会長は乗ってくれた。
「おいっ!?家って家族がいんのに不法侵入する気か!?」
「ご心配なく。アメ。」
「御意。」
アメは私の意図をくんで隠行した。一瞬でアメの姿が空気に解け込むかのように見えなくなった。
人と妖は同一で支点の違う世界の生き物。さっきまではアメがこちらの世界の支点に合わせてたのを元の支点に帰っただけ。ようは人から見えなくなってもそこらにいるってこと。
そう説明したら矢野くんが透明人間みたいなものか、って納得してた。いやいやアメ人間じゃないから〜。会長なんかは結局は不法侵入じゃねぇか!とブスッてしてた。細かいことは気にしちゃだめだと思うよ?
矢野くんはアメが消えてあきらかにホッとしてるなー。ま、ともかく
「私の家は先程いったとうり多くの術者を擁する一族なんですよー。所謂拝み屋ですかね?まあ、色々とそれなりにできますよー。
式術者ってのは追々説明します。じゃ、まずは今まで何があったかをー。」
「待った!」
んん?またもや会長様が声をかけてきた。
「なんで急に手助けする気になった?答えろ。」
すごく真面目な声音で言わなきゃ許さんって空気だしてて怖いなー。けど口にしたくないから。
「私はお人好しじゃないから。不快な思いをしてまで人助けなんてごめんだからね。気に入った人しか助けないんだ。それじゃぁ駄目かなー?」
にっこりと笑って言った。本当のことだから嘘じゃないもんねー。
会長様は眉間にシワを寄せ、矢野くんは口元を引くつかせながら私にどう見ても作り笑いにしか見えない笑みを向けて一言。
「・・・やっぱりムカつくよ、アンタ。何サマって感じで。」
不快感をあらわに毒づいてきた。うーん。こりゃ完全に嫌われてるかな?
どーでもいいけど。
「まぁ、例外としては助けを求めて頭を下げる人を拒みはしないよ?冷血漢のつもりもないからねー。」
頭の回る人ならこの言葉を嘲りと取るだろうなー。目の前の二人は顔に出してこそないけどそう取っただろう。
(さて、このへんで帰るかな。会長様の呪いについて調べなきゃだし。急がないと。)
そう言って会長様と一応矢野くんに護符と厄よけのお守りといっていくつか渡し、細々とした使い方の説明をして家路につく事にした。二人にはこれらを何処から出したと聞かれ「乙女の7つ道具は四次元ポケットと同類なのだ」と言ったら白い目で見られてしまった。ひどくね?冗談だってば。
「乙女って柄?7つ道具ってネタ古くね?」
「四次元ポケットは本当にあるのか?いや魔術とかもあるならあるいは・・。」
ってそれぞれぶつぶつ言ってたのは聞かなかったことにしときます。冗談だってば・・・。