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二ノ巻 救世主の召喚

 その一見デジタルストップウォッチ風の、デバイスからの信号を受け取ると、照和の真田雪子は、弓子の目の前にすぐに出現した。

 もちろん、いつものセーラー服を着ている。


 コレは、好き好んでの出しゃばり行為である。

 彼女は、「この時間軸の彼女の下位互換である真田雪村」の精神の安定のために、酒井弓子と村田京子の身の安全を守ると、勝手に自らに誓っているのである。


「今回はどんなトラブルなのかしら?」

 雪子が尋ねると、弓子が事の顛末を説明する。

「…カクカクシカジカというわけなんです。」

「なるほど。ちょっと待ってね。」

 そう言うと、雪子は左手の腕時計型の端末で、先日の駅の様子を再生し、男の素性を調べ始めた。


「あなたがうっかり助けた男の名は吉川誠二。吉川組の組長の次男ね。彼を突き落とそうとした者は、雇われの鉄砲玉ってところね。」

「…そうだったんだ。」

「私、組長さんとはちょっとした知り合いだから、今から話、つけてくるね?」

 そう言うと雪子は、その場から瞬間移動した。


 次の瞬間、雪子は吉川組の事務所の応接ソファーに座っていた。

「組長さん、お久しぶり。」

 ちょうど日本刀の手入れをしていた組長の吉川正義は、突然の訪問に若干の驚きを見せたが、すぐに対応した。


「…これはこれは、真田の姉御じゃありませんか。いつもながら急なご訪問で…。」

「挨拶は抜きで、単刀直入に用向きを言うわ。あなたの次男を狙う者に、心当たりはあるかしら?」


「ああ、それでしたら、実はウチでも調べさせてまして。他の組とはうまくやってますんで、どうやら長男が絡んでいるようで…。」

「おたくの次男を駅で助けた私の大事な友人が、以後その長男の手下とやらにしつこくつけ狙われていて、ウンザリしているのよね。」


「わかりました。そういうことでしたら、私の方で急ぎ対応します。」

「よろしくお願いするわ。もし無理ならこの私自らが…。」

「めっそうもございません。そんなことをされたらウチの組は壊滅します。」

 組長は顔色を変えてあわてふためく。


「じゃあ、まかせるわね。早急にお願いします。この酒井弓子の、今後の身の安全は保障すること。」

 そう言うと、雪子は目の前の空中に弓子の立体画像を出して見せた。

 腕時計型のデバイスには、こんな機能もあるのである。


「用件はそれだけだから、もう帰るわね。くれぐれも今の吉川組の繁栄が、誰のおかげで成り立っているのか、お忘れなく。」

「それはもちろん…。」

 組長の挨拶を最後まで聞くことなく、雪子は消え失せた。


 一瞬で、雪子は弓子のところに戻って来た。

「話を着けてきたからもう大丈夫よ。以前から言ってるけど、あなたはまず自分の身を大事にしてね。頼むから雪村を悲しませないで。あと、人助けもホドホドにね。」


「いつもありがとうございます。ただ目の前に困っている人が居るとつい…。」

「…その人物から、自分に対する悪意を感じなければ、助けちゃうのよね?」

「はい。すいません。」

「まあ、そこがあなたのイイところなのよねえ。」


「私があなたに教えたチカラは、そんなに強いものじゃないんだから、あんまり無茶しないように!あくまでも自衛用程度のものよ。」

「以後、気をつけます。」

「まあ、わたしもソレと引き換えに、読心術を学べたんだけどね。」

 雪子はウインクしてみせた。


「あと、見たところヒマそうだけど、今、仕事は何してるの?」

「まあ、アルバイトというか、家事手伝いというか。」

「あなたみたいな聡明な人がもったいない話ね。よかったら、ウチで働かない?」

「はい。考えておきます。」


「もしその気になったら…。」

 そう言うと、雪子は弓子の耳に唇を近づけて内緒話のポーズをとった。

 弓子は雪子から、守山区志段味地域の、とある住所を聞かされた。


「…そこに来てね。いつでも大歓迎よ。」

 ニッコリ笑って雪子は消えて行った。

 弓子はこの件に関して、真剣に検討することにしたのだった。


挿絵(By みてみん)


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