表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
エピローグ
94/95

後日譚1 風が届けた足音

【辺境の村・夕暮れ】


陽が傾き、麦の穂が風にそよぐ。

収穫を終えた村には、笑い声と食卓の匂いが漂っていた。


その少し先、小高い丘の上。

カイは腰掛け、空の端を眺めていた。


「……あれから、五年か」


使い込まれた剣。すっかり体に馴染んだ外套。

彼は今、Sランク冒険者となり、多くの仲間を導く立場にあった。


だが、この丘に来ると、不思議と昔のままの気持ちに戻る。


風が吹いた。


「……まだ、届くかな。俺の足音」


背後に、4つの影が並ぶ。


ゾルドは街の守備隊長として知られ、リュカとマリナは若手育成の柱。

フェイは多くの癒し手を束ねる立場にある。


だが今日は、全員が旅装を纏っていた。


「思い出したのか、お前が。あの通り道のこと」


ゾルドが肩をすくめて言う。


「忘れるわけないさ。俺たちが最初に、“でかさ”に憧れた場所なんだから」


カイは立ち上がり、ゆっくりと笑った。


「そろそろ……会いに行ってみようかなって思ってさ。答えがほしいわけじゃない。ただ、“今の俺たち”を届けたい」


「きっと風が運んでくれるよ」

フェイの声は柔らかかった。


「足音も、声も、想いも」


沈む夕日が、彼らの背中を橙色に照らす。


【道中・夜】


焚き火のそば。星が静かにまたたいている。


「この道、確かにあったんだな……ほら」

リュカが指差した先には、草に埋もれた“窪み”があった。


まるで何か、巨大なものが歩いた名残のように――


「まだ残ってたんだ」

マリナが呟く。


「何年たっても、風が全部は消せなかったんだな」

ゾルドが笑う。


カイはその窪みの中央に立ち、空を見上げた。


そこには、何もない。


けれど確かに、あの頃と同じ風が吹いていた。


「……あの姉ちゃんは、今も歩いてる気がするんだ」


彼はポツリと言った。


「もっとでっかくなって、もっと遠くまで」


そして。


「だったら、こっちも進まなきゃな。俺たちは俺たちの歩幅で」


全員が、黙って頷いた。


その夜、風は静かに吹き抜けた。


少しだけ向きが変わり、彼らの肩をそっと押していくようだった。


まるで――背中を見守る、誰かの手のひらのように。


いまも、旅は続いている。

足跡は風に消えても、歩く者の意志は残る。


そして、きっとどこかで。


誰かがその音を――静かに、聴いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ