69 群れの咆哮
轟音とともに、決戦の幕が開いた。
召喚士の背後から現れた異形の群れは、ただのゴブリンではなかった。
鋼鉄のように硬化した皮膚を持つオークの上位種。眼窩に紅蓮の焔を宿し、瘴気をまとうホブゴブリン。
さらに、魔導兵の巨体が腕から雷撃を散らしながら進軍してくる。
「第一波、来るぞッ!」
カイの号令が飛び、隊列が動く。
【Aランク:双剣のギルドリーダー】
「左、私が取る! 中央は引きつけて!」
双剣使いのギルドリーダーが風のように駆け、刃を一閃。
その斬撃は火花と鮮血を引きながら、敵陣の一角を切り裂く。
【Bランク:重装の盾兵】
「通さねぇぞ……ッ!!」
突進してくるホブゴブリンを受け止めた盾兵の膝が軋む。
だが、咆哮とともに踏みとどまり、叫ぶ。
「今だ、誰か撃てぇええッ!!」
【Cランク:狙撃手】
「了解! 眼球、射貫く!」
鋼の弦から放たれた矢が、紅い眼窩を貫き、爆ぜた。
ホブゴブリンが咆哮を上げながら崩れ落ちる。
【Dランク:支援術士】
「癒しの息吹、流れ込め――!」
Bランク剣士に魔力が流れ込み、血が止まり、視界が戻る。
「立て! まだ早いぞ、倒れるには!」
【鳥足歩兵隊:マリナ&リュカ】
「ゾルド、後ろは任せた!」
マリナが二刀を閃かせ、敵の横腹を斬り裂く。
リュカは空中の矢を二本、同時に放ち、突進型の敵の膝を射抜いた。
「貫通射法――抜けっ!」
新たに放たれた一矢が、魔導兵の肩口を貫き、電撃が空中に散った。
【Cランク:補助剣士】
「ミレナさん……っ、ここは……!」
彼は魔力砲を受けそうになったミレナをかばい、前に出た。
胸に直撃を受け、背中から崩れ落ちる。
「っ、ありがとう……! あんたが……!」
言葉は届かなかった。
ミレナの手が震える。
「これ以上……誰も、死なせない!!」
彼女の周囲に展開された魔法陣が輝き、敵の詠唱陣を次々に上書きして潰していく。
【Sランク:ドーガ】
「来い、化け物共!!!」
ドーガは雷撃を放つ魔導兵と正面から衝突した。
雷が斬鉄の剣に沿って流れた瞬間、彼の大剣が轟音と共に振り抜かれ、敵の上半身を断ち割った。
【鳥足歩兵隊:フェイ】
「……私、怖い……でも……!」
仲間の死、呻き声、血の匂いに震えながらも、彼女は必死に詠唱を続ける。
「再生せよ、希望の輝きよ――っ!」
眩い癒しの光が隊を包み、再び立ち上がる者が出る。
だが、戦場全体に緊張が走る。
ドッ……ドッ……。
空間全体が脈打つような気配。
召喚士が高台から動かずに見下ろす。
その視線ひとつで、魔法陣が再び稼働し始める。
「悪くない……ここまで抗うとは」
カイが睨みつける。
「……動けよ。いつまで見物してるつもりだ」
「準備が整えば、私も出よう。だがまずは――お前たちの限界を見極めさせてもらおうか」
その言葉に、怒りが沸騰する。
「……なめるなよッ!!」
カイが吠え、地面を蹴った。
剣が火花を散らしながら疾走する。
リアーネからの通信が入る。
『地下の魔力が変質している……召喚士が動く前兆。全員、構えを固めて』
カイが歯を食いしばる。
「……来るぞ。全員、陣形を維持!」
高台の召喚士の影が、魔力の波紋とともに、ついに動き始めた。
戦場全体が静まり返る。
風すら息を止めるかのように。
次の一手が、すべてを変える――その予感が、誰の胸にも響いていた。




