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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
最終章 終極の根
78/95

63 突入準備編 (挿絵あり)

朝焼けが黒壌地帯の前線を染める頃、整地された地に張られた仮設幕舎から、緊張の気配が立ち上る。


剛剣のドーガ、智謀のミレナ。

そしてカイ、鳥足歩兵隊の四人、さらに各地から集ったA〜Dランクの志願者たち十五名。


その中央に、太陽を背に立つ巨影。


身の丈二十二メートル、金色の髪を揺らすリアーネが、まるでこの地の守護者のように全員を見下ろしていた。

挿絵(By みてみん)


「……よく来てくれた」


ドーガの低い声が、冷えた空気を切り裂いた。


鎧の擦れる音、剣の柄を握る音が応える。覚悟の音だった。


「目的は明確だ。神殿をリアーネが押さえる。俺たちは地下へ――本拠地の核心を突き止めに行く」


ミレナが指を鳴らすと、魔力で編まれた簡易の立体地図が展開される。


「ただの掃討ではないわ。今回は“異常繁殖の原因”を探る探索任務。地図の通り、分岐が複数ある可能性が高い。臨機応変に動いてもらう」


紙に描かれた神殿の裏手、その“裂け目”を示しながら続ける。


「潜入口はここ。狭くて危険、リアーネは通れない。だが、万が一の際には――」


「呼んでくれればいいわ」


リアーネの言葉が、風のように落ちる。


「地面が邪魔なら、壊して行く。あなたたちの声が届く限り、私は止まらない」


沈黙。


数秒の後、ゾルドがごく小さく呟く。


「……どこまでも別格だな」


「でも、その背が近くにあるってだけで、俺たちは踏み出せる」

リュカが続け、マリナとフェイがうなずく。


「甘えないわ。でも、背中は預ける。……ほんとに、安心できるから」

フェイが小さく笑った。


リアーネは静かに見下ろし、微笑んだ。


「その分、しっかり戦ってきて。私は全部、ここから見ているから」



出発準備が進む中、各班が最終点呼を終える。


「探索班一、異常なし!」「後衛支援班、準備完了!」「魔力感知符、全員配布済み!」


火を囲み、鳥足歩兵隊の四人が小声で語り合う。


「怖いのは当然だ。でも、今度は違う」

ゾルドが低く言えば、


「そうだね。リアーネさんが来てくれたあの時のこと、忘れられない」

フェイが炎を見つめながら言う。


「でも今回は――俺たちが、他の誰かのリアーネになれたらって思うんだ」

リュカが言うと、マリナが笑って拳を重ねた。


「その意気! 行こう、やってやろうじゃない!」



Sランクの二人は最後の確認に入っていた。


「全員、生きて帰る。それだけだ。前に出るなって言ったら、絶対に出るな」

ドーガの声が、全員の胸に響く。


「必要な魔法はすべて用意した。だけど、油断しないこと」

ミレナが続け、魔力の帳が全員を包む。


出発直前、カイはふとリアーネの方を見上げる。


「俺、少しは変われたと思う……あの頃より」


リアーネはわずかに目を細め、笑んだ。


「ええ。もう“私に守られる子”じゃない。今のあなたなら、大丈夫よ」



巨神は、谷を見下ろす神殿の屋根に静かに座していた。


その足元を、覚悟を抱いた小さな者たちが、闇へと進んでいく。


「さあ、行ってらっしゃい」


リアーネの言葉は風に溶けて、誰の背中にも、確かに届いていた。

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