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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
幕間 小休止
69/95

60 歩み寄る巨影 (挿絵あり)

街の北側、緩やかな丘の上。

そこに立つだけで風景を変えるほどの影が、風にたなびく金髪をなびかせていた。


リアーネは足元の草を見下ろし、しばし沈黙していた。


門も、広場も、かつて共に戦った人々の姿も、すべて視界にある。

だが――その境界を、“またぐ”ことに、心はまだ踏み切れていなかった。


「……今の私が、街の中に入ったら。どう思われるのかしらね」


二十二メートル。街の門は、彼女の腰にも届かない。

狭い路地は、足の甲ひとつで埋もれてしまう。


「壊さない自信はある。でも、それだけで、誰かの心が安心するとは限らないわ」


その呟きは、誰にも届かない空に溶けていった。


そのとき――通信機からノイズが走り、レナの声が届く。


『リアーネさん、聞こえますか? ギルドから正式に要請があります。復旧が進まない区域がいくつかあって……どうしても、あなたの力が必要です』


『……もう、みんな知ってます。あなたが、どれだけ街を守ってくれたか。だから――来てください』


リアーネは、そっと目を閉じた。


「……そう。じゃあ、遠慮なく行かせてもらうわ」


右足をゆっくりと上げる。その動きだけで丘が震え、鳥が一斉に飛び立った。


そして彼女の影が、門をまたぎ、街へと――差し込みはじめる。



北門の前。

リアーネは上体を屈め、片足ずつ慎重に門を越えた。


門の柱をかすめて通るたび、ブーツの厚い革が石材をかすかに揺らす。

片足分の幅しかない路地を、彼女は歩幅を半分に抑えて進んでいく。


「人が近づかなければ、壊さずに済む。建物も……この角度なら大丈夫」


ズシィン――ズシィン――。

ブーツが街道に着地するたび、微かな重低音が鳴る。

挿絵(By みてみん)


けれど、誰かが叫ぶ声はなかった。


……そのかわり、人々は道の脇に下がり、静かに見つめていた。


「……来てくれたんだな」

「壊すどころか、すごく気をつけてる……」


リアーネは聞こえないふりをして、黙って歩いた。

まるで、家々に頭を下げるかのように、ゆっくりと、慎重に。



倒壊した倉庫街の裏手。

地中に沈んだ梁、焼け焦げた瓦礫の山――

職人たちではどうにもできなかった重みに、リアーネは膝をつき、静かに手を伸ばした。


巨大な指先で、砂粒のように一つずつ摘まみ上げ、広場の端に整えていく。


「……人間なら何日もかかるとこを、たった数分……」


中年の大工が、ぽつりと呟く。

その隣で、若い職人が風圧に煽られてよろめいた。


「うっ……!」

彼は思わず後ずさり、リアーネの方を見上げる。

その巨大なブーツは、すぐ目の前にあった。


「す、すみません……! 助かってます……本当に……」


リアーネは一瞬、彼に視線を向け――何も言わずに作業に戻った。


(……足音ひとつで怯えさせる。私の存在は、それだけで人を試す)


その背後で、子どもたちの声が響いた。


「がんばれー! おっきいお姉ちゃん、がんばれー!」


その無垢な声に、大人たちも少しだけ、顔を和らげる。


だがその裏で、微かな声も漏れていた。


「……でも、やっぱ、怖いよな」

「近づくと、大きすぎて……」


リアーネは振り返らず、ただ黙って歩き続けた。



夕方。

広場の片隅で最後の梁を運び終えたリアーネは、ゆっくりと立ち上がる。


その動作だけで、街に一瞬、影が差す。


「……もう、大丈夫ね。今日のところは」


そっとブーツを浮かせ、身を翻す。


そのときだった。

ひとりの少女が、母の手を振り払って駆け出した。


「お姉ちゃん!」


リアーネが気づいて振り向くと、少女は数歩手前で足を止めた。

見上げるその目は、少し怖がっていて、それでも――まっすぐだった。


リアーネは、そっと片膝をつき、指を広げて地面のそばに差し出す。


少女は一瞬戸惑い、けれど小さく頷いて、その指に手を重ねた。


「ありがとう。助けてくれて」


ほんの短い触れ合いだった。

だが、その一瞬が、リアーネの胸の奥に何かを灯した。


少女が母のもとへ戻るのを見届けて、リアーネは再び立ち上がる。


その背に、確かな何かが芽生えた気がした。


「近づきすぎると壊してしまう。けど、今なら……ほんの少しだけなら、寄ってもいいのかもしれない」


リアーネは、わずかに笑った。


門へと向かう彼女の背に、子どもたちの声が追いかける。


「また来てねーっ!」

「ばいばーい、おっきいお姉ちゃーん!」


その声に応えるように、リアーネは右手を軽く上げた。

振り返らずに、けれど――微笑んでいた。


街の石畳に残された、巨大な足跡。

そのひとつひとつが、“共にいた”証として、確かに刻まれていた。

リアーネさんの体格以下の想定です。

身長:約22メートル / 体重:100トン以上

肩幅:約5.5メートル / 腕の長さ:約11メートル / 指幅:29cm / 指長:117cm

胸囲:約10メートル / 顔の大きさ:約2.2メートル / 股下:約12メートル / 膝の高さ:約6メートル

太腿幅:約2.9メートル / 足のサイズ:約3.4メートル / 歩幅:約11メートル

腰の高さ:約13.5メートル/ 踝の高さ:約1.3メートル/ 足の幅1.2メートルくらい



追記:瓦礫除去イメージ

挿絵(By みてみん)

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