47 三将の協攻、ただの蹂躙 (挿絵あり)
戦いが始まってから、すでに半日以上が過ぎていた。
砦と街、それぞれの守備隊が必死に耐える中、リアーネは荒野を縦横無尽に駆け回り、1万人将たちを次々に討ち取っていた。
二人、三人……正確な数など、もはや彼女自身も把握していない。
ただ一つだけ確かなのは――
この巨大な女戦士の歩みを止められる者が、誰ひとり存在しないという事実だった。
■ 同時に挑んだ三人
そして今、かねてから噂されていた三人の1万人将が連携し、リアーネ討伐に乗り出していた。
ホブゴブリンジェネラル、エリートトロール、ゴブリンリーダー(特別進化型)。
種族も出自も異なる三体が、それぞれ数千の兵を率いて重厚な布陣を敷いている。
指揮系統が乱れて苦戦していた中、ついに上位層が本気で結束したのだ。
砦の兵も、敵兵も、誰もが息を呑んだ。
――これなら、さすがの怪物も止まるかもしれない。
そんなかすかな期待が、戦場に走った。
だが、現実は無惨だった。
数千の兵を伴っても、リアーネのスピードと耐久力を崩すことすらできない。
日頃なら「協攻」と呼ばれるべき連携も、彼女の前では無力だった。
命中しても、生地がわずかに伸びるだけ。
皮膚には、かすり傷すらつかない。
■ 短い時間での蹂躙
「包囲しろ! 投石と魔法を集中させろ!」
ホブゴブリンジェネラルが咆哮し、何百という火矢とバリスタの矢が空を覆う。
複数のシャーマンが呪文を唱え、リアーネの足元に地割れを起こそうとする。
一方、エリートトロールが巨槍を構え、前線に躍り出た。
ゴブリンリーダーは後方で命令を飛ばし、補助と指揮に徹している。
巨人対策としては、完璧な連携のはずだった。
だが――
リアーネは、一歩踏み出すだけで地割れを飛び越え、
襲い来る火矢を腕で風のように払い落とした。
数本がジャケットや髪に当たるが、焦げるだけ。
歩みは一切止まらない。
そして、巨体を生かして後衛へ踏み込み、
ゴブリンシャーマンの群れを“つま先”で押し潰した。
絶叫と血飛沫が荒野に弾けた。
「くそっ、やはり効かないのか……!」「下がれ、下がれぇえ!」
エリートトロールが吼え、渾身の槍突きを繰り出す。
リアーネの太腿を貫こうとするが――結果は、ほんの僅かにハーフパンツの生地が伸びただけだった。
逆に、リアーネは肩で体当たりするだけで、
エリートトロールの巨体を軽々と吹き飛ばした。
ホブゴブリンジェネラルも、怒りのままに突撃を仕掛ける。
しかし、リアーネは無表情で、ブーツの甲を叩きつけ、彼を地面にめり込ませた。
わずか数分。
二体の1万人将が、地面に沈んだ。
残るゴブリンリーダーは、後方で命令を飛ばすふりをしていたが、すでに腰が抜けかけていた。
■ ゴブリンリーダーの最期とナレーション
「ギィィ……なんだこの化け物は……!」
ゴブリンリーダーは死に物狂いで命令を叫ぶ。
「構うな! 突撃だァァッ!! 生きて帰るつもりなら、動けェッ!!」
しかし、兵たちは震え、命令に応じるどころではなかった。
リアーネが横薙ぎにブーツを振るうだけで、
50体近いゴブリンたちが血飛沫と共に宙を舞う。
次の瞬間。
ゴブリンリーダー自身が、リアーネのブーツに背中を踏み砕かれた。
「ぐぎ……っ」
短い呻き声とともに、背骨が砕け、心臓までも押し潰された。
戦場には、血と煙、微かな呻きだけが残った。
雑兵たちは絶望して逃げ散り、
わずか小一時間で、数千の大軍は壊滅した。
「結局、1万人将三人が協力しても……ほんの小一時間で、壊滅した。」
それが、この場にいた誰もが目にした現実だった。
リアーネの身体に、矢は刺さっていない。
魔法の痕跡もない。
汚れているのは、敵の血と泥だけだった。
■ 時間経過と崩れる指揮網
こうして三人の1万人将が倒れ、さらに数時間が流れた。
既に日は傾き、夜が迫っている。
砦や街がまだ戦っている気配は、遠くにかすかに感じる。
だが、敵軍全体の足並みは明らかに乱れ、攻勢は鈍っていた。
「リアーネが登場してから半日以上……指揮系統は次々に斬られ、12万もの大軍は、大幅に統制を失っていた。」
もちろん、砦と街に押し寄せる敵はまだ多い。
被害も、決して軽くはない。
だが、決定的な突破は、いまだ許していなかった。
■ リアーネの小さな焦り
「そろそろ……ボスが出てきてもいいはずね」
リアーネは呟き、荒野の片隅に腰を下ろす。
12メートルの体が、微かに埃を巻き上げる。
体力的な疲労はない。
けれど。
(……急がないと。砦や街が、持たないかもしれない)
リアーネはわずかに唇を引き結び、目を細めた。
今は呼び戻しの手段を取らない方針だが、長期戦はどちらにとっても負担だ。
「……ごめんね、もう少しだけ待って。今は私、ここで全力を出すしかない」
誰にともなく、静かに呟く。
夜の闇が、徐々に戦場を包み始めていた。
■ 静かなる無敵
無数の攻撃を浴びても無傷。
無尽蔵の敵を踏み潰し続ける巨影。
だが、リアーネ自身はよくわかっている。
時間だけは、かかるのだと。
──こうして、1万人将三人の連携は、ほとんど意味を成さないまま消え去った。
時間こそ必要だが、それでも砦と街が耐え抜けば、大軍を粉砕する未来は見えている。
深まる夕闇の中、
静かな無敵を象徴する女戦士が、再び立ち上がる。
次の標的を探すように、静かに、そして確かに。




