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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
2章 迫る大軍、迎え撃つ
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42 砦を脅かす翼、辺境伯の一撃

 灰色の空を覆うように、巨大な影が群れをなして砦を襲ってきた。

 数百のワイバーン、無数のグリフォン。その翼が巻き起こす突風が、砦の石壁を軋ませる。


 ――リアーネは今、遠方で敵の地上部隊を攪乱している。

 だが、この空からの脅威だけは、彼女が押し留められる位置にはいなかった。


■ 城壁上、迎撃の時

「来たぞ、弓隊! 対空配置、急げ!」


 レイナが鋭く声を上げた。冷静な口調のまま、槍を構え胸壁を駆け抜ける。

 彼女は辺境伯の娘であり、Sランク相当の実力を備える騎士団の若き副将。

 その姿に、兵たちは本能的な安心と緊張の狭間で身を引き締めた。


 矢が放たれ、火球が上がる。

 数体のグリフォンが宙で血を撒き散らし、地面に叩きつけられた。

 だが、総数は到底撃ち落とせない。ワイバーンたちは高空で旋回し、砦の裏手や脇腹へと回り込んでくる。


「敵の狙いは……城壁の背後か!」


 敵の動きは、明確に“防御の隙間”を狙っている。

 上空からの投石が壁を削り、屋根を穿ち、砦の一部に瓦礫が崩落する。


「被害報告! 建物の屋根が損壊、そこから敵が侵入する可能性あり!」


■ 突入、そして一撃

「ワイバーンが壁を超えた! 中庭に侵入――!」


 兵の悲鳴が響いた。レイナが踵を返して階段を駆け下りようとした、そのときだった。


「……おい、あれ……」


 近くの兵が呆然と指差す。

 その先には、中庭に降り立ったワイバーンを片腕で殴り落とす男の姿があった。


 その威容に、誰もが息を呑む。


■ 辺境伯、立つ

「何匹来ようが……この砦は、落とさんぞ!」


 ――辺境伯。レイナの父であり、この砦の主。

 身長は220cm台、その体格はまるで鋼鉄を積み上げたかのよう。

 右腕一本でワイバーンの顎を掴み、数秒のうめきの後に、頸椎の砕ける音が砦中に響いた。


 その場にいたグリフォン2体も、一振りの大剣で真横から叩き切られ、即死する。


「……父さん……!」


 レイナが声を漏らすが、辺境伯はすでに次の敵へと視線を移していた。

 地面を踏み鳴らすその一歩に、跳びかかろうとしていたグリフォンが体勢を崩し、無防備な腹をさらけ出す。

 辺境伯はその隙を逃さず、剣を真っ直ぐ突き出した――一突きで貫通。


■ 堅守と統率

「投石で開いた穴……レイナ、修繕は任せた。俺は空を叩き落とす」


「了解! 魔術師部隊、隙間を塞いで! 私は正面の再整備に入る!」


 砦は分断されかけている。壁の外では投石とバリスタ、上空では猛禽が旋回し、内部にも数体が潜り込んでいる。

 だが、辺境伯の剛力とレイナの冷静な統率により、兵たちは一瞬のうちに士気を立て直し始めていた。


■ 綻びと支え

「矢がもう……ない……!」


 弓兵の一人が、倒れた仲間の矢筒を抱えながら呟く。

 息は荒く、腕は震え、それでも彼の手は弓弦を離さない。


「リアーネが……外で本隊を止めてる……今、ここで倒れるわけにはいかない」


 誰かがそう呟いた。


 この砦は、たった一人に守られているのではない。

 “彼女を信じて、自分たちで踏みとどまる”。その決意こそが、この防衛線を支えているのだ。


■ 辺境伯の咆哮

「弱音を吐くな!」


 再び辺境伯の声が轟いた。

 その叫びに、兵たちは反射的に背筋を伸ばす。

 上空から再びワイバーンが急降下する――


 辺境伯は構えず、ただ、受けた。

 その腕でワイバーンの首を抱え込み、体重と筋力だけで締め落とす。


「これが……“砦の主”の戦い方だ」


 彼が踏みしめるたびに、魔物たちは怯え、動きが鈍る。


■ 火と血の中で

「火球、撃て!」「消火班、回れ!」


 瓦礫と火災、負傷兵。

 魔術師たちは魔法で火を抑え、レイナは小隊ごとに指示を出しながら再配置を続けていく。


 空からは容赦なく敵が舞い降り、バリスタの一撃が壁の角を砕く。

 それでも兵たちは崩れない――いや、“崩れさせない”という覚悟に支えられている。


■ 空を睨んで

 辺境伯は血にまみれた剣を地面に突き立て、空を見上げた。

 まだ敵は残っている。何層もの影が風に乗って旋回している。


「……来い。ここが最後の防衛線だ。だが、俺たちの心までは踏み込ませんぞ」


■ ラスト

──この日、砦には地鳴りがなかった。リアーネはまだ遠方で敵本隊と戦っている。

しかし、それでも砦は落ちていない。辺境伯が立ち、レイナが指揮し、兵たちが信じ、踏みとどまっているからだ。


彼らは知っている。この戦いの本当の意味を。

これは“巨大な戦士のいない場所でも、人間は負けない”という証明。


 そしてその証明が、次の一歩へと繋がっていく。

 リアーネが帰ってきたとき、ここが“まだ守られている”ように――。

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