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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
2章 迫る大軍、迎え撃つ
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37 砦と街、そして巨大な背を預ける決断

 辺境の街から十数キロ離れた場所、山々に囲まれた石の砦が、朝靄の中にひっそりと佇んでいた。

 普段なら静寂に包まれているこの要衝も、今朝ばかりは例外だった。街の家令、ギルド代表、騎士団幹部――そして、身の丈十二メートルの巨大女戦士リアーネまでもが集結している。


 昨夕、リアーネは街の防衛整備を終え、巨大な背を静かに門の外へと向けた。夜を跨いでの移動ではあったが、彼女にとって十数キロの距離は、数歩の延長にすぎない。人々の視界から遠ざかっても、その存在感は空に溶けることなく砦へと到達した。


■ 会議の始まりと影の介入

 時刻はまだ空が白みきらぬ早朝。砦の会議室には重々しい空気が漂っていた。


 だがその空間に、静かにひとつの“影”が差し込む。会議室の天井はわずか四メートル。十二メートルの女戦士リアーネは当然入れず、砦の外壁から身を屈め、顔だけを覗かせるようにして参加していた。


 その瞬間、部屋の明かりが一段暗くなる。蝋燭の火が揺れる。

 誰もが息を呑む中、彼女は静かにその視線を巡らせていた。


■ 斥候の報告と戦力差

「……では、改めて今回の偵察結果を報告します」


 ギルドの受付嬢が緊張を帯びた声で口を開き、地図を広げた。斥候の命を懸けた観測により、敵の詳細な布陣が明らかとなった。


【砦を狙う本隊:約10万】

・移動投石機200、バリスタ200を備えた攻城部隊

・1万人将:10名

  (ミノタウロスキング、オークキング、エリートトロール×2、ホブゴブリンジェネラル×4、ゴブリンリーダー×2)

・迎え撃つ側は騎士団+兵士2000名


【街を狙う混成軍:約2万】

・破城槌200、飛行部隊(ワイバーン500、グリフォン100)を含む

・1万人将:2名(ホブゴブリンジェネラル、ゴブリンリーダー)

・防衛側:冒険者ギルド精鋭250名+衛兵20名


「……正直なところ、どちらも絶望的に不利です」


 受付嬢レナが目を伏せると、辺境伯の代理である家令が重く頷いた。


「砦が抜かれれば、街も持たん。逆もまた然り……だがまず、ここを失えば中央からの救援も絶たれる」


■ 巨人の意志と戦場の振り分け

「だったら、私がここに張りつくしかないわね」


 壁の向こうから響いた声は、静かだが確かな圧を持っていた。

 リアーネの一言に、室内はしんと静まり返る。分かっていたことだ。それでも、本人の口から宣言されると、その覚悟は否応なく全員に突き刺さった。


「リアーネさんは……本当にここでいいんですか?」


 ギルドの冒険者が口を開く。だが、彼女は迷いなく答えた。


「街にはカイが残ってくれるし、ギルドにも信頼できる人がいる。2万は大軍だけど、砦の10万と比べれば……まだ見込みがあるわ」


 その言葉に、壁際のレイナが視線を上げる。身長230cm。砦を預かる冷静な副将は、感情を抑えた静かな口調で言った。


「……正面の突破力が高い以上、動線を絞らせてこちらの一撃で削るしかない。私が先導する。あなたは後衛から、砦全体を睨んで」


「いいわね、その配置。あなたが動いてくれるなら、私も最前列に立てるわ」


 二人のやり取りは、淡々としていながら、どこか息が合っていた。


■ ギルド側の戦力紹介と秘具

「街の防衛は、ギルドが主軸となります。戦力の中心は――Sランクのドーガとミレナです」


 受付嬢の声が続く。


 ドーガ――身長1.98メートルの大剣使い。冷静沈着で、常に戦況全体を見渡す眼を持つ男。

 ミレナ――身長1.5メートルの賢者。温厚な態度の奥に、鋭利な分析と高度な魔法制御を秘めている。共に43歳の熟練コンビだ。


「彼らを中心に、飛行部隊に対する対空魔法、門前の迎撃を組み立てています。街は地形的にも守りやすく、上空からもある程度制御できるでしょう」


「通信の秘具で、互いの状況を連携する体制も整えています。ただし――両方が同時に崩れかけたら、そのときの判断は……」


 沈黙が室内を包む。

 だがそのなかで、リアーネだけが笑みを浮かべた。


「そのときは、私が判断する。間に合うかどうかは別として、動けるのは私だけだから」


■ 会議終結と再配置

「……では、各々、持ち場へ戻るように。砦は地形を把握し、投石に備えた陣形を整える。街の者は速やかに帰還して、迎撃準備に当たれ」


 家令の声に従い、皆が立ち上がる。

 その空気の中で、ふとレイナが静かにリアーネを見上げた。


「……明日、必ず敵は来る。それだけの準備は整えておく。あなたも……無理はしないで」


 それは命令ではなかった。

 ただ、互いの重荷を知る者としての静かな言葉だった。


 リアーネは笑みを深め、ひとつ頷いた。


■ 巨体の歩幅と砦の視点

 会議が終わる頃、砦の外で騎士たちがそれぞれの配置に散っていく。

 リアーネは大きく伸びをする。ブーツの底が地面を抉り、土煙が柔らかく舞い上がる。


「さて……砦の構造を見て回りたいけど、さすがに中には入れないわね」


 自嘲気味な声に、レイナが振り返る。


「私が外から案内する。上からの死角、投石機の集中地点、山道の動線。把握する価値はある」


「助かるわ。私が“立つ場所”は、投石機を一手に引き受ける意味を持つから」


 砦の兵たちが、その言葉に神妙に頷く。

 十二メートルの女戦士――その一歩が砦の命運を分けるのだ。


「街のことは任せたわよ。あの子たちなら、きっとやれる。私たちは、私たちのやるべきことをやりましょう」


「……了解。あなたがそこに立ってくれるなら、守れる可能性はある」


 二人の背中が、砦の見張り台を背景に並ぶ。

 異形の背を持つ戦士と、冷静な副将――砦は、最強の盾を得たのだった。


──こうして、決戦準備は最終段階へと移行した。

十二メートルの女戦士リアーネは砦へ、Sランクのドーガとミレナは街へ。

街と砦、それぞれの防衛は、信頼と誇りと覚悟のもとに託される。


大軍の足音が、地平線を震わせる日は、もう目と鼻の先だった。

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